パスワードを忘れた? アカウント作成
6393 story

幹細胞移植で失われた視力が復活 38

ストーリー by wakatono
光よ甦れ 部門より

oddmake 曰く、 "BBCの記事によると、幼少期の事故により40年間失明状態にあったMike May氏の視力を幹細胞移植により回復させることに成功したという。
「今日と二年以上前との違いは、私が自分が見ているものをうまく推測できるようになったことだ」とMIke May氏は語る。
視力回復は完全ではなく、三次元物体や顔の認識はかなり劣っており、たとえば未知の人物の性別を顔から判断する精度は70%程度だという。
「(二年以上前と)同じなのは、今でも私は推測していることだ」ともMike May氏は語っている。"

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by Anonymous Coward on 2003年08月25日 23時51分 (#385704)
    視神経系統が復活したのかと期待したのに
    再生したのは角膜と角膜外縁部なんですね。 それだったら角膜/強膜の移植が確立されてるから、大ニュースって気はしないな~

    角膜より幹細胞の方が供給量が多いの?
    • by y_tambe (8218) on 2003年08月26日 12時03分 (#385932) ホームページ 日記
      元記事のBBCによると、Nature neuroscience [nature.com]に掲載されたらしいです.ニュースになった日時とabstactから見てAOP(Advance Online Publication)のこの記事(Brief Communication) [nature.com]あたりしかそれらしいのが見当たらないのですが(うちではfull text読めないし)、この記事だとすれば、タイトルは「Long-term deprivation affects visual perception and cortex」なので「幹細胞移植で視力が回復した」というのがポイントだったのではなく「長期の視力障害後に回復した」珍しい事例だというのがポイントなのではないかと思います.
      この珍しい事例を解析して、タイトルにあるように「長期の(視覚)喪失は視覚受容と皮質に影響する」との結果が得られたのでしょう.考えてみれば「使わないんなら影響するのは当たり前じゃない?」というのは尤もなことなのですが、それを証明するとなると難しいことだと思いますが、この研究グループ(Ione Fineら) [salk.edu]のプロジェクトから推測するとfMRIを使った実験をやったのではないかと思います.
      #つってもBrief Communicationだから、そこまでカチっとしてるかは疑問か。

      まぁともかく珍しくて解析する価値があった事例だからNature neuroscienceに載ったのだと思いますね.
      親コメント
      • by Tako P (13922) on 2003年08月26日 19時39分 (#386125)
        原典に当たってきました。
        y_tambe氏の仰るとおり、「長期の(視覚)喪失は視覚受容と皮質に影響する」という話のようです。

        このMM氏、他の視覚回復者と同じように、簡単な形や色に対しては一般のヒトと同じぐらいの認識率を示すのですが、複雑な形、3Dの投影図や人の顔などに対しては認識率が落ちます。 しかし、「動き」に対してはしっかり認識ができるようで、例えば、立方体の投影図を見ても何の形かわからないが、それを画面上で回転させてやると深みを認識して形がわかる、とのこと。 (もひとつ理解できなかったのですが、fMRIの結果もそのようなことが示されています)

        生後30ヶ月以上での単眼の欠損では深刻な弱視を引き起こしてしまい、視機能の回復はほとんど無いらしいのですが、さらに筆者らはこの例から、通常の視機能を得るためには3歳くらいまでの見る、という経験が必要なのではないか、と提案しています。

        MM氏は術後2年間で視力がかなり回復したそうですが、神経が発達したわけでも形への認識が向上したわけでもなく、動きへの認識の向上によってそれが為された、とのことです。
        そこで、
        • 動きへの認識は幼児期において発達するが、その段階で確立されてしまうのではないか
        • 一方、形への認識も幼児期に発達するものの、生きていく中で新しいものや様々な人に出会うことから、認識の仕組みがかなり柔軟に運営されているのではないか
        • そのため長期間の障害の後では複雑な形状への認識は失われたものの、動きに対しては十分認識できるのではないだろうか
          と述べております。

          単純な視力回復の話では無いようでした。

          だから、neuroscienceだったのかしらん。
        親コメント
    • by Anonymous Coward on 2003年08月26日 1時15分 (#385743)
      もしかして医療関係の方ですか?
      割とこういう認識の方多いようですね。
      はっきり言いますけど全然違います。
      組織なり器官なりを外科的に移植するのと細胞を移植して組織なり器官なりを再生、発生の過程を繰り返させることは意味が全然違います。
      いわゆる角膜移植の場合でも移植された組織は新しくつくられる細胞に置き換えられていきますから再生の足場として利用されるだけですが、他人の組織という一種の"異物"を入れないぶん患者の負担も少ないと思います。
      一方今回のケースでは一部の機能が回復していないようですが、発生の過程自体元々わからないことだらけなのでまだまだ課題は多そうです。
      親コメント
      • by Anonymous Powered (12649) on 2003年08月26日 9時49分 (#385846) 日記
        #385704 [srad.jp]さんは、「臨床的な価値」について
        「現行法と比較して、あまり大きな価値を持っているとは思えない」と言っていて、

        #385743 [srad.jp]さんは、「再生医療研究の成果」について
        「いやいやこれはなかなか興味深い」と言っていますね。

        # すみません、単純に臨床と研究の意識ギャップを面白く思ってしまいました。
        # (どっちが正しいというのではなく)
        親コメント
    • 私も、網膜などの再生が可能になったのかなと
      ちょっと期待しました…

      #再生でもシリコンチップ移植でもどっちでもいいから
      #網膜色素変性症の治療方法を確立して欲しいのでID

      親コメント
  • 視力の問題? (スコア:2, 興味深い)

    by Anonymous Coward on 2003年08月25日 23時27分 (#385691)
    人の性別が判断できないというのは、視力の問題というよりは、経験不足によるパターン認識の不完全さの問題なのでは。
    コンピュータで言えば、CCDの性能は問題ないけど、そこから得られる情報を処理するプロセッサの問題なのかな、と。

    この人が何歳なのか、わからないのだけど、もっと時間をかけて脳の学習が進めば、普通の人と変らなくなるのではないのでしょうか。
    • Re:視力の問題? (スコア:5, 参考になる)

      by junnohta (10945) on 2003年08月26日 0時09分 (#385712)
      オリヴァー・サックスの『火星の人類学者』
      (早川文庫NF251, ISBN4-15-050251-X)に、
      「『見えて』いても『見えない』」という、
      3~6歳で失明して50歳で視力が回復した人の
      話が載ってます。

      見えている2次元画像から3次元空間を再構成
      するのが困難のようで、立体を斜めからみると
      形が変わってみえることが理解できないとか、
      猫の頭や顔、足やしっぽ独立ならわかるのに
      全体として猫であることがわからないとか、
      そうしたさまざまな苦労があることがわかります。

      またそういう苦労があることを周囲の人間は
      容易には理解できないし、そのギャップもまた
      苦しさにつながるということのようです。

      この話を含めて7篇の医学ノンフィクション
      エッセイがこの本には収録されていて、
      いずれも示唆に富んだ面白いものです。
      オススメ。
      親コメント
      • >するのが困難のようで、立体を斜めからみると
        >形が変わってみえることが理解できないとか、

         最初から普通に視力がある人なら問題無い、とも限らない。
         頼むから製品が裏返ってる事くらい認識してくれ(;_; >部長

         2D-3D間の認識、再構成能力は「見えない部分を見ようとする努力」が不可欠じゃないかと思います。
         考え方が柔軟な人ならある程度歳行っててもリハビリ次第なように思います。
        --
        凛々しく、あほらしく。
        親コメント
        • by junnohta (10945) on 2003年08月26日 14時32分 (#386003)
          > 2D-3D間の認識、再構成能力は「見えない部分を見ようとする努力」が
          > 不可欠じゃないかと思います。

          ほかにも「風景写真を見てもそれはさまざまな色で
          塗り分けられたパターンとしかとらえることができず、
          立体を2次元化したものだとは想像できない」ことも
          挙げられていました。

          ということは、「見えない部分」がどこにあるかを
          想像するだけでも、すでに経験によって獲得された
          分析能力が多大に必要なのではないかと思います。
          「見ようとする努力」だけで単純にどうにかなるような
          話ではないのかもしれません。
          親コメント
        • by Anonymous Coward
          「彼女の見えない部分を見よう」と努力したら、平手でたたかれますた。
    • 練習ドリル (スコア:3, おもしろおかしい)

      by Anonymous Coward on 2003年08月26日 1時03分 (#385739)
      問1)見分けなさい [neweb.ne.jp]
      親コメント
    • Re:視力の問題? (スコア:3, すばらしい洞察)

      by saitoh (10803) on 2003年08月26日 11時03分 (#385888)
      目の錯覚というか、錯視ですか、のなかには、人間が2次元の画像を 3次元として解釈してしまうことによっておきるものが多々あります。 同氏に錯視図形を見せたらどうなるか興味があります。 全然だまされなかったりして。
      親コメント
    • by Anonymous Coward on 2003年08月25日 23時39分 (#385697)
      たいていの人は、この学習過程を、物心が付かないうちにやってしまうので、どのように学習したのかを自分でもよくわかっていないけど、この人なら、もしかしたら、学習過程をかなり意識することができるかもしれません。

      その経験を、顔認識システムとかに生かすことができるかも。

      親コメント
    • by sillywalk (15002) on 2003年08月26日 6時15分 (#385792) ホームページ 日記
      学生時代、認知心理学の講義で「子供の頃に白内障に近い症状で
      失明したものの、手術によって回復した人がいる。しかし目から
      の情報が脳でうまく処理できないため、例えば探し物をする時な
      目をつぶって探した方がかえって早く見つけられた
      と聞いて感心した覚えがあります。あまり年齢が上がってしまう
      と、回復訓練も大変なのかも知れませんね。
      --
      And now for something completely different...
      親コメント
      • by koba-chan (9833) on 2003年08月26日 11時13分 (#385899) ホームページ 日記
        認知心理学ではないのですが、似た話しの番組を見たことがあります。
        交通事故などで脳の一部に障害が残り、物体識別能力が欠落したとか、目から脳への伝達時間が非常にかかり(秒単位で)、横断歩道を渡ることが出来ない、とか。文字についても漢字などは長い期間をかけて習得するわけですが、覚える以前の問題として図形としての識別ができないそうです。背中に複数の電極埋めてテレビカメラの映像を脳に送るというのも取り上げてましたね。

        移植により目からの信号が物理的に接続されても、脳の経験値が少ないがゆえに結果を精度としてしか表現できないのでしょうけど、脳の働きっていうのは大したものだなー、と感心します。

        # スーパーマンの俳優が復帰するのも近いかもしれませんね。
        親コメント
      • by Led (7726) on 2003年08月26日 21時04分 (#386151) 日記
        生まれたばかりの猿の子供に目隠しをしたまま何年か育てて、
        その後目隠しを外しても目が見えるようにはならなかったと言う実験の話を何かの番組でやってました。
        健康な細胞があっても適切な時期に学習しないとダメだという結論でした。

        今回は幼少期に事故にあうまでは学習する期間があったということが
        視力回復に役立っているかも知れませんね。
        親コメント
    • Re:視力の問題? (スコア:1, すばらしい洞察)

      by Anonymous Coward on 2003年08月25日 23時39分 (#385698)
      > もっと時間をかけて脳の学習が進めば、普通の人と変らなくなるのではないのでしょうか。

      脳の年齢や周囲の無理解を考慮に入れると、気の毒だが、そう簡単には行きますまい。
      親コメント
    • 視覚の発達/習得過程の研究に使われる予感。。。
      過程のすべてを,大人の明確な言語で表現してくれるはずだから,これ以上の研究材料はないでしょう。

      #ちょっと不謹慎だけどID
      親コメント
      • by Anonymous Coward
        そういう研究は他ですでに行われてるみたいですよ。
        昔テレビで見ました。
    • by wanwan (45) on 2003年08月26日 0時27分 (#385723)
      素人的に言えば、日本人から見ると外人の顔はあまり判別できなかったり、逆もしかりって事ですかね?
      友人に外人の姉ちゃんがいるんですが、その人がいうには今だに(もう3年ぐらい日本にいますが)日本人の顔はなかなか覚えられないそうです。

      うぅ~~ん、人間の脳ってすごいんだなぁ~っと素直に感心しました。

      親コメント
      • by Anonymous Coward
        日本人が中東人を区別できないように、欧米人も日本人、韓国人、中国人を区別できないそうです。
    • by Anonymous Coward
      私もそうだと思います。
      これから多くの人の顔を見てサンプルを増やしていけば精度は上がるでしょう。
  • 異性の見た目を… (スコア:2, おもしろおかしい)

    by GSone (8994) on 2003年08月26日 1時25分 (#385748) 日記
    >たとえば未知の人物の性別を顔から判断する精度は70%程度だという。  
     
    その精度だと、たとえば「イイ男かどうか」とか「色っぽい女かどうか」などを
    判断する精度はかなり落ちるのでしょう。
    ですから、恋愛の際は、見た目よりも精神的な部分を重視する可能性が高いです。
     
    Mike May氏を密かに好きだったけど、自分の見た目に自信がなかった人は、チャンスです。
    • Mike May 氏曰く、
      "It was quite extraordinary to see my wife for the first time"
      (初めて私の妻を見ることは全く異常でした。)

      つまり、「うわーマジかよこんなブスだったのか!」ってことか。

      # そういう意味ではない
  • 日本では缶コーヒー「ファイヤ」の初期のCM曲で有名(?)な
    全盲のアーティスト スティービーワンダーさんも移植医療だか機械の埋め込みだかで
    将来的に視力回復を目指したいとおしゃっておりました。

    彼ほどのスーパーアーティスト視力回復の喜びを表した曲が出来たら
    どんなに素敵な曲になる事でしょう、かなり楽しみな気がします。

    (もしかしたら青島都知事に中止された「都市博」のテーマの方が有名?^^;
  • 医学用語ムズイ (スコア:1, 参考になる)

    by Anonymous Coward on 2003年08月25日 23時49分 (#385703)
    ちゃっちい辞書じゃあ載ってないし。とりあえず、角膜(cornea)、 輪部(limbus) 、
    強膜(sclera)で、この図 [une.edu]とかあわせれば、ちっとはイメージわいた。

    正常角膜上皮供給のために角膜輪部幹細胞を移植、という
    手術は、決して超特殊、というわけではないようなんですが、
    彼はなぜ 40 年間盲目だったのでしょうか? 精神的な問題
    なのでしょうか? まったく縁の無い者なので、ごく素朴な
    疑問です。

    # 手術の写真は、生々しくて、ちょとこわいです。ていうか、いたそう
    • by Tako P (13922) on 2003年08月26日 17時22分 (#386074)
      limbal epitheliumってのがどこか判らないのですが、
      このダメージのために角膜移植をうまく行うことができなかったそうです。
      子供のときに一度行ったそうですが、そのときは失敗で、何かを見たような記憶が無い、と本人談。
      それで今回の移植となったようです。
      親コメント
  • by Anonymous Coward on 2003年08月26日 0時22分 (#385721)
    この方面の研究の進歩は早すぎて全然ついていけてません。
    頭固くなってきてるしもうダメポ。
    角膜って水晶体に誘導された表皮細胞が由来ですよね?
    ここ [kyoto-np.co.jp]を見ると口の粘膜からとった細胞でも角膜になるみたいですね。
    大学出てからだいぶ経つけどあの頃は皮膚みたいな単純な組織は再生するけど、目みたいな複雑な器官の組織は再生しないってのが"定説"だったような。
    やっぱり一部の機能は再生しないみたいだけど、その原因が解明されればたとえば立体視の仕組みとかが解明されるかも知れませんね。
    ナニげにすごいかも!21世紀はこうでなくっちゃ!
typodupeerror

皆さんもソースを読むときに、行と行の間を読むような気持ちで見てほしい -- あるハッカー

読み込み中...