von_yosukeyan (3718) の日記

2003 年 10 月 23 日
午後 07:17

総裁の守秘義務

NTT

一般的には公団役員は守秘義務がないが、国家公務員は守秘義務の解除の仕組みがなく、公務員時代に知ったことは退職後も規制が及ぶ(国交省事務次官)

ん~ なんだかなぁ バーチャルネット小役人氏の見解を聞きたいところだが…。

特殊法人は確かに国家公務員ではないが、一般には特殊法人職員はみなし公務員として公務員たる義務を課せられると解するのが一般的だ
この点につき、日本道路公団法第18条は、「役員及び職員は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」とはっきり明記している。総裁は8条の規定により役員であるから、総裁自身もみなし公務員であると言える。しかし、この規定自体をもってただちに国家公務員法第109条12号違反となり、1年以下の懲役または3万円以下の罰金を科すことは可能か、というとちと微妙だ

一方で、公務員の守秘義務規定についてだが、国家公務員の場合には国家公務員法第100条第1項が「職員は、職務上知りえることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」とし、この点に関しては確かに退職後も永続する。ただし、これは総裁が建設省事務次官を退官するまでに「業務上知りえることのできた秘密」に限定されるわけで、公団時代はどうなんだといわれると刑事上の責任はないのではないか、と思う

この辺の特殊法人役職員の義務について法律上曖昧な点が多い気がするんだけど、例えば日本電信電話株式会社法第19条3項は「会社及び地域会社の取締役、監査役又は職員であつた者が、その在職中に請託を受けて、職務上不正の行為をしたこと又は相当の行為をしなかつたことに関して、賄賂を収受し、要求し、又は約束したとき」ではないと情報漏洩等に対する罰則は適用できない。日本政策投資銀行法19条の規定も、日本道路公団法18条の規定と全く同じだ

ただ、個人的には日本道路公団法施行規則第9条が「勅令及び政令以外の命令であつて国土交通省令で定めるものについては、国土交通省令で定めるところにより、公団を国の行政機関とみなして、これらの命令を準用する」としているのに、守秘義務は課されないというのは少し問題があると思う。まぁ道路公団に限らずなんだけど

追記
もう一つの論点として、総裁のいわゆるイニシャル暴露が、国家公務員法100条1項の公務上知りえた秘密に該当するかという問題である
この点につき、最高裁昭和53年5月31日判決(最高裁刑事判例集32-3-457)、いわゆる外務省電文漏洩事件最高裁判決は、「国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密とは、非公知の事実であつて実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいい(最高裁昭和四八年(あ)第二七一六号同五二年一二月一九日第二小法廷決定)、その判定は司法判断に服するものである」とし、実質秘説を支持する
しかし、今回の場合には違法秘密に内容によっては違法秘密に該当する可能性が高く、秘密として保護に値するかどうかは微妙なところだ。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。

計算機科学者とは、壊れていないものを修理する人々のことである

処理中...