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水を使った高純度で長いカーボンナノチューブ 90

ストーリー by Oliver
~~~~~ 部門より

sillywalk曰く、"読売新聞の記事によれば、産総研ナノカーボン研究センターの畠賢治・主任研究員らのチームは、カーボンナノチューブを大量生産するための製造法を開発しました。
カーボンナノチューブは原料となる炭化水素等を700℃以上に加熱し触媒を通過させたあと基板上に気相成長させるといった方法がありますが、研究チームはこの反応プロセスに微量の水を加えることで不純物の燃焼・除去を促進し、従来の製造法に比べて長さ500倍(2.5mm)、純度2000倍(99.98%)のチューブを作ることに成功したといいます。
これまで特定のナノチューブを選択的に合成するための反応制御は難しかったのですが、こうした発見により今後の実用化に弾みがつくと見られ、すでにNASAなどを始めとする研究室や企業からサンプル提供の依頼が相次いでいるといいます。私達が生きている間にカーボンナノチューブを使った軌道エレベータが実現するのかも知れませんね。"

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 概略など (スコア:5, 参考になる)

    by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2004年11月21日 21時46分 (#655701) 日記
    今回の手法の概略です
    #まあ,Scienceの方を見ていただければ良いんですが.

    ・製法としては水をちょっと加え,その酸化作用でアモルファスカーボン
     を取り除く.
     *水の量や温度をきっちりしてやれば,酸化され易いアモルファスカー
     ボンだけを取り除くことが可能.

    ・単純な方法なので,さまざまなCNTの合成に適用できる.
     実際,キャリアガスの種類などにもよらないため,他の手法と単純に
     組み合わせるだけで純度や収量を増やせる.

    ・触媒寿命が非常に長く,アモルファスカーボンも取り除けるため純度の
     高いCNTが得られる.さらに量も大量に素早く得られる.

    ・ほとんどSWCNTかつバンドルにもなっていないものが得られた.
     さらに配向が揃っているため,応用に良いのではないか.

    ・綺麗に伸びるため,基板上に触媒をパターニングしておくとその形の
     まま伸びる.

    といったところです.
    夏だったかのフラーレンシンポで発表されてましたが,特許とるまで
    論文には出来ない(論文出すと公知の技術になってしまう.学会発表なら
    半年間はOK)のでようやくの論文掲載となりました.
    #飯島先生自身も過労だかで倒れられてましたが,最近調子が良くなって
    #きているようなので一安心.
    #でもなあ,新聞の記事,自分らの研究成果に自分でコメントしてるのは
    #どうなんかなあ(苦笑)
    • Re:概略など (スコア:2, 参考になる)

      by Anonymous Coward on 2004年11月21日 22時24分 (#655714)
      どんな学会であっても大丈夫というわけではなく、決められた学会であればですので誤解がないように。 特許法第30条 [houko.com]参照あれ。また、自分の参加している学会が所属しているかは特許法第30条指定の学術団体 [jpo.go.jp]を。
      第30条 特許を受ける権利を有する者が試験を行い、刊行物に発表し、電気通信回線を通じて発表し、又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより、第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明は、その該当するに至つた日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、同条第1項各号の一に該当するに至らなかつたものとみなす。
      親コメント
  • by KAMUI (3084) on 2004年11月21日 21時39分 (#655698) 日記
    Volume 306, Number 5700, Issue of 19 November 2004 [sciencemag.org]中の
    Water-Assisted Highly Efficient Synthesis of Impurity-Free Single-Walled Carbon Nanotubes
    ・・・です。

    Abstract [sciencemag.org]
    Full Text [sciencemag.org]
    PDF [sciencemag.org]

    #どれも要登録
    • by MIYU (17727) on 2004年11月22日 7時06分 (#655863)
      ローテク技術が導くナノチューブの発展 [sciencemag.jp]

      日本の研究チームは水を加えてチューブを長くしていますが、Australiaの研究チームの方は、ウール紡績の手法を使ってナノチューブを紡いだそうです。
      防弾チョッキに使われる繊維と同じくらい強靱
      高い電気伝導率を備えた強靱かつ柔軟性に富む
      通常の繊維とは異なり、この糸は両端を留めなくてもねじれが解けず、結び目を作っても強度が低下しない
      金属製ワイヤの代わりに用いられる事を期待しているようです。

      今年の3月には、ケンブリッジ大学の研究者達も、エタノールを素材の炭素に混ぜ込む事で長いチューブを作る手法を発表していました。まだ長さも強度も目を見張るほどとは行かなかったようですが、プロセスの価格が安価になる、有害な溶剤を用いないなどの特徴が有ったようです。(Nature Web Newsの記事は“Yarn spun from nanotubes” 今は有料記事に移行しています)

         # 宇宙エレベーターの素材になるのはまだ先でしょうか
      親コメント
  • 素人 (スコア:2, おもしろおかしい)

    by fortunateorange (21435) on 2004年11月21日 22時43分 (#655721)
    カーボンなのチューブの何が優れているかを、
    門外にもわかるようにせつめいせよ。

    ・チューブ状らしい
    ・さいきんたまたま日本の研究者が見つけたらしい
    ・CPUの上に撒くとコンピュータが早くなるらしい
    ・不老不死の薬になるらしい
    • Re:素人 (スコア:3, 参考になる)

      by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2004年11月22日 0時58分 (#655781) 日記
      ナノチューブの長所

      ・欠陥が無い(たまにあっても非常に少ない)ので電子の散乱が少ない.
       (バリスティック伝導を示す領域が長い)
       そのためスピンを保ったまま長距離にわたって電流を流せ,スピン
       トロニクス素子として有望
       (磁性と伝導両方を生かした素子.最近の流行.磁気抵抗素子など.)
       また長くても低抵抗(バリスティックな領域では実質ナノチューブ内
       での抵抗はゼロ)

      ・機械的強度が高く,また熱伝導性も高い.
       ま,グラファイト構造なんで.ダイヤモンドに近いですから.
       ナノチューブを樹脂内で磁場により配向させ,そっち方向の熱伝導を
       格段に良くしたパッケージ樹脂とか開発してたなあ,某日本メーカー.
       Intelあたりからも引き合いがあったりします.

      ・BNナノチューブなどの絶縁素材の内外をCNTで包むと,非常にエネル
       ギー密度の高いキャパシタになる.たぶん.
       まあ,オングストロームの極板間隔のコンデンサですから.

      ・二重のCNTだと電圧等により内側をスライドさせ,ピストンのように
       も使える.かも.

      ・電子の放射特性がいいから,フィールドエミッションに最適(かも).

      ・一部だけドープしたり,径を変えることが出来ればダイオードやら
       トランジスタとして働く(と思われる).

      ・CNTでレーザーとかも作れる(らしい.いや,直接その発表聞いたわけ
       じゃないんで).最小クラスのレーザー.

      物理的に面白い点
      ・巻き方(ナノチューブの径,シート内のグラファイトの格子の向き)に
       よって金属伝導(全体の1/3)だったり半導体(2/3)だったりする.

      ・擬1次元系なんで,低次元性がもろに出てくる.しかも大きくて欠陥
       が少ないんで精密な測定がしやすい.
       #朝永-ラッティンジャーとか.
      親コメント
    • Re:素人 (スコア:2, 参考になる)

      by Joga (8113) on 2004年11月21日 22時53分 (#655727)
      > カーボンなのチューブの何が優れているかを、
      > 門外にもわかるようにせつめいせよ。

      「軽くて強度が強い(アルミの半分の重さで鋼鉄の20倍)」らしいよ。
      他にもいろいろあるらしいけど、これだけでも十分かと。

      その他、「中に空間があるので、他の分子を入れるといろいろできる」とか。
      親コメント
      • Re:素人 (スコア:3, 興味深い)

        by nidak (2008) on 2004年11月22日 14時43分 (#656057) ホームページ 日記
        蜘蛛の糸が元ネタにあるとか言う話もあり、実際、蜘蛛の糸を
        鉛筆程度の太さに束ねると、ボーイング747を吊れる強度になる
        とかで。

        だからスパイダーマンは強いんだ。
        と、感心してしまいます。
        --

        There is no spoon.
        親コメント
      • Re:素人 (スコア:1, すばらしい洞察)

        by Anonymous Coward on 2004年11月22日 0時46分 (#655774)
        強度といっても色々あるから、そんなに簡単な比較はできないだろ。
        親コメント
    • Re:素人 (スコア:1, おもしろおかしい)

      by Anonymous Coward on 2004年11月21日 23時49分 (#655743)
      >カーボンなのチューブ

      なんか夏っぽいカーボンだな、おい。
      親コメント
    • by Tsukitomo (22680) on 2004年11月22日 0時37分 (#655765) 日記
      > 門外にも

      門外“漢”でないということは女性の方ですか。

      # しろうとの女性のことは熟語でなんと言うんだろう。
      --
      Your 金銭的 potential. Our passion - Micro$oft

      Tsukitomo(月友)
      親コメント
  • 今の時代 (スコア:2, 参考になる)

    by Anonymous Coward on 2004年11月22日 0時09分 (#655745)
    作ったら、壊すときの事も考える必要があるのでは。人体、環境にどのような影響をもたらすか、また適切な構造物の解体・物質の処理法などいろいろ考えることがありそうですが。(湾岸の屋内スキー場「ザウス」の解体作業レポートをNHKで見てて強く思ったので)

    ナノテク全般ですがこんな記事もありますし。

    ナノテクが新たな有害物質を生む?――最新電子顕微鏡が明かすナノ粒子の素顔 [goo.ne.jp]
    ナノ素材の毒性を示す新たな実験結果――ナノテクへの懸念が増大 [goo.ne.jp]
    ナノ粒子に健康影響懸念 米政府が毒性評価研究へ [yahoo.co.jp]
  • by kn173205 (14800) on 2004年11月21日 21時13分 (#655686)
    カーボンナノチューブと軌道エレベータ-の関係がわかりません。
    カーボンナノチューブがあれば軌道エレベーターは作れるの?
    • 作れません。 (スコア:4, 参考になる)

      by messo (7339) on 2004年11月21日 22時16分 (#655711) ホームページ 日記
      カーボンナノチューブで作ったからと言って強いケーブルにはなりません。
      問題は繊維にする際の構造が問題です。

      繊維とは高分子が絡まった状態でできており
      引っ張りの強さは絡まった高分子に均等に分散できるかにあります。
      つまり単に カーボンナノチューブの線を束にしても
      繊維の方向を均一化して各々を結合させるような事をしない限り
      軽くて強いケーブルにはなりません。
      電極やらは今回の方法で解決できると思いますが
      ケーブルが作られるようになるまでは、
      まだまだ先になると思いますね。
      親コメント
      • Re:作れません。 (スコア:3, 参考になる)

        by tuneo (2938) on 2004年11月23日 0時24分 (#656322) ホームページ 日記
        > カーボンナノチューブで作ったからと言って強いケーブルにはなりません。
        待て待て待て。いきなり何を言い出すかと思えば…大学1年生?
        専攻どこです?

        > 問題は繊維にする際の構造が問題です。
        繊維にする際の構造って…CNTは単結晶ですが。
        他にどんなCNTがあるのでしょう。アモルファス?

        > 繊維とは高分子が絡まった状態でできており
        高分子ではない金属やガラスやセラミックだって繊維にできます。そもそもCNTだって高分子じゃないし。大間違いですね。

        > 引っ張りの強さは絡まった高分子に均等に分散できるかにあります。
        CNTは炭素原子が共有結合した単結晶なので高分子繊維の強度に関するお話は通用しません。CNTが強い理由は主に

        ・炭素同士が共有結合してるので強い
        ・グラファイトを筒にしたような結晶構造なので強い
        ・単結晶なので結晶粒界のせいで強度が落ちないから強い

        くらいですかね。上記のように素性が有望な材料ですが、現在は合成技術がまだ未熟で、純度が低くて(所々に非晶質の炭素が混じったりする)短いチューブ(mmオーダーが精一杯)しか作れないのが悩みどころです。短くて不純物混じりだとマズイ理由は、大雑把には

        ・不純物が混じると結晶構造が不規則になり、ミクロレベルで応力が集中する→強度の低下
        ・短いものはつなぎ合わせて使うしかないが、そうすると接合部でマクロレベルの応力集中が起きる→強度の低下

        という2点が挙げられます。だからCNTの研究やってる科学者はシャカリキになって高純度で長いCNTを作ろうとしてるってわけ。

        > つまり単に カーボンナノチューブの線を束にしても
        > 繊維の方向を均一化して各々を結合させるような事をしない限り
        > 軽くて強いケーブルにはなりません。
        そりゃ、今あるmmオーダーのCNTじゃそういう使い方しかできないだろうけど、軌道エレベータで使うようなCNTは1本数km~数十kmのオーダーの長さを目指してます(理由は上記参照)。こんな途方も無い長さのCNTは繊維方向を均一化だとか各繊維を結合だとか考えず、ただ束ねて使うだけ。

        新しい合成技術が開発されてCNTの高純度化と長繊維化に著しい進展があったけれども、それでもまだmmオーダーなので、軌道エレベータで使える長さまでは前途多難です。というのがCNTをめぐる現状です。決して貴方の仰るように、繊維の構造上の問題で軌道エレベータに使えないわけではありませんよ。

        # 材料屋崩れのへたれSEなのでtuneo。
        親コメント
      • by shiraga (14233) on 2004年11月23日 3時58分 (#656372)
        引っ張りの強さは絡まった高分子に均等に分散できるかにあります。
        つまり単に カーボンナノチューブの線を束にしても
        繊維の方向を均一化して各々を結合させるような事をしない限り
        軽くて強いケーブルにはなりません。


        おそらく『カーボンナノチューブ』というものの構造に関して誤解しておられると思います。
        カーボンナノチューブというのは、炭素が規則正しい網目状(あるいはカゴ状)のチューブを作っているものです(参考 [accsnet.ne.jp]、 [uec.ac.jp])。
        この構造のため、単繊維それ自体で引っ張り力を(単繊維内で)均等に分散する能力があります。
        この構造のためもあり(それとグラファイト結合の強さ)、(単位長さあたり同じ重さを持つ)他の繊維(高分子材料に限らず)と比較して強い繊維になるんです。
        「繊維の方向の均質化」というのも、自動的にクリアされています。

        もっとも、実用レベルで十分な強度を得るためには複数の単繊維を(力を分散出来るように)束ねる必要がありますが(かならずしも繊維全長にわたって単繊維同士を結合する必要はない)、単繊維の段階で強いのですから、適切な方法で束ねれば、軌道エレベータを実現するのにも十分な強度が得られるだろうと期待されているわけです。

        また、既存の繊維では無限の長さを持つ単繊維を作るのは事実上困難(そしてつなぎ目部分が弱点になる)ですが、カーボンナノチューブではつなぎ目部分での化学結合の生成をコントロールすることにより、複数の単繊維を完全に繋くことも可能ではと期待されています。
        つまり、事実上つなぎ目のない任意の長さの繊維を作ることも可能だと期待されています。
        これも大きな利点ですね。

        あえて強度の出ないような束ね方をすれば別ですが、普通に考えて非常に強いケーブルが出来るはずですが…。

        まだ実用化のためにはいくつも課題があり、今回の技術だけでは不十分というならわかりますが。
        親コメント
    • by keybordist (3572) on 2004年11月21日 21時32分 (#655694) 日記
      詳しい話はこちら [srad.jp]にあるので、
      簡潔に述べると、

      軌道エレベーターの構造体になりうる材質がカーボンナノチューブなんだけど、
      そのためには軌道上まで一直線に生成する技術が必要。
      で、今回の話は、今までとは比較にならない程長い物が出来たから、ひょっとしたら、って事。

      ただ、これで実際のところどれだけの長さのものが出来るかは不明。
      親コメント
    • by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2004年11月21日 21時34分 (#655695) 日記
      軌道エレベータは長くてかなりの力がかかるで,相当な引っ張り強度が
      無いといけません.
      で,強度的に期待されているのがCNTで,これの機械的強度なら何とか
      いけないことも無い,と.
      ただ実際にはそんな数万キロのCNTを作るのは無理ですし,継ぐとなると
      強度ががた落ちするので実際の実現性は謎です.
      #少なくともあと50-100年は無理だと思う.
      親コメント
    • by Corleone (25046) on 2004年11月21日 22時07分 (#655708)
      まっすぐ天へ [amazon.co.jp]を読んだ影響じゃないでしょうか.
      軌道エレベーターの概略とか分かり易いので読んでみては?

      まぁ材料開発は時間も手間もかかるので気長に.
      親コメント
    • by tarosuke (2403) <webmaster@tarosuke.net> on 2004年11月22日 15時41分 (#656084) 日記
      CNTでなくても軌道エレベータは作れるよん。

      だけど、質量あたりの引っ張り強度が低いと、必要なテーパー率(根本径/先
      端径)がものすごく大きくなるので軌道に揚げなきゃならない質量が莫大にな
      るのだ。当然費用も莫大。

      で、CNTは質量あたりの引っ張り強度が今までの材料に比べて格段に高そうな
      ので、必要なテーパー率も小さくて済み、揚げなきゃならない質量も格段に少
      なくていいから費用が格段に安くなる。んじゃないかなー。と言われてる。
      親コメント
    • Re:おいら馬鹿だから (スコア:1, すばらしい洞察)

      by Anonymous Coward on 2004年11月21日 21時32分 (#655693)
      ググれ [google.com]。
      親コメント
  • by Pen2 (18210) on 2004年11月22日 13時34分 (#656023)
    綺麗に揃っているから化学方面には使いやすいだろう。
  • by masa64 (11420) on 2004年11月22日 16時34分 (#656109)
    水を加えることで成功したそうですが、水って使えるんですね。ナノカーボンつくったり、天ぷら揚げたり。
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※ただしPHPを除く -- あるAdmin

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