新しい原人の論文が発表され,Natureのサイトではお祭り騒ぎになっている.
日本語でもアサヒ・コムに割と適切な解説があったので発見の要旨まではここでは触れない.
ただしいくつかの間違いは指摘しておくと
オーストラリアとインドネシアの研究チームが同島の洞穴から、女性と見られる1人分のほぼ全身の骨格や、別個体のあごの骨などを発掘した。
というが,別個体で見つかったのは小臼歯であってあごの骨ではない.またそれはより古い地層からのものだ.
歯の形や、頭骨の形態などが原人と共通なため、原人に近い新種とされた。
これも私が読む限りは歯や顔の形はむしろホモ・サピエンスに近く,骨盤(の寛骨)や下あご(chin)のないあごの骨,突き出た目の上の骨などが原始的な形態だったようだ.
しかし,そもそもホモ・エレクトスはジャワまでは行っていてもそれ以上は移動していないと思われていた.
ではどうしてこの地域で発掘が行われるようになったかと言うと,6年前に80年前の石器が発見されたからだという.「そんなばかな」と行って発掘を行ったら,80万年前どころかたった3万8,000年から1万8,000年前の骨をみつけたということらしい.
高温多湿な環境でよく見つかったと思ったが,保存状態はやはりあまりよくなく,化石化していない「マッシュポテトのよう」な骨で,危うく発見を逃してしまうところだったようだ.
それだけにDNAの抽出は(今のところ)できず,ホモ・エレクトスの子孫かどうかも他のホモ属が見つかっていないからというだけの推論の段階だ.
化石の形態からもこの種が何歳くらいの個体だったか,どの系統に属するのかといったことが更に明らかになって行くと思うが,教科書すらも書き換えられることになりそうだ.
目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻ではない -- Eric Raymond
お祭りですね (スコア:1)
この島は古い習慣が残っているので、社会学のフィールドワークの場になっていたりするのだそうですが、「Who discovered the Americas ? 9/6 。 [mypress.jp]」で、アボリジニの先祖達が船を使ってアメリカに辿り着いたのが1万2000年前だ、と主張されていましたから、このヒト属が滅んだのは、ホモ・サピエンスが船を使ってこの島にやって来たからだという事も有りうるのだな、と思うと不思議な気がします。
朝日も記事が出たのが早かったですが、河北新報 [kahoku.co.jp]の掲載がより早く、短いですが要旨の選択が適切なように思えました。朝日もご指摘のような点は有りますけれど、「割と適切」の方を取って良いかと思います。そういう記事が増えると良いですよね。
河北は東北大学が地元なので、時々とても詳しく判りやすい科学記事が有るのですが、なにしろ弱小地方紙なので … つぶれないで欲しい。 Web Newsの流れがこれを変えてくれると良いなと思っています。
Re:お祭りですね (スコア:1)
アフリカを出たホモ属でホモ・サピエンス以外が絶滅してしまっているのが本当に惜しい,というか,アフリカか南米のどこかにいてくれないかと密かに思っているのですが(水スペの出番?笑),今回のサンプルでは無理でもいつかホモ属のDNAカタログが揃って系統樹が完成されたらと期待しています.
それから,河北新報はつぶれることはないと思います.弱小ではありますが.
宮城県は公共セクターが大きくて(宮城スタジアム・・・)軒並み河北新報を購読しているということもありますが,地元の支持があるようでホテルや旅館でも何も指定しないと朝に配られるのは河北新報ですしね.
コンビニやキオスクでも売られていますが,産経や毎日,日経よりも入荷数が多かったと記憶しています(販売数まではちょっと).
kaho