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異常プリオン分解酵素を発見 19

ストーリー by Oliver
仕組みを解析して応用を 部門より

KAMUI曰く、"河北新報の記事に依ると鹿児島大学・BSE対策プロジェクトが BSE(牛海綿状脳症)の原因とされる「異常プリオン」を分解する酵素を発見した。動物衛生研究所明治製菓の研究グループが 昨年発見した酵素より分解能力が高いという。
抗生物質を創り出す事で知られる放線菌の 一種が造る酵素の溶液を,羊と人間の異常プリオンに混ぜて 37℃で置く事 30分で検出されなくなった。130℃以上での処理が必要だった食肉処理場の器具消毒や,肉骨粉の無害化に役立つそうだ・・・って「無害化」ってのがチョイ意味不明なんですケド。
無害化してもう一度餌にするって訳じゃなくて,今は焼却処分だかしてるのを 「普通に廃棄」できる様になるって意味ですよね?(^_^;"

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  • 使途は狭い (スコア:3, 参考になる)

    by y_tambe (8218) on 2003年03月16日 15時17分 (#280134) ホームページ 日記
    異常プリオンに限らず、感染性のあるもの(細菌やウイルスなどを含むもの)を処分する場合に最も重要なのは、その中の病原体を「一つ残らずすべて」不活化/殺滅することです。

    その点において、今回のように酵素を用いる場合では不完全になるリスクが大きいです。酵素活性は周囲のpHや塩濃度、阻害物の影響を大いに受けますから。

    なお、異常プリオンについて現在認められてる処分方法は(参考) [shizuoka.jp]
    1. 800℃以上での焼却
    2. 132-134℃、1時間の高圧高温水蒸気滅菌(オートクレーブ)
    3. 1N水酸化ナトリウム,20℃,1時間
    4. 有効塩素濃度2%以上の次亜塩素酸、1時間
    の4種類で、うち「廃棄」という点で最も確実なのは焼却処分です。
    使い捨てするわけには行かないような器具(ガラス、金属など)ならばオートクレーブになります。これは圧力釜 のでかいやつをイメージしてもらえばいいです。通常の微生物ならば飽和水蒸気下で約120℃、約2気圧、約20分以上(*1)で湿熱(*2)処理しますが、異常プリオンは特殊で、より強い条件で処理します。3.と4.の方法は、この処理が使えないような、例えば実験室そのものをきれいにしたりする場合(焼いたり、釜に放り込んだり出来ない)に使われます。

    #---
    *1:細菌芽胞(納豆菌の仲間、炭疽菌、ボツリヌス菌などが作る耐久構造)が完全に殺滅されるのに必要な条件。
      逆にいうと「通常の微生物」でも煮沸だけじゃ不十分。これくらいの条件がないと「滅菌」にはならない。
      教科書の記載とは違うかもしれんけど、オートクレーブの条件は対象物によって多少変えるものなんです。
    *2:湿熱:水分があると加水分解反応などのために滅菌効率が水分のない場合(乾熱)よりも高くなる
    • by Pooh (4850) on 2003年03月17日 0時28分 (#280400)
      オペ道具は使い捨てか変性処理でいいんですが
      (いままでもB型肝炎みたいな比較的丈夫なウイルスへの対策は同じですから)
      変性させると意味のない臓器利用(含む血液)の2次感染の率を減らすのに役立つのなら
      それなりに価値はあるでしょう。(抗体反応を誘導するほど反復して使わないでしょうし)
      特にイギリス国民なんか潜在的に異常プリオンを持っている人の率も不明なので
      予防的にでも使用したいと思うんではないかと。

      ところで変性処理で思い出しましたが
      これはクロイツフェルト・ヤコブ病の汚染も食い止められるんですかね?
      以前から「ホルマリン漬けの医学生用献体」って変性させてあると言われても
      「プリオンには無効だよなー」、と気になって仕方ないんです。
      (手袋しているけれど、気が付いたら破れていたり
      家に帰ると妙に体にホルマリンがしみついてたりしますからね)
      親コメント
      • 医学系のポスドクということなので、敢えて厳しく。

        ここで問題になっている酵素は肉牛解体現場~流通段階で使われないと意味がないです。
        そんな現場で「○時間インキュベーションしろ」って言ってもまず守られないでしょう。
        第一、酵素が高価だし。


        変性させると意味のない臓器利用(含む血液)の2次感染の率を減らすのに役立つのならそれなりに価値はあるでしょう。
        変性させると意味のない臓器や血球細胞にそんな強力な蛋白分解酵素作用させて、そのあと何に使えるんですか?


        抗体反応を誘導するほど反復して使わないでしょうし
        わかりませんよ。
        Prion蛋白だって、本来CJDを引き起こすほど体内に入ることなどなかったはずですから。


        これはクロイツフェルト・ヤコブ病の汚染も食い止められるんですかね?
        ヒトのPrion蛋白が分解されるかどうかは酵素の特異性次第ですね。
        しかし、CJDの原因はBSEに感染した牛、スクレイピーに感染した羊の肉などを食べることが主ですから、牛や羊由来のPrion蛋白を分解出来れば予防としては有効ですね。


        「ホルマリン漬けの医学生用献体」って変性させてあると言われても
        「変性」ではありません。「固定」です。
        組織の場合、ホルマリン固定の場合、主に蛋白のアミノ基間が共有結合で架橋されていると思われます。
        蛋白、組織、器官の構造が出来るだけ壊れないように保つのが「固定」です。
        目的としては「変性」とは逆です。
        実際には、固定により活性を失う酵素が多いと思いますが、固定された状態でも活性を保つ酵素はあります。

        プリオンに有効か無効かは自分で考えてみてください。


        家に帰ると妙に体にホルマリンがしみついてたりしますからね
        ホルマリンは「ホルムアルデヒド水溶液」です。
        容器を開けた状態なら、ホルムアルデヒドは常に気体として出てきます。
        衣服や髪に吸着されても不思議はありません。
        しぶきがかかったとは限りません。
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        • by Pooh (4850) on 2003年03月17日 8時58分 (#280502)
          厳しくというかなんというか。

          >現場では守られないし、値段は高いし

          それは状況しだいかと。酵素の値段なんて需要と技術でいかようにも変わりますし
          「現場が守らないに違いない」と言い切るのも現場に失礼かと。

          >タンパク分解酵素をいれたら臓器がやられる

          これはいわれてみれば、ごもっともです。
          考えてみれば今回の酵素は「凝固系や線溶系みたいな
          特異性の高い分解酵素」ではない可能性が高いでしょうね。
          乾燥硬膜でもだめかも

          >CJDの原因はBSEに感染した牛、スクレイピーに感染した羊の肉などを食べることが主

          いじわるですが、孤発例がCJDの過半数で、BSE由来の変異型CJDとわかっている例は決して多くないですよね:P)

          >変性でなくて固定

          組織や解剖の人はそういいますね。
          でも「タンパク質の変性剤としてのホルムアルデヒド」
          という言い方があるわけで。
          ここではプリオン分子とかウイルス酵素 の変性についての話で
          組織構造の固定についての話ではないつもりだけれど、そんなに変?

          あと、プリオンにホルムアルデヒドがほぼ無効なのは有名では、と思いますし、スラッシュドットで「保存液が体についたと想像させるもっと生々しい証拠」の話をわざわざするのもアレでしょう。
          親コメント
        • >>「ホルマリン漬けの医学生用献体」って変性させてあると言われても
          >「変性」ではありません。「固定」です。
          >組織の場合、ホルマリン固定の場合、主に蛋白のアミノ基間が共有結合で架橋されていると思われます。
          >蛋白、組織、器官の構造が出来るだけ壊れないように保つのが「固定」です。
          >目的としては「変性」とは逆です。

          生化学的には「タンパク質の変性」ならば正しいですよ。むしろ「タンパク質の固定」とは呼びませんね。ホルマリンはアルキル化剤としてタンパク質を変性させますので。
          ただ、確かにおっしゃる通り、組織学的には「組織変性」というと、また別の意味になるのだと思いますから、「タンパク質を変性させて、組織(器官)を固定する」というのが、厳密な言い回しになるのではないかと。
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      • 「臓器利用には使えないだろう」ということはすでに(上の議論で)納得済みとして、今回の酵素にどういう使途があるか、ということですが。

        細菌などの培養を行うとき、その培地成分としてペプトンやトリプトン、トリプチケースペプトンなどと呼ばれるものを用います。分子生物学で使う大腸菌を培養するときにも使うので、耳に馴染みのある方もおられると思いますが、これらは「普通ブイヨン」や「肉エキス」と呼ばれる、肉を煮出して取ったブイヨンを、ペプシンやトリプシンなどで部分的に分解したものがベースになります。

        #それが細菌などの窒素源になる。細菌によっては単に肉エキスや普通ブイヨンで
        #十分なものもあるが、通常はペプトン等の方が生育がいい…値段はずいぶん違うけど

        このように肉由来製品によっては、アミノ酸やペプチドのレベルで壊れない程度にプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)処理してやるものもあります。いわゆる「肉骨粉」のレンダリング処理がどういうものかについては明るくないのですが、栄養補給という目的からいえば、同様の処理をしても構わないと思います。こういう場合に、従来のペプシン、トリプシンなどの代わりに(あるいは併用して)使うというのは、有効な利用法の一つかもしれません。

        ただし、それでも実用化にはまださらなる検証が必要ですね。今回の酵素による「分解」をどんな方法で検証したのかが判りませんから。元記事のリンク先にあった明治製菓の出したデータでも同様で、確かに異常プリオンの親ピークは減ったかもしれないけど、じゃあ「そこからどういうものが出来て、それには異常プリオン活性が残っていないのか」が検証されないことには何とも言えないわけで。もしかしたら、単に数か所で切断されるだけとか、それによって、検出に用いてる抗体との反応性が減っただけで、活性が残っているかもしれない。とりあえず、反応物を用いたマウス脳室内への投与実験の結果待ちでしょう。

        実際に研究している人の「こういう実用化の可能性がある」という主張が本当に「(小さな)一つの可能性に過ぎない」ことは、むしろ当たり前のことですよね ;-) ただまぁ基礎研究の立場から言えば、今後、プリオンの機能を研究する上でのツールの一つにはなる可能性もあるかもなぁ、という気もします。何にせよ、より有用な成果につながるといいですね。
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  • by Anonymous Coward on 2003年03月16日 11時27分 (#280003)
    餌に使えばいいと思うが。
    • Re:無害なのであれば (スコア:2, すばらしい洞察)

      by black-hole (9124) on 2003年03月16日 14時04分 (#280097) ホームページ 日記
      BSEは異常プリオン自体よりも、異常プリオンが拡大再生産されるサイクルを作ってしまったことに問題があると思うので、肉骨粉をまた餌に使うのはかなり心配です。
      --
      -------- tear straight across --------
      親コメント
      • by bsh (10668) on 2003年03月17日 1時29分 (#280428) 日記
        もともと草食動物の牛に肉やら骨といった動物由来の(しかも同じ種である牛の)餌を与えるのが根本的な大間違いな訳ですが。
        また、乳牛に肉骨粉を与えると、牛乳が不味くなるそうです(酪農家の息子の弁)。
        そういった意味でも肉骨粉は使用しないほうが吉かと。

        #飼料運搬の親父の仕事を手伝った際、大量に肉骨粉を生で吸ってたような気が。
        親コメント
        • > もともと草食動物の牛に肉やら骨といった動物由来の(しかも同じ種である牛の)
          餌を与えるのが根本的な大間違いな訳ですが。


          気持ちはわかるんですけどねぇ…。

          「牛乳はカルシウムに富んだ食品です」とは良く言われますけど。
          「じゃあ、乳牛はどこからカルシウムを取り入れてるの?」と。

          スーパーの牛乳棚では、牛乳1Lパックが155円。
          コーラの500ml PETボトルが100円。

          朝、酪農家が夜明け前からウシの世話して搾乳、各種製品化工程を経て、
          1Lあたり155円。
          同様に、工場のプラントで砂糖水に香料その他ほげって1Lあたり200円。

          なんか変だと思いませんか?
          皆さん、どうか牛乳をもっと高く買ってください。(今マジで切実)

          # 鶏卵もね
          # 「安全」な食品供給の構造を壊しているのは「消費者」の方です。(暴言)
          親コメント
          • なんか変だと思いませんか?
            皆さん、どうか牛乳をもっと高く買ってください。(今マジで切実)

            # 鶏卵もね
            # 「安全」な食品供給の構造を壊しているのは「消費者」の方です。(暴言)

            なんでそんな事になってるのか純粋に興味があるので差し支えなければご

            • >なんでそんな事になってるのか純粋に興味があるので差し支えなければご説明お願いできますでしょうか?(^^;

              消費者が「もっと安く!」を要求し続けた結果でしょ?

              結果、安全管理がないがしろにされてる・・・って、どっかの企業構造そのままじゃん。

              コスト削減など、
              • 返事遅くなってしまった…誰もおっかけててくれないかな。
                ごめんなさい。

                >消費者が「もっと安く!」を要求し続けた結果でしょ?

                その意味です。誤解されるのを覚悟して書きました。
                企業側は、安全管理のマージンを削ることで価格競争に対応してきました。
                こうして、たまに食中毒がトピックになり、そのうち忘れられる、というサイクルを
                続け、製品のクオリティがじわじわと下がっていくことを危惧しています。

                この目指す先は「諸外国並」にあることでしょう。
                英国に留学していた同僚は、売り場の牛乳がよく腐っていた話をしてくれました。

                当然のように食あたりしない安全な牛乳、
                当然のように生のまま食える鶏卵のような、
                「日が当たらないけど、世界的に貴重な安全性」は、これからどうなって
                いくのやら。

                # メーカーも悪い、消費者も悪い。もちろん、責任の一端は農家にもあります。
                # ただ、とばっちりを食っている生産者農家がもっぱら責められて、鼻血も
                # 出ない状況下でさらに努力を強いられる、というやるせない現状は、
                # どうにかならないもんか。

                # メーカーを叩けるのは消費者だけなのよ・・。
                親コメント
        • > 乳牛に肉骨粉を与えると、牛乳が不味くなるそうです(酪農家の息子の弁)。
          これ、以前食味試験したときは残念ながら有為差でませんでした。
          「肉骨粉与えた牛乳です」と明示すると有意差でるんで、先入観のたまものかと。
          同じ牛乳だったとしても「肉骨粉入」と教えた方を不味い、と言う傾向もありました。

          ま、味なんてそんなもんですけどね。
    • 異常プリオンが完全に消滅して、副作用もなければそれでもいいんですけど。
      実際にどの程度の効果があるのか不明なので判断保留。
      --

      --
      Ath'r'onならfloatあたりに自信が持てます
      親コメント
    • (ヒトでも動物でもいいんだけど)分解されたものを食べて、体内で再び合成されちゃったりしないのかな?
      • 合成されるでしょう。正常なプリオンが。 正常なプリオンはあなたの中にもたくさんあります。
    • シリカゲルみたいなものでは。

      # 無害ですが食べられません
    • 100.00%無害化できても、使わない方が良いよ。
      一度でも作業工程にミスがあったら、惨事の再来だもん。
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