鉄より強いプラスチック 103
ストーリー by reo
プラ人 28 号 部門より
プラ人 28 号 部門より
ある Anonymous Coward 曰く、
広島大の彦坂正道特任教授とが、鉄鋼の 2 〜 5 倍の引張強さ (同じ重量での比較) を持つというプラスチックシートを開発したそうだ (47NEWS の記事より) 。
ひも状の高分子ポリプロピレンの液体を融点以下の約 150 度で瞬間的に圧縮することで分子のひもを整列させ、分子結晶間が緊密に強く結び付いたプラスチックになるという。製造価格は通常のプラスチックとほぼ同じだそうで、ガラスの代用品や自動車ボディへの応用が見込めるとのこと。
自動車での需要は高そう (スコア:3, 興味深い)
今までは,その素材としてカーボンを利用していましたが,いかんせん価格が高いのがネックでした.
ですが,このプラスチックの登場で,格段の軽量化が見込めそうです.また,価格もぐっと下がりそうな予感.
不安というか,疑問があるのは,事故った時にどんな破損具合になるか,でしょうか.破片が強く飛び散るようであれば,周囲の方々を傷つけてしまうし,何より車内の人が安全じゃない気が…
自動車の車体骨格の主役にはなれない (Re:自動車での需要は高そう) (スコア:4, 参考になる)
自動車の車体骨格やシャシー部品をこの樹脂材料だけで構成することは考えにくいです。
おそらく、採用はドア、フェンダーまで、耐久性次第でフロントウィンドウを除くガラスと、
骨格ならば一部の補強材まででしょう。
自動車の車体骨格に必要な特性は、衝突安全や耐久性にかかわる「強度」も必要ですが、
同時に「剛性」も必要とされます。
これは、おおよそ縦弾性係数と製品形状で決まるのですが、樹脂の一般的な縦弾性係数は
鋼板の1/100程度のようです。
これにより、同じ形状で同じ性能を出そうとすると、厚さが数倍〜数10倍になってしまい、
せっかくの比強度の良さが失われてしまいます。
これを補うためには、形状により剛性を出す工夫が必要です。
現在多くの車体に使われている鋼板の「プレス+溶接」に比べると樹脂成形部品の形状自由度は
格段に高いですが、
[1] 大物部品に弱い
射出成形を行う場合、樹脂を送り込む圧力にまけない型締力を発生させなければなりません。
単純にいえば、部品の投影面積に比例して成形設備が巨大化します。
まして、成形後に再度プレス(それも部品全体を高圧下におく!!)が必要なら、なおさらです。
[2] 部材の接合が難しい
鋼板の「溶接」は、高速で丈夫な優れた接合手法です。
樹脂部品では、おそらくボルト締結になるかと思いますが、コスト面から不利です。
[3] 成形できる形状に限りがある
自由度が高いといっても、成形の為の様々な制限が無いわけではありません。
例えば、金型を使う以上、型抜きに伴う製品角度の制限は、かなりあります。
今回の成形工程の場合、急速に圧縮成形する必要があるため、これに伴う制限もありそうです。
という問題があり、「大きく作れず、小さい部品の組み合わせは高コスト、できる形状は
ベストから遠い」といったことになると思います。
また、強度について考えても、一般鋼板の270MPa級に大して、倍の強度の590MPa級の高張力鋼板が
すでにかなり普及している(難成形の問題をクリアしつつある)ことを考えると、
当面、今回の高強度樹脂材料が車体骨格の主役になることは、まずありえないと思います。
逆に、車体骨格や、エンジン周辺(エンジンがあれば、ですが...)を除けば、コストと成形性次第で
採用がひろがる可能性はあると思います。
自動車用じゃない (スコア:2, 参考になる)
ニュースソースの「自動車の車体を鉄鋼でなく今回の素材に置き換えると~」云々は、あくまでも高性能をアピールするための分かりやすいたとえ話に過ぎないことに注意してほしい
引っ張り強度が従来比7倍と書いてあるが、これは言い換えれば引っ張り強度以外の特性はまだ評価していないということだ
Re:自動車用じゃない (スコア:1)
外装まで変えられると良いのですが,内装部分だけでも,とは思います.
先日,ランボルギーニがガヤルドのスーパーベローチェを発表していましたが,これは軽量化のために,ドアの内側をFRPにしていました.まずはこういった利用にはよいのでは,と思います.
この発表については,実用化の目処が立った,程度に受け止めています.今後,素材メーカなどと協力して研究が進めば,実用に耐えられる良いものが出てくるだろう,という点に期待しています.
Re:自動車での需要は高そう (スコア:1)
限度以上の応力が掛かったときの破損箇所を限定できると思います。
〜後悔先に立たず・後悔役に立たず・後悔後を絶たず〜
Re:自動車での需要は高そう (スコア:1)
Re:自動車での需要は高そう (スコア:1)
そういえば、サターンはフェンダーとかにプラスチック使ってたのを思い出したけど、このプラスチックだと、シャシも含めてオールプラスチック化できる?
#昔、新宿のショールームで「あの」フェンダーを踏みに行った記憶が(w
でも、EVとか作る際には、バッテリーの重量を気にしないでがんがん積めて良いのかもな…
#オートクルーズまで付けたら、1/1のラジコンカーみたいになりそうだけど(w
/* Kachou Utumi
I'm Not Rich... */
トラバント (スコア:1)
ボール紙で出来たボディと揶揄された車ですが、一応FRPベースだったようです。
このプラスチックを使ってオールプラのトラバントボディを日本で走らせてくれないかなあ。
#中身はLEAFあたりでgesaku
Re:自動車での需要は高そう (スコア:1)
# ますます事故って燃えると何も残らない車種に。
Re:自動車での需要は高そう (スコア:1, おもしろおかしい)
「このボケ車、電気ぐらい表面通して流さんかい!」とか?
Re:自動車での需要は高そう (スコア:1, おもしろおかしい)
非難してないで避難しないと。
Re:自動車での需要は高そう (スコア:1)
導電性の塗装をしないといけませんね。そして、塗装が剥げちょろのまま乗り回してると命にかかわることがある、と。
Re:自動車での需要は高そう (スコア:2)
>> 事故った時にどんな破損具合になるか,でしょうか.
>これでシミュレーションソフトの新しい需要が出るな。
樹脂にかぎらず、実部品スケールの破断伸展解析をマトモな時間内で行う需要は
いまでもありますが、自動車衝突解析などに使えるレベルのものは存在しません。
つーか、くれ。今すぐ。
こないだの試験結果を明日上司にせt(これ以上はIDで書けない..)
# FEM解析は、「連続体力学」の枠組みをベースにしているので、
# 「破断」という非連続体化する現象とは、非常に親和性がわるいのです。
# そもそも、樹脂の場合、まともに使える破断モデルもないんじゃないかなぁ...
# そんなわけで、「IT業界」に落ちる以前のレベルだと思います。
Re:自動車での需要は高そう (スコア:2)
>存在しないとまでいわれるとちょっと。
え!あるの??
>樹脂の場合、物性のひずみ速度依存性が大きいので
しかも、大抵破断する部位は、成形過程も含めるとかなり特異な物性状況にあって、
ラボレベルならともかく、実用に耐えうるものは困難、という認識でした。
割れる/割れない、じゃなくて、割れたその先を予測することを
ほんとに使えるレベルまでもってきているなら、すごいことだと思います。
つまり (スコア:3, おもしろおかしい)
Re:つまり (スコア:1, 興味深い)
こんなのを待たずとも、ABSアロイで作ればよいのでは?
#そもそもこれ「合金」じゃないしな。
よーく読んでみると? (スコア:3, 興味深い)
ををっ、カーボン樹脂をリプレースできるかこれわっ!?と思いかけたんだけど、
> 鉄鋼の 2 〜 5 倍の引張強さ (同じ重量での比較)
この点が引っかかりますね。
同じ体積だとどの程度の引張強さになるんでしょうか。
内容次第じゃあまりぬか喜びできないような気もします。
Re:よーく読んでみると? (スコア:3, 参考になる)
重量比でなら杉だって鉄より強度は高いですしね。 [google.co.jp]
Re:よーく読んでみると? (スコア:3, 参考になる)
同じ重量で2~5倍の引張強さとか適当すぎてなんだかもう。
引っ張るときの標点間を長くしても同じ重量になるわけで、長さが同じで同じ重量とか言わないと不正確ですよね。
比強度と言えばいいのに。
それはそうと、鉄鋼といっても成分や熱処理や加工の違いで、400N/mm2程度のものから1000N/mm2超えのものまで、
ピアノ線にいたっては2000N/mm2超とかあるわけで、鉄鋼の中でも5倍ぐらいの差はあるわけで、
鉄鋼の2~5倍ってどんなものなのかピンと来ませんね。
比重がいくらで抗張力がいくらですよと言ってくれればシンプルなのに。
Re:よーく読んでみると? (スコア:3, 参考になる)
>比重がいくらで抗張力がいくらですよと言ってくれればシンプルなのに。
比重がいくつで引っ張り強度がいくらか,ってのは広大の説明のところに書いてありますよ.
#そして結果は230MPaと微妙.
http://www.hiroshima-u.ac.jp/top/koho/news_info/p_epvdxb.html [hiroshima-u.ac.jp]
Re:よーく読んでみると? (スコア:1)
毎日.jp の記事 [mainichi.jp]にありますが、同じ重量だと強度は鉄鋼やステンレスの約半分です。記事に含めようかなと思ったのですが、冗長になりそうだったので「あとは各自ぐぐれ」ということで含めませんでした。
Hiroki (REO) Kashiwazaki
Re:よーく読んでみると? (スコア:1)
スポーツ用自転車のフレームも昔はクロモリだった。
アルミが出始めたころは太くて不格好と思ったものだが、今時クロモリフレームの自転車を見ることは少ない。
事情を知らない人がクロモリ自転車をみたら、フレームが細くて強い力をかけるとたわむし、強度不足を心配しちゃうんじゃないかな?
人は慣れていくし、部材が厚く大きくなったとしても、そのうちみんな慣れる気がする。
まあ自動車に採用されると決まった訳じゃないけどね。
劣化が気になる (スコア:2, 興味深い)
樹脂系だと紫外線劣化とか熱劣化とかありますが
どうでしょうか?
Re:劣化が気になる (スコア:1)
紫外線劣化はかなり防げるのでは。
〜後悔先に立たず・後悔役に立たず・後悔後を絶たず〜
Re:劣化が気になる (スコア:2)
非塗装物が金属とプラスチックでは塗料がかなり違いますし、金属、プラスチックそれぞれでも材料によってやはりだいぶ変わります。
Re:劣化が気になる (スコア:1)
〜後悔先に立たず・後悔役に立たず・後悔後を絶たず〜
Re:劣化が気になる (スコア:1)
錆びなさそうだし、UVカットシールでもよくない?
自作シールでいろいろカスタマイズできそうだ。(痛
Re:劣化が気になる (スコア:1)
それより高温耐性かな?
定期的な張り替えや芯材として使用するとかで劣化の害は減らせると思う。
だけど、車のボディや窓ガラスって結構、高温になるから、その温度でたわんだり剛性が失われるとまずいと思う。
http://www.ecosci.jp/poly/poly_tmtg.html [ecosci.jp]
Re:劣化が気になる (スコア:1)
通常のプラスチックと比較して硬度が増しただけじゃないかと思われます。
ガラスの場合、硬度が増すと1か所の亀裂が全体に及び易いけれど、プラスチックの場合もともと全体への影響が出にくいので、力が加わった時の撓みの方向に割れるだけではないかと思われます。(アクリルに近いのじゃないでしょうか)
※全部推測です、スイマセン。
自転車の素材としては? (スコア:2, 興味深い)
もし自転車に使えるようなら、カーボン以来の素材革命になりそう。
振動吸収性とかの機械的性質にもよるのでフレームに使えるかは分からないけれど、
ホイールあたりなら製品化できるのではと思います。
#この素材でUCIの車重規定が変わったら本当に革命。
Re:自転車の素材としては? (スコア:1, 興味深い)
結晶の揃えかたの新方式? (スコア:2)
ポリエチレンの高強度な結晶の作り方ってのが従来からありましたよね。
ゲル紡糸法というそうですが、直鎖状高分子を普通に凝固させると局所的に折り畳まった結晶ができてしまうところ、引っ張り揃えてまっすぐぴっちり揃った繊維状結晶にするとすごい強度が出ると。
今回のこれは、ゲル紡糸に代えて圧縮によって揃った結晶を作れるってことで、繊維状に留まらない好きな形(今回は板状)に成形できるのが特徴と言えそうです。
と読み取ったのですが、いかがでしょうその筋のえろいひと
Re:結晶の揃えかたの新方式? (スコア:1)
延伸だけでなく圧縮することで伸びきり鎖結晶ができることは昔から知られていました。
それこそ、今回発表を行った彦坂先生はその手の研究をかなり前にやっておられました。(とはいっても電子顕微鏡で確認するようなレベルの物が中心でしたけど)もちろん物理的な特性は延伸で作った伸びきり鎖結晶と同等のもので引っ張り強さは非常に強いものです。
よりマクロなスケールで実現できたと言うことが今回の発表のすばらしいところでしょうか。
分子結合殻ですね、わかります (スコア:2)
黒い車は堅いとおもえ、と。
#ぃゃぃゃ、無理ですマイケル
車に使ったとき (スコア:1)
凹むことによる衝撃吸収や金属からプラスチック化によるエンジンノイズが
搭載電子機器への影響が大きくなるのかが気になりますね。
Re:車に使ったとき (スコア:1, 興味深い)
実用化されれば、構造材以外の部分では置き換えが進むんじゃないですかね。
ノイズの遮蔽という意味では線材を入れておけばいいのでは。
熱耐性が不明ですが、カーボンディスクの代替とかは難しそう。
ガラスの代替に使うと水没したときに割れないと困る。
#プリウスって走行時に被雷したらどうなるんだ?
昔、カプセラというオモチャがあって (スコア:1)
透明カプセル内にモータやギアが入ったユニットと、車輪やプロペラなんかをつなぎ合わせていろんなモノを作れる
カプセラ [google.com]というオモチャがあったんですが、
そのカプセルの説明に、「材質はポリカーボネートで、鉄より強いプラスチックだ」みたいなことが書かれてたおぼえがあります。
まぁ実際は、「鉄よりも」ってほどではないようですが強度は高く透明なので、オートバイ用ヘルメットのシールドをはじめ、防弾ガラスにも使われてるみたいです。今回はもっといい素材ができてきたんですね。
23世紀から来ますた (スコア:1, おもしろおかしい)
わたしたちの常識では、そういう目的には透明アルミを使いますがね…
製法、知りたい?(笑)
Re:23世紀から来ますた (スコア:3, 興味深い)
ここで透明アルミの作り方を知ってしまったら、透明アルミの発明は誰がやったことになるんだろう…
脳味噌腐乱中…
Re:23世紀から来ますた (スコア:1)
そんなの、最初に特許を申請した人に決まってるじゃないですか。
# なんて身も蓋もない…
Re:23世紀から来ますた (スコア:1)
実現されてるの?
Re:23世紀から来ますた (スコア:1)
>酸化させて結晶化させると良いんだよ。
それだとtransparent aluminiumではなくtransparent aluminaになっちゃうから駄目.
バイクに (スコア:1)
Re:そのうち (スコア:3, おもしろおかしい)
車両じゃなくて線路に使われなきゃダメでしょう。そして、プラレールと呼ばれるように…
Re:そのうち (スコア:1)
呼んだ? [takaratomy.co.jp]
Re:もやもやする (スコア:4, 参考になる)
とりあえず,融点というのは高分子界隈では普通「結晶の融点」という意味で使います.
で,通常の樹脂は金属とかと違ってかなりの割合が結晶ではなく,ただ単にひも状の高分子が絡まってほどけづらくなっているだけです(アモルファス状態).なので,樹脂が見た目固まっていて固体のように見えてもたいていは液体です.この見た目固体のように見える状態をガラス状態といいます.これを加熱すると,どろどろとした飴状の物体に変わりますが,この温度をガラス転移温度といいます.
で,恐ろしいことに,このガラス転移温度と結晶の融点は全く別の概念なので,ほとんど相関が有りません.なので,(結晶の)融点以下の温度なのに,通常の意味で流動性のある液体になっている状態というのが普通に存在します.逆に,(結晶の)融点以上の温度なのに,見た目固体になっているという状態も普通に存在します.
Re:もやもやする (スコア:1)
文章を全文ちゃんと読んでいないから変なとこで切っちゃったんだと思います。
句点の先も読めば判るんですけどねぇ。
疑問に思った瞬間に質問し、考えようとしない人の例です。
Re:もやもやする (スコア:1)
要は[元の記事を書いた記者]の[文章力の問題]という事ですね?
※ACさんの表現を真似てみましたが上手い例になりませんでした。
Re:地球に優しい(笑)のだろうか (スコア:1, 参考になる)
広島大の発表記事 [hiroshima-u.ac.jp]読めば、「廃材が高率で再生可能」って書いてあるぞ。他の材料と混ぜたらダメだろうけど。
それよりも、ナノ配向結晶体(Nano Oriented Crystals:NOC)という略称を何とかしてくれ、というネットワーク屋は多いかもしれない。
まぁ、ケブラー [wikipedia.org]やレキサン [sabic-ip.com]みたいに、商品名でも困るんだが。
Re:成型方法は? (スコア:2)
一次情報がぐぐれなかったんで想像ですが、
>研究チームは、溶けた材料を冷やして固める際、上下から瞬時に板でつぶして延ばすと、
>材料の中に微小な結晶がたくさんでき、それが一方向に並んで強く結びつく構造が生じることを発見した。
>彦坂教授は「この方法ならつぶす工程が加わるだけで、町工場でも簡単に製品に使える」と説明する。
ということなので、射出成形時の型内冷却をそこそこでやめ、次の工程で
鍛造プレスしながら再冷却、というところでしょうか。
温度管理のシビアさにもよりますが、一般的な油圧プレス機が流用できたり、不況で遊んでいる
射出成形機で加工できたりする??
型費は2倍になりますが、鍛造型で精度だしなんかができれば、なかなかうれしいかもしれません。
自動車の車体云々の話がとりあげられてますが、むしろ従来エンプラをつかっていた部分で
より強度がだせることによる一層の小型化のほうに影響があるような気がしてきました。
# たとえば、ノートPCの筐体とか...