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yasuokaの日記: 「ブラジャー型の補聴器」の誤訳

日記 by yasuoka
唐沢俊一が監訳したというホーグ・レビンズの『快楽特許許可局』(イースト・プレス、1999年5月)を読んだが、あまりにヒドイ訳で頭が痛くなった。たとえばGladys M. Hartの「補聴器付きブラジャー」に関する訳(p.202)を見てみよう。

グラディス・M・ハートは、一九四三年にゼニス・ラジオ社より発売された初の低価格補聴器のサポートシステムとしてブラの構造を利用した。その二年後に、ハートはバッテリーとアンプを縫い込めるブラジャーの特許を申請した。彼女は次のように説明している。
「この発明品は、胸を持ち上げるブラジャーとしてただ機能するだけでなく、着け心地がよく、便利な補聴器の補助器具としても使用できる。イヤホンとは違い、補聴器としての効果を失うことなく、聴覚障害者の女性はハンディキャップがあることを疑われることはない」
今や女性はおっぱいで人の話を聞くのであった。

違う。それは誤訳だ。原文の「other than the ear piece」は「イヤホンとは違い」なんて訳してはダメで「イヤホン以外」と訳すべきだ。つまり、補聴器のマイクやアンプやバッテリーはブラジャーの中に収納できるが、イヤホンだけは耳に装着する、という意味だ。したがって、ここのカギカッコの中は、たとえば

「この発明品は、胸を持ち上げるブラジャーとしてただ機能するだけでなく、着け心地がよく便利で、補聴器の部品のうちイヤホン以外の部品をサポートする。難聴の女性が装着した補聴器は、この発明品によって他人からは目立たなくなるが、補聴器の性能を損ねることはない」

とでも訳すべきだ。そこのところを間違えてるから、「今や女性はおっぱいで人の話を聞くのであった」なんていう原文にない文章を勝手に追加して、恥の上塗りを重ねることになってしまうのだ。

つまるところ、Gladys M. Hartの「補聴器付きブラジャー」がどういう特許だったのか、唐沢俊一は全く理解していない。その理解力のなさが、結果として「ブラジャー型の補聴器が発明されたことがあった!」なんていう、わけのわからないガセネタを生み出すに至った、ということなのだろう。

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