パスワードを忘れた? アカウント作成
15350 story

米最高裁が特許の進歩性について新判断 14

ストーリー by mhatta
大変に詳細なタレコミありがとうございます 部門より

oddmake 曰く

CNet Japanの記事より。特許とされた技術が自明なものであるかどうかに関して、米最高裁が新しい判断を示したことが関係者の注目を集めている。
これまで特許をめぐる判決では、1982年に連邦巡回控訴裁判所が下した判決により、教示・示唆・動機付け(teaching, suggestion, or motivation)が事前に存在していたことの証明が必要とされていた。これに対し、文書化・出版されてはいたが学術的な議論の対象にならなかった事象について全く考慮されていないという批判があった。
今回、自動車アクセルの機構に関するKSR International対Teleflexの訴訟において下された最高裁の判決は、この証明基準を緩めるものであり、これまで特許保有者に有利であった米国特許訴訟の流れを変えるものとして注目されている(Anthony Kennedy裁判官執筆の多数意見(PDF))。

(つづく…)
アクセルは自動車の速度を制御するための装置であるが、その位置は通常固定であるため、ドライバーは座席を前後させて自分の足とアクセルペダルの位置を調節する必要がある。この不便さを解消するためのいくつかの技術が開発され、これまでに特許となっていた。
そうした特許のひとつである神埼高級工機製作所の米国特許6,151,976号:Axle driving apparatusを使用する権利を得たKSRが、General Motorsのトラックのアクセル供給者として選ばれた際に、センサーを組み込んだことが事の発端となっている。Teleflex社はEngelgauの米国特許6,237,565号:Adjustable pedal assembly with electronic throttle controlの独占的使用権を得ており、GMへの供給部品について使用したアクセルが請求項4について特許侵害だとして訴えを起こしたのである。
地方裁判所は、富士機工のAsanoの米国特許5,010,782号: Position adjustable pedal assemblyはセンサーおよびその計測値をスロットルを制御するコンピュータに伝達することを除き、請求項4の全てを含んでおり、米国特許5,385,068号: Electronic accelerator pedal assembly with pedal force sensorやシボレーのセンサーは残りの部分をカバーしていると判断していた。つまり、自動車工業は不可避的に位置可変ペダルとセンサーの組み合わせを試みる状態になっており、Rixxonの米国特許5,819,593号: Electronic adjustable pedal assemblyやSmithの米国特許5,063,811号: Accelerator pedal assemblyとAsanoの特許技術とを組み合わせれば、Engelgau特許は自明な技術だとしていた。
これに対して連邦巡回控訴裁判所はそのような判断は高度な職人芸を持つ技術者には可能であるが、特許法が想定しているような平均的技術者には不可能であるとしており、最高裁の判決がどうなるか注目されていた。
この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by hishakuan (32621) on 2007年05月06日 8時46分 (#1153033) 日記
    ある発明から教示・示唆・動機付けを受けたと証明された発明は特許の審査が通らない。
    新たな発明なんてものは既存の発明の上に成り立つものなのだが、
    特許の無効を主張する側(既存の発明の特許権者)に厳格な証明責任を課していた結果、
    有象無象の特許権が成立していた。
    そこで証明の基準を緩やかにすることで一定の特許権の成立を阻止しようとしている。
    という理解(巡回裁判所の判断は否定された)でよいのかな?
    これは特許権を強める、特許権者の保護(利益)を図るという風にも働きますよね。
    例えばMSが特許を持つ発明を、今回証明基準が引き下げられた範囲で多少改良した発明があっても、
    そこに特許権は成立せず、MSの特許権が及ぶこという事例も考えられる。
    >これまで特許保有者に有利であった米国特許訴訟の流れを変えるものとして注目されている
    とは一概に言えない気がするが。

    • Re:よくわからん (スコア:3, 参考になる)

      by firewheel (31280) on 2007年05月06日 10時25分 (#1153064)
      「この自明性テストを満たすには、実際には書面による証拠が必要なことから、
      自明だとの主張のあった特許でも、これを覆すことは困難になり、しかも、
      この基準のおかげで、米特許商標庁からの特許の取得は容易になった、との
      批判が起きていた。」

      その業界の人が「そんなの常識じゃん」と思ってるような技術や手法と言う
      ものは、わざわざ文書化しません。それがある日突然、特許として成立して
      しまった場合に、今まではそれを覆すことが極めて困難だった。

      それが今度の判決で覆されたと言うことだと思います。
      親コメント
      • by dekaino (7870) on 2007年05月06日 11時39分 (#1153092) ホームページ
        特許とは、人類共有の技術データベースを構築することを目的とした制度で、手段として、新しい技術を公開した者に比較的短期間の独占実施権を付与します。当然、崇高な目的に反して技術を公開しない者の権益はまったく保護しません。

        その業界の人が「そんなの常識じゃん」と思ってるような技術や手法と言うものは、わざわざ文書化しません。それがある日突然、特許として成立してしまった場合に、今まではそれを覆すことが極めて困難だった。

        つまり、わざわざ文書化しないなんてぬかしている輩は地獄に落ちろという制度なわけで、そのような輩がある日突然困ったことになるのは自業自得です。
        世間に発表されたことのない技術を使っている/将来使う予定がある場合は、特許出願するか、○○技報みたいな技術雑誌を出版して、その技術を公知にします。このような手段である日突然他者が権利化してしまうのを防ぐことができます。
        と、わざわざ私が言わなくてもその手の業界の人にとっては「そんなの常識じゃん」ですから、すぐ思いつくような技術でも未公開ならばわざわざ文書化しまくるものです。
        それをサボる者が不利益をこうむるのはある意味必然
        親コメント
        • by Anonymous Coward on 2007年05月06日 13時23分 (#1153133)
          > つまり、わざわざ文書化しないなんてぬかしている輩は地獄に落ちろという制度なわけで、そのような輩がある日突然困ったことになるのは自業自得です。

          ブランコの乗り方特許を思い出しました。
          親コメント
          • Re:よくわからん (スコア:1, すばらしい洞察)

            by Anonymous Coward on 2007年05月06日 15時45分 (#1153198)
            「名刺サイズCD特許」があったとして

            「名刺サイズDVD特許」「名刺サイズBlueRay特許」「星形CD特許」
            「5角形DVD特許」「6角形CD特許」「楕円CD特許」....
            の組み合わせを全部公式書類として提出したり弁護士を通して
            法的に証明できる形で保存しておけというのがどれだけ現実的で
            ないことか。
            #ソフトウエアの場合はさらにこれが難しくなる。

            少なくともこれにより現場の負担は格段に増えます。特許は本来は
            現場の負担を減らすための制度なので、これでは本末転倒です。
            親コメント
        • by Anonymous Coward
          > すぐ思いつくような技術でも未公開ならばわざわざ文書化しまくる

          デスマーチ真っ只中の技術屋にそんなヒマはありませんが何か。

          > それをサボる者が不利益をこうむるのはある意味必然

          現行の運用ではそうなっちゃうから、それを改善しようって話ですよね。
          • by Anonymous Coward
            > デスマーチ真っ只中の技術屋にそんなヒマはありませんが何か。

            何も。
            デスマ起こすような愚か者が損するのも、すばらしい事に自由ですから。
  • よくわかっている人しかその技術を連想できないなら新規性がある、ということですね?
    いいような悪いような。
    • >公知かもしれないと思ってもとりあえず特許化したほうがいいのかな
      特許を取るつもりが無くても、とりあえず特許明細書は提出しておいた
      方が安全ということはありますよ。

      そういう公式書類があれば、最悪でもその時期に自分がその技術に
      ついて考えていたという事実が残りますから。新規制なしとして、
      同種の特許が他の人に取られる危険だけは防げます。
      親コメント
      • by Anonymous Coward on 2007年05月06日 15時38分 (#1153192)
        そうやって、実際に物を世に出すつもりも無い
        「5分で思いつきました。でも考えただけ」
        系のゴミ特許が世を埋め尽くしている。

        ほかの誰かが実際に長年かけてアイディアを使い物になるまでに洗練させて世に出そうとすると
        「あ、それ僕が前に考えてました。特許料よろしくね」
        で、世の中の進歩を邪魔することしかしていない。

        世の中の技術的進歩を止めてでも、自分の懐に小遣いが入るほうが大事というような技術者は、
        豆腐の角に頭ぶつけて氏ね。
        親コメント
  • by Anonymous Coward on 2007年05月06日 8時09分 (#1153017)
    KSR Inernational > KSR International

    #正規表現が書けないのでAC
  • by Anonymous Coward on 2007年05月06日 23時09分 (#1153347)
    高度に発達した特許論争は後出しじゃんけんと見分けがつかない.
typodupeerror

計算機科学者とは、壊れていないものを修理する人々のことである

読み込み中...