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3044 story

進化学者スティーヴン・ジェイ・グールド死去 9

ストーリー by Oliver
素晴らしかった人生 部門より

yosuke 曰く、 "ワンダフル・ライフなどの著作で知られる、生物学者のStephen Jay Gouldハーバード大学教授が2002年5月20日、肺癌によりニューヨークの自宅でお亡くなりになりました。享年60歳。
氏は、学者としてだけではなく、啓蒙書の著者としても才能を発揮されており、3月に"The structure of evolutionary theory"が出版されたばかりでした。また、Richard Dawkinsとの論争は双方一歩も譲らず、門外漢であるはずの一般人の目をも引きつける、とても興味深いものでありました。 まだまだ活躍できた方だけに、本当に残念です。心からご冥福をお祈りいたします。
なお、bk1が追悼特集を行っています。"

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • Dawkinsとの論争はどちらがダーウィンの正当な後継者かという跡目争い
    のような形になっていってしまい、部外者には鼻白む部分もありましたが、
    とても残念な思いです。

    氏の功績もあって、定向的進化という概念はかなり修正されてきたのです
    が、それでもまだ日本人の頭には猿から人へのの進化図 [intelligen...etwork.org]が刷り込まれて
    いるように、誤った進化解釈がなされているのは残念です。(それでも
    進化という概念を受け入れているだけマシなのかもしれませんが・・)
    それだけにまだ活躍してもらいたかったのですが、それは残された者が
    弔いとして行うべきものなのでしょう。
    それでも氏のように豊富な知識とレトリックを駆使して一般向けの啓蒙書
    を残せるような人物はほとんどおらず、やはり無念さは消えません。

    氏の功績として断続平衡説があげられますが、これは決してDarwinismを
    否定するものではなく、進化によって生物の種は変化していくが、どの種が
    生き残るかは偶然により、存在している生物種は全て進化の最前線にいる
    ということを説いたものでした。
    つまり、Darwin的な進化を手前勝手に解釈して現在生き残った
    ものが優れていると考える立場を否定し、あるいは猿が立ち上がり始めて
    二本足での歩行が得意になり徐々に脳が大きくなるといった定向的進化の
    錯誤を明らかにして(例えば上のリンクの図は全く類人猿の歴史を示して
    いない非科学的な「編集」による)、環境への適応によって種は変化する、
    しかし変化の結果生き残るかどうかはほんのちょっとした偶然に依存し、
    ある時点から未来の種のありようは予測できないのだというものでした。

    まだ進化の分野ですら半分は逆の立場をとっているので一般の人に対しても
    説得を試みられる貴重な人材を失った気持ちです。

    ご冥福をお祈りします。
    --
    kaho
  • # 最初に白状しておきますが私は生物学は門外漢で、グールドもドーキンスも邦訳されたものしか読んでいません。

    私自身 グールドのエッセイを読んで「弾丸」を補充させってもらった身ですし、この時期にあれこれいうのは何ですが、グールドの進化論者としての評判の悪さは認識しておくべきだと考えます。つまり、エッセイニストとしてのグールドと、進化論者としてのグールドは区別して考えたほうがいいと思うのです。

    エッセイニストとしてのグールドには私も賛美を惜しみません。
    博物学の徒であるグールドの興味の対象の広さをすごいですが、それ以上に「小説家」「ジャーナリスト」として能力が素晴しい。
    例えば「ワンダフル・ライフ」とサイモン・コンウェイ・モリスの「カンブリア紀の怪物たち」を読み比べると、読んで面白いのは圧倒的に「ワンダフル・ライフ」でしょう。
    # 仮に後者の方が正しい解釈をしているとしても...

    ただエッセイが素晴らしいがゆえに進化論者としてのグールドの自身の説(ナイルズ・エルドリッジと共同で堤出された断続平衡説)もそのままいっしょに肯定されてしまうことが多いのは問題だと思います。断続平衡説は初期にはゴールドシュミットの跳躍説のようなマクロ突然変異の説とみなされていました。そのためダーウィンの進化説を否定したい人からは歓喜を持って、ネオダーウィニズムの正当派の進化論者からは拒絶されてきました。
    しかし だんだん断続平衡説の内容が「穏便」になってしまったため、正統派の漸進説の変わらなくなってしまったというのが昨今の情况だと思います。

    個人的には エッセイの中でも断続平衡説や利己的な遺伝子を扱った部分と、他の編とで温度差が感じられるんですけどねぇ。反進化論と戦う回のエッセイと、漸進説・汎適応説を叩く回のエッセイではダーウィン自身の扱いも変わっていますし。

    p.s.
    H.G.ウエルズに「蛾」という短編があって、ハプレーとポーキンズという2人昆虫学者が出てきます。私はグールドとドーキンスの運命をこの小説の中に見ていたのですが...
    # 小説の結末は秘密。
    --
    コンタミは発見の母
  • by dai75 (557) on 2002年05月22日 7時21分 (#96066) 日記
    『ワンダフルライフ』は大学の図書館で借りて何度か読みましたっけ。面白い本だった。
    今の進化結果(そして人間の存在)は全くの偶然でしかないこと、そしてまさに wonderful という言葉がぴったりの生命の多様さ、に感銘した覚えあります。
    文庫で出てたんですね。久しぶりに読んでみよう。

    ご冥福をお祈りします。
    --
    -- wanna be the biggest dreamer
  • 『ワンダフル・ライフ』を読む前は
    奇妙奇天烈な生物を興味本位で紹介している本だと誤解していました。
    題名は
    「もし自分が存在しなかったら、この世はどうなっていたか」
    を題材とした映画(私はその映画を見ていないけれども)が元ネタで
    本の中では
    「もし彼らが今も存在していたら、この世はどうなっていたか」
    との意味で使われています。
    想像力や物の見方を広げてくれた事を深く感謝しています。

    ご冥福をお祈りします。
  • by ksada (4435) on 2002年05月22日 12時29分 (#96126)

    検索してみた [google.com] ら、いろいろ面白そうなのが出てきました。

    ドーキンスも同い年なんですね。長生きして欲しいなぁ。

  • 人種差別のような、根拠にもとる狭窄な視野を痛烈に批判した 人でもありますね。

    ファインマンにしてもそうなのだが、神に愛されたとしか形容 のしようもない才能の持ち主が、いかに痛快な読み物をものす ことができるのかという典型だったと思います。

    --
    --- Toshiboumi bugbird Ohta
  • by 7070 (4079) on 2002年05月22日 23時06分 (#96426)
     稚拙な表現で申し訳ありませんが、著書を通して科学の
    楽しみと、モノの見方を教えてくれた人。そういう意味で
    はアシモフの次に、僕に影響を与えてくれていました。

     もう今後僕の人生においてこういう存在の人は現れない
    かもしれません。ただ悲しいです。
  • 僕も大学出たてのころにグールド氏の著作に出会って
    ものの考え方、文章の書き方に大きな影響を受けました。

    大自然の営みや偶然を素直に感動するピュアな感性。
    自説を力まずてらわずわかりやすく展開する手法。
    差別や偏見や詭弁や似非科学を憎む毅然とした態度。

    そして、気の利いた茶目っ気。
    (チョコレートバーの進化論は、よくあるこの手の文章の中で 最も完成度が高い物だと思います。)

    合掌。ご冥福を祈ります。
    --

    [tomoyu-n]
  • by Anonymous Coward on 2002年05月23日 18時03分 (#96912)
    それは、「電脳やおい少女」(作: 中島沙帆子/まんがくらぶオリジナル [takeshobo.co.jp]掲載)。

    主人公美月(やおいをこよなく愛する。が、彼には内緒)の彼氏越村君がデートの待ち合わせのときに読んでいた本が「ワンダフルライフ」。
    発売日から考えて、作者本人はこのことを全く考えていなかったであろうことを考えると来月の作者コメントが気になる。
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あつくて寝られない時はhackしろ! 386BSD(98)はそうやってつくられましたよ? -- あるハッカー

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