別ツリーのコメントに書きましたが、引用したパブリックコメントのポイントは、以下の2点と理解しています。

• 用例が少ない
• 用例を使っている文章が、現在国語の教材に使われていない類のものである

蛇足とは思いますが、一応「教材」について書いておきます。学校の国語の授業は、なんらかの文章を読みながら、学習するという構成になっています。複数の文章(==教材)を読んで学習した結果、覚える必要がある字や学習内容がカバーされるように、教材を選択するわけですね。ここで教材として何を使ってもいいわけではない、たとえばポルノはまずいだろうというのは理解してもらえると思います。じゃ、どういう制約があるかというと、使える教材に関しては、中学校学習指導要領 [mext.go.jp]などで方針が規定されています。その観点から、今回問題になっている字の一つの「艶」を考えてみると、「妖艶」という言葉はエロではないし、芸能関係の批評文ではある程度使用されているだろうと思うのですが、内容を理解するためにその文章で批評されている対象に関する知識が必要とか、対象の読者は大人だとかいう条件があって、「生徒の発達段階に即した適切」なものとは言い難く、義務教育での教材としては使いにくいというのはありそうです。

「カリキュラムを組む上で課題となる字は他には存在しないのか」という質問の件ですが、常用漢字表に選ばれるような字は、用例・使用頻度が多いというのが一つの基準ですから、他に課題になるようなものはないと思います(今回の変更で議論になっているのは、まぜ書きを回避するため用例が少ないのに追加された字だと思っているのですが、これについては確認できていません)。

常用漢字表に選ばれていないような、用例と使用頻度が少ない字でそのような性質を持つものとしては、たとえば、「諜」なんてのはどうでしょう。スパイ物とか忍者物での使用頻度は結構高いと思いますが、そういう作品を国語の授業に使えるかというと、ちょっと怪しそうです。まあ、いろいろある教科書の中に一つそういうのを選択しているのがあってもいいかもしれませんが、義務教育で基本的に読めるようにしろということになって、全教科書で選択を考えるようなものかというと、そりゃちょっと違うだろといいたくなります。

あとは「悍しい（おぞましい）」とか。ラブクラフトの翻訳物でよく使われる字で、他のところではあまり見かけないものです。翻訳物でホラーとなると、国語の授業で使うのは難しいのではないですかね。