[AB16-1] PACEMAKER INTERFERENCE WITH IPOD MP3 PLAYERS Jay P Thaker, Mehul B Patel, MD, Haiyan Li, MD, Sujeeth R Punnam, MD, Krit Jongnarangsin, MD. Michigan State University, Lansing, MI; University of Michigan, Ann Arbor, MI
iPodもFCC Class B は取っていると思うのだけれど、こういった物は定常状態で不要輻射を測定するので、電源ON/OFFの時は測定しない。オーディオアンプも種類によっては電源ONでポンとスピーカーから音が出るとか、モーターの突入電流とか、他の電気製品もそう。過渡状態は、定常状態とは違うという事。電源ONの過渡状態では、規格を超える電磁波が出る。これは元々、TVやラジオに視聴に妨害を与える電気製品を規制しようという発想から来ているので、「一瞬だけ規格を越えるのは我慢しろ」という事。
by
Anonymous Coward
on 2007年05月15日 1時29分
(#1157190)
HR2007サイトの左から「Abstracts」、その後「To View All Heart Rhythm 2007 Abstracts, click here」をクリック、その後登録、という流れです。一部引用すると
pacemaker inhibition (PI) ... was defined as a failure to pace when pacing was expected. // Results: PI in 1.2% of patients. OS (over sensing) and TI (telemetry interference) were persistent (>50% of application time) while PI was transient. // None of the patients reported any symptoms.
報告の原文を読んでみました (スコア:4, 参考になる)
発表されたのはHeart Rhythm Society主催のHeart Rhythm 2007 [heartrhythm2007.org]という学会。
発表タイトルは
[AB16-1] PACEMAKER INTERFERENCE WITH IPOD MP3 PLAYERS
Jay P Thaker, Mehul B Patel, MD, Haiyan Li, MD, Sujeeth R Punnam, MD, Krit Jongnarangsin, MD. Michigan State University, Lansing, MI; University of Michigan, Ann Arbor, MI
登録しないと概要読めなかったので、分かりやすく要約してここに書きます(興味ある人は本名登録して原文どうぞ)。
*平均年齢は76.1歳(ロイター記事と違うけど理由は知らない)
*使用したのは第3世代・nano・Photo・Videoの4機種
*1人がiPodを胸の上でon/offし、機種もタイミングも知らされていない別の技術者が、心電図やペースメーカーの動作状態を監視した。結果は再現性があるもののみをとった。
*29%の患者では、人が見てペースメーカーの検出する波形にノイズがのったが動作には何ら影響なかった。20%の被験者でノイズのため脈拍の検出の間違いがあったがペーシング自体のトラブルはなかった。1%の患者で一時的に期待されるタイミングでのペーシングが行われなかったがすぐに復活した。
*何らかの症状を訴えた人はいなかった。
*「第3世代」と「Photo」で悪影響が強かった。
とりあえず一部のマスコミに出ている「ペースメーカーが停止した」というのは、「騒音のせいで声がよく聞き取れなかった」を「騒音のせいで耳が壊れた」と書くようなものですので、明らかに誤訳と思われます。まあ本当に停止するわけないのですが。
他の方も書いていますがこの程度なら想定範囲内のノイズであり(携帯電話でこの距離ならかなり「出ます」が生命に危害が及んだ報告はない)、ひとまずは「故意にiPodを胸に近づけてON/OFF繰り返すようなことはやめましょうね」でいいと思います。
現時点でペースメーカー使用者は全自動麻雀卓やIH調理器 [medtronic.co.jp]に近づかないことになっていますが、携帯電話は制限つきで使えますし、iPodなどの一般的な電子回路は問題なく使えることになっています。(そりゃiPodダメならDSも自動車もノートPCもダメだわ)
Re:報告の原文を読んでみました (スコア:3, 興味深い)
iPodもFCC Class B は取っていると思うのだけれど、こういった物は定常状態で不要輻射を測定するので、電源ON/OFFの時は測定しない。オーディオアンプも種類によっては電源ONでポンとスピーカーから音が出るとか、モーターの突入電流とか、他の電気製品もそう。過渡状態は、定常状態とは違うという事。電源ONの過渡状態では、規格を超える電磁波が出る。これは元々、TVやラジオに視聴に妨害を与える電気製品を規制しようという発想から来ているので、「一瞬だけ規格を越えるのは我慢しろ」という事。
今回はiPodでテストしているが、これは単に体に密着して使う事が多い携帯型の電気製品の代表として入手しやすかっただけの話であり、他社の製品でも、音楽再生機でなくても、電源ON/OFFの過渡状態では規格を超える電磁波が一瞬出るというのは「むしろ普通」の話だろう。だから、「iPodが悪いんだぁ~!」という見方しかできないメディアは、全然判っていないと判断できる。
心臓の筋電流という、家電製品とは比べ物にならないほど微弱な電流を検出して「あ、脈を打った」と判断する性質上、心臓ペースメーカーは、確かに妨害電波で誤動作し易く、逆にそうならないように対策してあるのだが…マスコミもスラド読者も大半は理解していないと思うが、ここで言う誤動作というのは、偽抑制の事だろう。 (脈を打っていないのに脈があったと誤検地し、心臓が自発的に脈を打ったのだからペースメーカーで電気信号を送ってペースを整える事は控えよう、という動作をする事)
心臓ペースメーカーの近傍で携帯型の電気製品をON/OFFする際に過渡的に出る、不要輻射の規格を超える電波では影響を受ける場合があったというのが、今回の実験結果。確かに、これは盲点と言えば盲点。さらに調査する価値があるのは事実。
結論:心臓ペースメーカー利用者は、もう少し詳しい結果が出るまで、心配であれば、電気製品をON/OFFする際には、心臓ペースメーカーの近傍から離して操作すればいい。例えば胸のポケットに入れたままON/OFF操作するのではなく、手で持ってON/OFF操作する、などすれば。逆に「iPod じゃないから関係ない」「MP3 プレーヤーじゃないから関係ない」というのは間違い。電源をON/OFFする際に過渡的に出る不要輻射に対する誤動作に関しては、まだあまり詳しく調査されておらず、さらに調査する必要があるという事。
電界強度測定用のスペアナやアンテナを持っている人は(苦笑)ピーク検地モードで手近な電気製品をON/OFFしてみたら良く判るよ。
Re:報告の原文を読んでみました (スコア:3, すばらしい洞察)
pacemaker inhibition (PI) ... was defined as a failure to pace when pacing was expected. // Results: PI in 1.2% of patients. OS (over sensing) and TI (telemetry interference) were persistent (>50% of application time) while PI was transient. // None of the patients reported any symptoms.
ネットで5分で手に入る知識さえあれば、これが「ペースメーカーの動作停止」じゃないことくらい一目瞭然なのですが。
このような専門家向けの学会で発表したパイロット研究(学生主体なのはさて置き)を当日中にニュースに「出すな」とは言いませんが、それで「動作停止」とか大嘘を、知識も配慮もなく書き散らすのは信じがたい。発表内容の8割方は理解できない記者が「え、iPod? 面白いネタになるぞ」程度で中途半端な報道したのでしょうか。
こんな誤謬で何百万人を不安にさせるんじゃ、医師にマスコミが求める人道配慮や慎重さの数パーセントくらいしかマスコミ自身は持ってないのですか、とも言いたくなる。
学会発表について記事書くなら、最低限その記事の意味と影響とインパクトが専門的に正しく判断できて、かつ一般人に向けて正しく噛み砕いて説明できる人間がやるべきかと思います。
なおペースメーカーメーカー(謎日本語)は頻繁な電源操作は危険があると以前から警告しています [pacemaker-navi.jp]ので、誰も気づかなかった新知見というほどのことではないようなのですが、根拠となる論文とかまでは知りません。