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3989 story

ベル研研究者のデータは改竄されていた 54

ストーリー by kazekiri
捏造スキャンダル 部門より

nakanot 曰く、 " ベル研の研究者 Jan Hendrik Schoen 氏が、 データ改竄の件で解雇されたようです (日本語の解説記事, ベル研のプレスリリース)。 彼は、分子性結晶の表面に作成した電界効果トランジスタ (FET) 構造による 2 次元電子系を対象に、 高温超伝導・分数量子ホール効果・レーザ発振などが発現するという素晴らしい結果を NatureScience といった一流論文誌に次々と報告し、 ここ数年大きな注目を集めていた研究者でした。 しかしこれらの結果は他の研究者により再現されず、 また試料作成に関する詳細が与えられなかったことから、 その結果に疑問が持たれていました。 特に、複数の論文での全く異なる試料を対象とする FET 特性が非常に似ていたことをきっかけに 疑念が強まり、 調査が進められていました。

大きな科学スキャンダルですが、 なぜこのようなことが生じるのか、 どのようにすれば防げるかなどを 考え直す良いきっかけになるのではないでしょうか。 なお、日本語の優れた解説記事が「パリティ」誌の 2002 年 8 月号にあります。 "

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 科学(的手法)というもの自体が不正を取り除いていくための方法論だと思います。事実や手順を公開することで不正にしろ間違いにしろ、いつかはその正体があばかれる。オープンソースなんかと同じ原理です。必ずしもすべてを暴くわけじゃないですが、全体としてはうまく機能していると思うのです。

    多くの科学者はそういうことが判ってるから普通嘘はつかないけど、人間だからたまに嘘吐きもいてスキャンダルが起きるのでしょう。逆に、普通嘘を前提にしないから科学者は騙されやすい、というのもありますが。

    とはいえ、ばれない程度(いやばれてるけど)の嘘というのもたくさんあって、結論を補強するためにデータを捏造したけど、結果的に理論は正しくて認められた(ミリカンの油滴実験)とか。そんなことしなくても最終的には認められたんだろうけど、最初のインパクトが薄いと検証にも時間がかかることになったとかの駆け引きはあるのでしょう。

    この事件も最終的にはばれちゃった、ってことを考えると、そのシステムは機能していると思うのです。

    --
    • > とはいえ、ばれない程度(いやばれてるけど)の嘘というの
      > もたくさんあって、結論を補強するためにデータを捏造した
      > けど、結果的に理論は正しくて認められた(ミリカンの油滴
      > 実験)とか。そんなことしなくても最終的には認められたん
      > だろうけど、最初のインパクトが薄いと検証にも時間がかか
      > ることになったとかの駆け引きはあるのでしょう。

      同意します。
      科学者はみんな真実が一つである事はみんな良く知ってます。
      なので、本人が信じている結果が実験によって得られなかった
      場合には、自分が信じている結果が出るまで実験を繰り返すべ
      きなのですが、時間がなかったり、学会に追われていたりで、
      ついつい捏造してしまうのかもしれません。

      捏造した本人は、ねつ造データは、かならず今後の実験で
      再現されるはずだと信じていたはずです。
      どうせ実験すればそのうち出るんだからと、ついつい捏造して
      しまうんでしょう。

      このような姿勢は良くないのですが、業績業績と追い立てられている
      若手の研究者ならそのような誘惑に駆られる事は多いんじゃないでしょうか。
      親コメント
      • > 捏造した本人は、ねつ造データは、かならず今後の実験で
        > 再現されるはずだと信じていたはずです。
        > どうせ実験すればそのうち出るんだからと、ついつい捏造して
        > しまうんでしょう。

         非常に身につまされるコメントでした。印刷物になる段階では
        さすがに慎重になりますが、口頭発表の〆切ギリギリだったり
        すると、誘惑に負けてしまいそうになったこともありますし...

         今回の件は、最初に学会で発表されたときにヤンヤの喝采を
        浴びたそうですが、それで逃げられなくなった面もあるのかなあ。
        親コメント
    • by Anonymous Coward on 2002年09月28日 14時24分 (#173516)
      システムとして完璧(かそれに近い状態)であったとしても、それを遂行する現場に、遂行する能力が欠如していたり、また遂行自身が人手不足などのシステムのかたちそのものとは全く関係のない原因で破綻してしまう、ということはよくあることだと思います。論文の査読をする人が、査読してもわからなかったり、ウソを見抜く能力がなかったり、さらに、査読する人の健康状態とか、家族で不和があるため、本来の能力が出せなかったりとか、何らかの理由でそれをきちんと読まなかったりね。こういう些細なことでシステムが壊れてしまうようなこと、最近多いように思います。そういう世の中にあわせた新しいシステム(あるいはエラー処理のサブシステム)を作ったり加えたりして、システムそのものにも逐次改良を加えていかないと、「システムはちゃんと機能しているのに、こんなことが起こってしまった」といういいわけを聞くことになります。そして、現代のように多くの人がより早く結果を求める競争が頻繁になると、このシステムの改良そのものも追いつけなくなる時が来るのではないか?という危惧を、今回の事件は感じさせます。だから、科学の方法論が間違っている、というのではなく、ある意味必然的に起こるクライシスが起こってしまった、ということのようにも、今回の事件は受け取れる。もし本当にそういうことだったとしたら、なにか根本的に変えて行かなければならないことが置いてきぼりにされているのではないか、とも思うわけですが。
      親コメント
  • by take0m (4948) on 2002年09月28日 15時38分 (#173555) 日記
    学部の1年生の頃に物理系の実験で、重力加速度を求める実験をやったことがあります。振子の実験です。たしか、ナイフエッジってやつを使いました。

    この実験、重力定数自体は国土地理院からかなりの精度の値が発表されていますし、学生もみなその答えを知っています。そのため、正解に近づけるために、いろいろな設定を変更しながら試行錯誤していくようなこともできる訳です。

    ちょっと次元が違うかも知れませんが、理論に合致する様に恣意的にパラメータを設定した実験とか、理論を覆すために恣意的にパラメータを設定した実験とか、いくらでもあるような気がします。

    特に測定の単位が小さいものや個数が少ないものだと、ノイズや誤差にごまかされて再現もままならない、というのもかなりあるような気もします。

    このくらいだとスポーツでいうドーピング程度なのかなとかもおもいます。測定器の値自体を良いものだけ使ったりとか、変な値はなかったことにしたりとか、その位もありかもしれません・・・

    今回のは、全くの捏造ということですから、ちょっと質が違うかもしれませんが、真理を追求する世界でも、真理に近づきたいという欲求や、自分が発見したいという欲望は、いろいろな所に発現してくるものだと思います。最初は小さなごまかしを許し、徐々にコントロールできなくなっていくんでしょうね・・・
    • by tyamadajp (10476) on 2002年09月28日 16時19分 (#173567) ホームページ
      ミリカンの油滴実験だったかどうか確信が持てないのですが、たしかその後の追試の度に*ちょっとずつ*より正確な値に近付いていったという現象があったそうです。

      それまでに知られているデータから遠くはなれた結果がでた時はおかしいなぁと思いつつやりなおし、近いデータの時は実験誤差の少ない優れたデータとして安心する、ということを各人がしているうちにそういう珍現象が起こったらしいのですが、妙に人間臭いエピソードです。
      親コメント
    • Re:なんというか (スコア:1, すばらしい洞察)

      by Anonymous Coward on 2002年09月28日 15時46分 (#173557)
      >最初は小さなごまかし
      >を許し、徐々にコントロールできなくなっていくんでしょうね・・・

      大抵は一貫性が保てなくなって破綻するもんです.
      親コメント
    • 「森昭雄教授」という方もいましたしね。
      あ、でも、今回はそこまでレベルは低くないですか?
      • >「森昭雄教授」という方もいましたしね。
        >あ、でも、今回はそこまでレベルは低くないですか?

        あの人はかなり極端な例ですが、根っこの部分は同じような気がします。

        >最初は小さなごまかしを許し、徐々にコントロールできなくなっていくんでしょうね・・・

        がエスカレートしていくと、ああいう風になってしまうのでしょう。
        他山の石とするべきかと。
        --
        うじゃうじゃ
        親コメント
  • by cloudy (1160) on 2002年09月28日 14時13分 (#173513)

    ナノテク・ホワイトボード [nanoworld.jp]でこの話が出てます。

    No.42 からはじまる、水谷さん(超伝導炉端焼き [www.kek.jp]の作者)のコメントです。

  • ずいぶん前のコメント #126844 [srad.jp] に論文 PDF へのリンクを張ってあるので、見てください。
    (著作権的には問題ありなのですが。)
    異なる論文の異なるデバイスのグラフがそっくり。
  • (スコア:0, 余計なもの)

    by Futaro (2025) on 2002年09月28日 12時46分 (#173468) ホームページ 日記
    WIREDの記事にある、以下の文:

    > 「たしかに、不正は行なわれた。しかし科学の正常なチェック方法を使え ば、このような不正は探し出せる。このシステムは機能している」

    なんか、どこかで聞いた言葉だなぁ、と思ったら

    「仕様書は完璧だったんだが、実装がまずかったんだよねー。で、動かなかったんだ。ごめんごめん。」

    という開発者のいいわけそのものだよね。

    まぁ、これに限らず、米国の「経済」そのものの不正が暴かれた - 本当はそういう不正を許した会計基準を作った米国政府がおかしいわけだが - ということと、今回の「研究の不正」は、まさに米国社会そのものの腐り方が尋常じゃない、ということの現れに見える。

    個人的には、ついこの前まで「米国へのあこがれ」っていうのがまだちょっと残っていたんだけど、それも消え去ったね。スッパリと。
    • Re:腐 (スコア:2, すばらしい洞察)

      by locate (5848) on 2002年09月28日 13時11分 (#173477) 日記
      >> 「たしかに、不正は行なわれた。しかし科学の正常なチェッ
      >> ク方法を使え ば、このような不正は探し出せる。このシス
      >> テムは機能している」
      > なんか、どこかで聞いた言葉だなぁ、と思ったら
      > 「仕様書は完璧だったんだが、実装がまずかったんだよねー。
      > で、動かなかったんだ。ごめんごめん。」
      > という開発者のいいわけそのものだよね。

      なんでこんな例えば出てくるのかさっぱり分かりません。

      研究結果を捏造しようと、間違った実験をしようと、
      自然法則は一意にに決まっているので、遅かれ早かれ、
      追試を行う事で真義はいずれ判明します。

      結局、今回もシェーン氏のねつ造が明らかになったと言う意味で、
      科学における不正の発見機構がうまく働いていたと表現しているわけです。

      本当は、論文投稿後のレフェリーによる審査の段階で、
      明らかになるべきだったわけですが、それが機能していなかった
      ことは反省点でしょう。
      親コメント
      • by brake-handle (5065) on 2002年09月28日 13時47分 (#173496)

        一応査読がある論文を書いていて、落ちたこともあれば受かったこともある身です。

        論文なんて書くといかにもカッコイイものに見えてしまいます。が、実際には査読者も忙しいため、通すとなるとどうしても見ばえがよいものを作るハメになってしまうんです。実際、自分が作っているものが商品カタログとかと同じレベルなんじゃないかと思ってしまうことがありました。

        もっとも、実績評価に何年間に何本という勘定の仕方をしている以上、研究業界にやめろといってみてもやめられないものなんでしょうが...

        親コメント
      • by Anonymous Coward on 2002年09月28日 14時39分 (#173524)
        極端な話では「いずれ判明する」の「いずれ」が人類の歴史の後だったってことはあるかも知れません。逆の極端で言えば論文投稿後数分後であるかも知れません。

        だから、今回は不正の露見が「社会的に影響はあったけれども、なんとか必要かつ十分な時間内に」かろうじて間に合った、というだけのことであって、これが間に合わなかった場合は不正は露見しないのと同じことになる。追試そのものも、なんらかの事情で行われなかったり、忙しくてできる人がいなかったりね。あと、社会が半導体に興味を全く失って、研究者そのものが他に全くいなくなるとか。まぁ、これは現状あり得ないことではありますが。

        つまり「今回は仕組みがちゃんと働いてシェーン氏の捏造が明らかになった」というのは、正しかったことの「証明」ではなく「言い訳」のように聞こえてしまうのだ、ということですね。むしろ「論文発表前になぜ不正がわからなかったのか?」ということが問題で、それが「いずれ」=「論文発表後」になってしまった、ということのほうが大きな問題ではないか、と思うわけです。

        だから「反省点でしょう」と書かれてある、まさにそのことが今回の「大問題」そのものなのではないか、ということです。この問題が小さくない、ということを、今回の事件は証明した、ということです。それが「反省」によって本当に良くなる方向に向くことなのか、それとも、反省したところでどうにもならないものなのか?ということが、これから問題になっていくことなのではないでしょうか?
        親コメント
        • by memex (4261) on 2002年09月28日 17時30分 (#173617) ホームページ
          専門誌のレフェリーを担当している立場から言わせて頂くと、査読者が評価するのはその論文の真偽ではありません。

          査読に際しては、
          ・従来報告されていない新規な発見であるか
          ・論理は首尾一貫しているか
          ・原稿の体裁はきちんとしているか
          ・表現はわかりやすいか
          ・英文の場合、文法や単語は正しいか
          ・論文の主題は専門誌の趣旨に一致しているか
          などのポイントを中心にチェックしていくことになります。

          投稿原稿が新規なものであるかどうかは一応確認しますが、最近はインターネットが利用できるようになってやりやすくなったとは言え限界がありますので、原稿の内容が従来の報告から大きく逸脱していないか、とか、再現するための十分な情報が示されているのか、が重要なチェックポイントになります。

          もちろん内容の真偽について不明な点があれば投稿者に確認したりもしますが、査読者が再実験などで判定するわけではありませんので、明らかな間違いやつじつまの合わない点などがなければ論文は通ることになります。

          もちろん査読自体は2名以上の関連研究者が行っていますので、一人が見落とした点ももう一人でカバーできると期待しています。

          もう一度繰り返しますが、こうして掲載された論文の真偽を最終的に判定するのは、その論文を読んだ読者(研究者)の責任です。

          多くの関係者の興味を引く重要と思われる論文であれば繰り返し検証されるので、問題があればいずれ判明するでしょうし、興味を引かない論文であれば検証されることはないかもしれませんが、それはその論文の重要性が低いことの表れとも言えます。

          実際、NatureやScienceなどに掲載された論文でも、後日否定された例は数多く存在します。
          --
          Eureka !
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          • >これって校正って言わない?

            「校正」といえば言えなくもないかもしれませんが、査読の目的はあくまでその原稿が掲載にふさわしい諸条件を備えているかどうか、ということです。

            たとえ「てにおは」の修整であっても一歩間違うと執筆者の意図とは異なる結論が得られる可能性がありますので、不明確な箇所があれば査読者は執筆者に修整を求めます(修整するのはあくまで執筆者)。

            執筆者の主張する結論を示されたデータから類推できないような場合、当然データの追加提出を求めますし、逆に本旨とは関係のないデータであれば削除、または本旨の修整を求めます。

            先のコメントで「真偽は判定しない」とは書きましたが、「偽である」と知っていて論文を通す査読者など誰もいません。

            ただ、「偽である」と信じるに足る合理的な理由がない限り、公表そのものを拒むことも出来ません。

            今回の偽造に関しては、以前化学同人社から出版された「背信の科学者たち」という本にさまざまな例が載せられています。

            ピアレビューシステムの仕組みと限界についても考察されていますので、興味のある方は一度ご覧になると良いでしょう。
            --
            Eureka !
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            • >今回の偽造に関しては、以前化学同人社から出版された
              >「背信の科学者たち」という本にさまざまな例が載せられて
              >います。

              「背信の科学者たち」 は良い本ですね. 科学の世界の査読・
              追試システムの現実についても説明されています.

              同種の話題を扱った本としては朝日選書の「幻の大発見」も
              参考になる良い内容だと思います. 
              この本の中のN線を扱った章の末尾でマックスウェルが語
          • by Anonymous Coward on 2002年09月29日 0時45分 (#173821)
            >もう一度繰り返しますが、こうして掲載された論文の真偽を最終的に判定するのは、その論文を読んだ読者(研究者)の責任です。

            >多くの関係者の興味を引く重要と思われる論文であれば繰り返し検証されるので、問題があればいずれ判明するでしょうし、興味を引かない論文であれば検証されることはないかもしれませんが、それはその論文の重要性が低いことの表れとも言えます。

            確かにそのとうりですね. レフェリー(査読者)は追試までおこなう義務を負っているわけではありません. あくまでも投稿された論文を読んで審査するだけです. そして,おそらく一般の人が抱いている印象とは違って,必ずしもすべての論文が追試・検証されるわけではありません.
            査読を通って掲載された論文の多くは追試もされず,ほとんど引用もされません.
            親コメント
          • 朝日選書の「幻の大発見」も大変優れた本ですね。

            私も過去に読んだことがあるので確認のために書架を見たのですが、残念ながらちょっと見当たりませんでした。

            かわりに「きわどい科学」(白揚社)を見つけましたが、この本と前述の2冊は、およそ科学でメシを食う者にとっては必読書と言えるでしょうし、科学に多少なりとも興味を持っている非関係者にとっても、その実像を知る上で大いに参考になるでしょうね。
            --
            Eureka !
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          • ・論理は首尾一貫しているか
            ・原稿の体裁はきちんとしているか
            ・表現はわかりやすいか
            ・英文の場合、文法や単語は正しいか
            これって校正って言わない?
            • by nakanot (102) on 2002年09月29日 0時32分 (#173810)
              > これって校正って言わない?

              レフェリーは「これじゃダメ。直して」って言うだけで
              OK ですから、校正とはちょっと違うような気がします :-)
              親コメント
            • > これって校正って言わない?

              そうそう、これは編集者の役割だよ。

              あんなレフェリーばっかだから、ろくでもない論文ばっか通って、
              重要な論文がリジェクとされるんだろうな。

              理由が良く分かったよ、今この瞬間。
          • つまり、うまくダマされた、というよりは「おれには責任がないんだー!」「だって、 当たり前のことしているだけだもん!」と言いたいわけですね。でも、常識的に考えて、世の中に「印刷物」として出回る「権威ある(と、思われている)」ものが、そんな程度の査読しかされていないものだなんだ、ということは、世の中にもっと宣伝して周知徹底しておかないと、大変なことになることもある、ということですよね。でも、一方でそんな宣伝はされたくない、と思うわけでしょ。だって、学会の権威っちゅうものが地に落ちるかも知れないからね。世の中に学会ごと信用されなくなるかもしれないからね。
            • 書かれたのは科学の現場を経験されたことのない若い方でしょうか。

              専門誌に掲載された論文は絶対正しいとナイーブに信じておられたようですが、掲載されたのはそれが真実であると証明されたからではなく、真実であると信じるに足る合理的な根拠が示され、かつ、否定するだけの根拠はなかったからであって、最初にも書いたようにそれをさまざまな角度から再検証して正しいものであるかを評価するのは関連する分野の研究者の責任です。

              どうも曲解されているようですが、査読の際はもちろん可能な限りのチェックに努めますし、その結果掲載されたということは非常に重い意味を持ちますので、そのような論文には敬意を持って接するのがまっとうな研究者というものです。

              ただ、それをもってその論文の内容が無条件に肯定されるものでないことは他の方も繰り返しコメントされている通りですし、大学院に進学すればこれは指導教官から最初に仕込まれるべき事項です。

              このような方式がなぜ取られているのか、その利点と欠点、限界などは先に挙げられている3冊の本のどれかを読めば、過去に起こった詐欺的事件の実例を挙げて解説していますので、理解が深まることでしょう。

              インターネットも結構ですが、まずはきちんと読書しないとね。
              --
              Eureka !
              親コメント
              • > 専門誌に掲載された論文は絶対正しいとナイーブに信じておら
                > れたようですが、掲載されたのはそれが真実であると証明され
                > たからではなく、真実であると信じるに足る合理的な根拠が示
                > され、かつ、否定するだけの根拠はなかったからであって、

                もし memexさんが科学の現場を経験された方ならお聞きしたい
                のですが、同じ分野でも多くの種類の専門誌が存在するわけで
                すが、その論文にふさわしいかのチェックはどうするのでしょ
                うか。たとえねつ造を見破る事ができなかったとしても、
                クエスチョンマークが付くような論文を一流誌に載せるのを
                許可するような査読者のいる分野全体の問題でしょう。

                インパクトファクターの大きな雑誌ですら、嘘じゃなかったら
                載せるなんていい加減な事をやってるんですから、二流誌、
                三流誌なら多少の嘘は認める、ぐらいの内容なんでしょうか。

                査読者や、共著者の責任を一切問わないと言う時点で、その分
                野の研究者や学会の良識を疑いますね。
                そのうち考古学で起こったねつ造問題みたいに、学界全体を
                引っくり返すような事にならないかぎりは、かわらないんでし
                ょうね。

                そう言う意味で、#173914 のACさんには共感を覚えます。
                親コメント
              • > 書かれたのは科学の現場を経験されたことのない若い方でしょうか。

                もし、大変な経験のある人がこのコメントを書いていたら、どうなんでしょうか?やっぱり水戸黄門みたいに「へへー、おそれいりました」となるのでしょうか?

                最初の1行でおそらくご自分では気が付かず「権威」を振り回していますよね。理屈というものを抜きに、相手にインパクトを与えよう、という意思が見え見えです。この傲慢(と、ご自分では自覚がないのでしょうが)とも見える態度がフッと出てしまう、こういう人がいる、ということこそが、本来あるべき「科学」を見失って、「学者業界」
              • けっこう熱くなって反論してるみたいやけど、

                > 世の中に「印刷物」として出回る「権威ある(と、思われている)」ものが、そんな程度の査読しか されていないものだなんだ、ということは、世の中にもっと宣伝して周知徹底しておかないと、大変なこ
              • locateさん wrote:
                >もし memexさんが科学の現場を経験された方ならお聞きしたい
                >のですが、同じ分野でも多くの種類の専門誌が存在するわけで
                >すが、その論文にふさわしいかのチェックはどうするのでしょ
                >うか。

                ちょっと質問の意味がよくわからないのですが、論文が掲載されるのにふさわしい専門誌はどうして選ぶのか、という意味であれば、それは投稿する側が選ぶ問題です。

                >たとえねつ造を見破る事ができなかったとしても、
                >クエスチョンマークが付くような論文を一流誌に載せるのを
                >許可するような査読者のいる分野全体の問題でしょう。

                研究に関わった方ならおよそ承知されているでしょうが、専門誌に掲載される論文には、多くの研究者が「こうすればこういう結果が得られるだろう」と想定していて実際にそう言う結果が得られました、というものが多くあります。

                つまり、細かい箇所はともかく、どういう結果が得られるかは大体予想されていたわけであって実際にそれが論文として出されて初めて関係者に公式に認知されることになります。

                もう一つは、予想を検証するべく実験してみたら予想に反する結果が得られた場合で、その予想が間違っていたのか、それとも研究手法が正しかったのかを検証することになります。

                また、従来の予想では説明できないような論文が発表されることがありますが、それが多くの研究者によって追試されて確認されれば新発見として認知されることになります。

                何度も言うようですが、査読者が原稿に記載された原稿を追試して真偽を確かめるわけではありませんし、それは関連研究者の仕事です。

                >インパクトファクターの大きな雑誌ですら、嘘じゃなかったら
                >載せるなんていい加減な事をやってるんですから、二流誌、
                >三流誌なら多少の嘘は認める、ぐらいの内容なんでしょうか。

                複数の査読者で意見の分かれることはあっても、「多少の嘘は認める」なんて査読者は誰一人いないでしょう。

                少なくとも日本の考古学で最近起こった問題のように、正式な論文として発表すらされていないものを公知の事実として利用するようないい加減なことをやっているわけではありません。

                実際査読してみると、不適切な実験や操作、統計処理のミスなどで評価の対象にすらならない原稿がある一方で、非の打ち所のない実験、統計処理を行ってどこにも欠陥は認められないにも関わらず、得られた結果は従来の予想とかけ離れているものもあります。

                前者は当然落選ですが、後者については複数の研究者が何度も検討を重ねます。

                もし欧米の「一流誌」を定期的に読まれていれば、巻頭の編集者所見に時折、「これは従来の知見では説明できない報告である、もし本当であれば大発見である」と言ったコメントを時折見かけられるはずです。

                科学の査読システムの現状と限界、そして検証の具体的な手順がどのようなものであるのか、一度丹念に読まれるとよろしいと思います。
                --
                Eureka !
                親コメント
              • by nakanot (102) on 2002年09月29日 20時36分 (#174099)
                「査読者」を騙すことは多くの場合不可能ではありません。ただ実際にこれを行ってしまうと、良心どうこうという前に、最終的には (今回の Schoen 氏のように) 科学者としての身の破滅が待っているので、ほとんどの人はやってみようと思わないだけです。人類全体を騙すことはとても難しいですから。

                現在の実験科学のほとんど (数学とかは別) は、「こうやったらこういうふうになったよ」という報告と「そいつはこう考えると説明できるんでないかしら」という意見との膨大な集積に過ぎないのであって、だから「これは 100% 正しい」という内容はほとんどありません。ある事柄を「絶対正しい」とか言ってる人は、その situation にもよりますが、大抵ろくな人ではないことが多いと個人的には思っています。

                そのかわり、99% 以上の確率で正しいと (大多数の研究者によって) 認識されている事柄には、その背景に多くの人たちの知恵や工夫と、たくさんの時間と手間が重ねられているのです。エセ科学の人たちはこのへんを軽視してだいたい失敗しています。

                閑話休題。論文誌に載っていることを 100% 正しいなどと思っている研究者はいません。だから今回の研も最終的にはダメが出されたわけです。査読者の役割は、そういう意味ではノイズフィルタに近いのであって、論文は少数の査読者を経由し、さらに多数の読者にさらされ、その評価が決まっていくわけです。

                逆に、質の高い論文をどれだけ載せられたかによって、論文誌の評価も上がったり下がったりしていきます。いい論文誌はたくさんの人が読みますから、そういうところには「自分の書いたこの論文はすげえぜ!」というのがたくさん投稿されてくる、そしてますます雑誌の評価が上がる、という仕組みになっています。
                親コメント
              • おやおや、年寄りのコメントはお気に召しませんでしたか。

                私のコメントをあなたがどう受け取られるか、それはあなたの自由ですが、少なくとも
                >「われわれは科学を無謬だとは言っていない。方法論は無謬だけど」という言い訳
                なんて事、私は言っていませんよね。

                私は成果が論文として発表され、検証されて認知されるまでのプロセスと、そこにどんな限界があるのかをただ紹介しただけであって、査読システムの問題についても優れた何冊かの書物をポインタとして挙げて興味のある方はそちらを参照してくださいと言ったのですが、そのコメントは読まれていないのでしょうか。

                恐らく相当に経験のある方と思われる nakanot 氏始め他のスレッドでのコメントにもある通り、科学の世界では既存の報告が間違っていれば、その根拠をきちんと示すことで誰でも否定することが出来ますし、逆に追試で検証されればどこの誰の論文であろうと評価が高まるようになっています。

                これは権威とは最も遠いシステムであるとは思われませんか?
                --
                Eureka !
                親コメント
              • ここのコメント、全部同一人物が書いたのかな?
                それを前提にお話しないほうがいいかも。

                > おやおや、年寄りのコメントはお気に召しませんでしたか。

                っていう始まり方は、やはりまずいのでは?

                「私はあなたの言うことを、取るに足りないことと思っていて、真剣にはお話したくない」というように読めるから。

                それに、コメントは
              • by Anonymous Coward on 2002年09月30日 18時14分 (#174788)
                > それに、コメントは「科学、そして学会の方法論は間違っていない」という前提で書かれていて、一方は「そこが間違っているのではないか?」という話になっているよね。
                >
                > 科学の方法論、というよりは、学会というものの「前提」を疑うか、それとも疑わないか?
                >
                > そういう論争をしているように見えるけど。

                「そういう論争」以前じゃないですか?
                #174077のACさんは今現在なぜこういう査読システム(査読者が内容の真偽を保証しない)に"わざと"しているのか理解していないのでは?
                (既に紹介された本の中に色々書かれているかと思いますが)査読者だって「無謬などということがありえるわけはない」からこそこうしてるんでしょ?
                議論の前提になる基礎知識を欠いていて論争も何もないと思います。

                車にたとえれば、
                「何で排気管にマフラーなんてものを付けるんだ。そんなもの取っ払ったほうが燃費が良くなって環境にいいじゃないか。」
                って言っているようなもの。

                親コメント
              • 今回の事件で査読システムや学会そのもののありかたに疑いがかかったため「いや、そういうことはない」とうち消したのが、記事中の「このシステムは(ちゃんと)機能している」という「反論」になった。

                それがこれ:

                > シェーン氏の調査にあたった委員会の委員長を務めた、応用物理学専門のマルコム・ビーズリー教授は、次のように述べている。「たしかに、不正は行なわれた。しかし科学の正常なチェック方法を使えば、このような不正は探し出せる。このシステムは機能している」

                そして、この文章の後のほうで、以下のようにもたたみかける。

                > しかし調査委員たちは、「こうし
              • by Anonymous Coward
                「先生!」なんてお互いに言い合っている業界が近くにありますけど、間違っても「先生」なんて言われたくない。自分が「先生!」なんて言われると、ホントにばかにされたのかと思う。あるいは、恥ずかしくて顔が上げられません。だって、自分は人に教えるべき何事を持っているのか、と自問自答すること、いっぱいあるのに、だからこそ、毎日が勉強なのに。
              • #いまさら、ですが。

                「仲間うち」なんて書いているようじゃ、「なんにも判っていないのね」て言われるよ。

                「公開」て言葉の意味、知ってる?
              • 「公開」といっても、それを理解できる人がある一定以下の少ない人数だったら、「公開」の意味はないよね。「公開」なのに、結果として「閉鎖的」になっているところが、人間社会ではたくさんある。で、学会もそのひとつ、といいたくなるところも多いとおもうがな。

                「でも、それはしょうがないのでは?」というのも、もっともなこと。だからそれが
            • by Anonymous Coward on 2002年09月30日 17時29分 (#174747)
              低脳自慢ですか。

              その人が信用できるとお墨付きを与えてくれる人はいない。信用するのはお前しかいない。それだけの話です。
              もともと情報ってのはそんなもんです。

              その程度の事に気付かない馬鹿は詐欺師に騙されてて下さい。
              モノを読むなら児童書をお勧めします。
              ついでにインターネットも見ないことをお勧めしますよ。この編集者さんの発言、少しでも疑ってみました?
              親コメント
            • 燃レス?
              それとも本気で言ってる?
        • by locate (5848) on 2002年09月28日 15時33分 (#173549) 日記
          > つまり「今回は仕組みがちゃんと働いてシェーン氏の捏造が
          > 明らかになった」というのは、正しかったことの「証明」で
          > はなく「言い訳」のように聞こえてしまうのだ、ということ
          > ですね。むしろ「論文発表前になぜ不正がわからなかったの
          > か?」ということが問題で、それが「いずれ」=「論文発表
          > 後」になってしまった、ということのほうが大きな問題では
          > ないか、と思うわけです。

          論文発表前に間違いやら不正やらが分かれば、それはそれで
          いいんですけど、誰も知らない世界で初めてだから論文に
          なるのですから、査読の段階で不正を見つけるのは難し
          いかもしれません。なので査読者は、論文の読者である多く
          の研究者が真義を判断できるように、実験方法を詳細に書け、
          とか、もっと実験を繰り返せとか、物理の説明が不十分だとか、
          まあそんな事を指摘しないといけないわけです。
          それをやってなかったんじゃないかと言う意味も含めて、
          反省点です。まあ、リジェクトしたほうが良かった例かも
          しれませんが。

          今回の件は、結局、不正が発覚しましたよ、ということで、
          「科学的方法論がうまく働きました、めでたしめでたし」と言う
          話な訳じゃないでしょうか。

          「いずれ」というのは問題じゃないか、と言う点ですが、
          もし誰かが、間違いやらねつ造をしていたとして、それが人類
          滅亡まで発覚しなかった場合は、何の問題もありません。
          なにか問題が起きますか?

          啓蒙書なんかに「実は、宇宙はたくさんあって、ブラックホール
          とホワイトホールでつながっている。」なんて書かれています
          が、それが人類滅亡までに証明されるか否定されるか分かりま
          せん。科学の中にも、そんな話題は山ほどあります。

          否定でも肯定でも、新しい結果が出ればそれは科学の進歩な訳です。
          今回も、結局、論文のデータがねつ造だったと分かったし、
          本人も認めたんですから、その分野の人にとっては、
          難しい問題が一つ解決して、一件落着というところでしょうか。

          もちろん、その捏造したデータ点の位置が、真実と異なるかどうか、
          については更なる研究が必要だと思います。
          捏造した研究者の山勘が当たっているかもしれませんし。
          親コメント
        • >だから、今回は不正の露見が「社会的に影響はあったけれども、なんとか必要かつ十分な時間内に」かろうじて間に合った、というだけのことであって、
          >これが間に合わなかった場合は不正は露見しないのと同じことになる。追試そのものも、なんらかの事情で行われなかったり、忙しくてできる人がいなかったりね。
          >あと、社会が半導体に興
      • by Anonymous Coward
        >本当は、論文投稿後のレフェリーによる審査の段階で、
        >明らかになるべきだったわけですが、それが機能していなかった
        >ことは反省点でしょう。
        当方人文科学ですが、これはなかなか難しい問題ではありますね。正直同じ学問領域で物理学者、化学者、生理学者と括っても専門が違えばちんぷんかんぷんなことが山ほどあります。論文のaccep
    • by mark (4383) on 2002年09月28日 17時53分 (#173638)
      > という開発者のいいわけ

      どっちかつーと、仕様がおかしい(とかあとから追加や変更のために混乱したとか)んだけど、その仕様の通りに実装したんだから動かなくて(使いものにならなくて)あたりまえだろ、という話の方を良く聞く気がするんだけど?

      きれいな仕様があってその通りに実装できないのは問題外レベルではありませんか?
      親コメント
    • by Anonymous Coward
      何でその結論に飛躍するのかがさっぱりわからん。
typodupeerror

アレゲはアレゲ以上のなにものでもなさげ -- アレゲ研究家

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