yasuoka (21275) の日記

2005 年 08 月 02 日
午後 02:17

VHS vs ベータマックス vs アダルトビデオ

会計専門職大学院生の生態にもコメントしたのだけど、Chris Kohlerの『PSP向けアダルトビデオ、日本で発売に』(Wired News, 2005年6月8日)の以下の文章がちょっと気になったので調べてみた。

家庭用ビデオレコーダーが次の目玉商品としてもてはやされていた時代、勝利を収めたのは画質では上回っていたソニーの『ベータマックス』ではなく、VHS規格だった。なぜだろう? それは、ポルノ映画業界がVHS側についたからだ。ソニーがポルノ業者にライセンスを与えようとしなかったとする説もあるが、ベータマックス発売当初の最大1時間という録画時間が、どのようなジャンルであれ、長編映画を収録するには短すぎたというほうがより納得のいく説明だ。

Kohlerのこの説は、少なくとも日本市場に関しては正しくない。『ポルノビデオ総カタログ』(壱番館書房, 1982年)など当時の日本のアダルトビデオカタログを見る限り、主流は30分ものであり、VHSもベータマックス(当時の主流はβII)も同じように販売されていた。実際、愛染恭子の「本番生撮りシリーズ」(日本ビデオ映像)にしろ、「女子大生素人生撮シリーズ」(宇宙企画)にしろ、VHSもベータマックスも市販されていた。にっかつビデオフィルムズに至っては、「ロマンポルノシリーズ」をあえて30分の短縮版にしてビデオ化し、売れセンに限ってオリジナル版でビデオ化(たとえば美保純の『濡れて騎る』は67分)していたのである。裏ビデオ市場については確かに情報が少ないのだが、たとえば当時の『オレンジ通信』(東京三世社)を読む限り、VHSもベータマックスもいずれも流通しているように思われる。特に『オレンジ通信』の「読者交換室」では、ベータマックスの方が多いようにすら見える。

私の調べた限り、昭和50年代の日本のアダルトビデオ市場では、VHSとベータマックスのどちらにも優位性は見当たらない。そもそも「アダルトビデオがVHSでだけ流通していた」と考えること自体、非常に奇異な感じを受ける。こういう説を唱える人達がいったい何を典拠にしているのか、ぜひ知りたいものだ。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。

「毎々お世話になっております。仕様書を頂きたく。」「拝承」 -- ある会社の日常

処理中...