kaho (2741)の日記

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生物磁石の正体

kaho による 2004年11月29日 19時30分 の日記 (#266749)

Nature Web Newsに磁界の中でよく育つバクテリアという話と伝書バトが磁界を感じるという話が.

これまで渡り鳥などが磁力を感じる能力があることは知られていたが,どのような器官で実現しているかは分からなかった.
前者の方はそれはラジカルの反応が磁場に影響を受けるからだといい,後者はくちばしにある鉄の結晶だという.酸化鉄が磁石になることはよく知られているが,ラジカル反応も(その極性ゆえに)磁場の影響を受けることが知られている.

前者の実験では光合成で起きる活性酸素を除去するカロテノイド欠損株をつくり,地磁気の400倍程度の磁場がある環境とない環境で比較したところ,磁場がある方が活性酸素の量が半分だったということだ.
活性酸素は光合成の過程でかならず起きるが,それを効率的に除去しないとDNAにダメージが起こってしまう.そのためこの実験を行ったHore氏らは磁場がある方が増殖しやすいとしている.
この実験は人工的にある遺伝子を欠損させた株でのものではあるが,直接磁場が生物の増殖に関与していることを示す初めての例だという.
しかし元論文を読むことができないのだが,このニュースを見る限り活性酸素の量が減ったことは光合成が減ったことになっているのではないかとか,バクテリアの寿命の短さから考えてこの実験の活性酸素量の差がDNAに変異を引き起こさせて増殖率に差をもたらすほどのものなのか疑問だ.

鳩の方はもう少し分かりやすい話だ.
くちばしに磁石が仕込まれているのではないかということは以前から示唆されていたのだそうだが,問題はそれをまだ顕微鏡レベルで見た人がいないということと,それを感知するシステムが存在しないことだ.
Mora氏らはコイルを巻いたトンネルの中に鳩を入れて,特定の磁場の方を向くように訓練した鳩を使って実験を行った.鳩はすぐに学習したのだが,上のくちばしを麻酔したり磁石をおいたりするとその能力が失われるという結果になったそうだ.
これだけだとなんだか高校生の実験のような感じだが,嗅覚神経を切断してもその能力は失われなかった一方で三叉神経を遮断すると磁場を感じられなくなるので,くちばしを感覚器として三叉神経を通じて磁場を感じるのだろうというのが結論だ.磁石となる鉄の結晶が見られないことは問題とは考えておらず,血液に含まれる鉄分など顕微鏡で見えないレベルの鉄でいいだろうという考えのようだ.
こちらは実証的にはなるほどという気がするが,分子的なメカニズムが結局謎のままなのがむずがゆい.
また先のHore氏は鳩の磁場感知システムもラジカル反応だと言いたいようだった.

正直どちらの研究もその後の進展を待たないといけない部分はあるが,分子生物学とかバイオインフォとか殺伐とした世界に比べるとのどかだなあ,という気がしてしまうのが・・・

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ハッカーとクラッカーの違い。大してないと思います -- あるアレゲ

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