von_yosukeyan (3718)の日記

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郵貯民営化

von_yosukeyan による 2004年03月28日 19時59分 の日記 (#206820)

どうもこの話題は良くないのかどうか知らないが、漏れのミスですでに長文が2回も消えている。というわけで、簡潔に郵貯民営化の問題点を指摘してみる

郵貯民営化を巡る主な問題には次のようなものがある。第一に、郵貯自身が保有する国債などの公的債務の問題だ。これは、簡保をあわせると国債の発行残高の四分の一に相当する130兆円ほどになるが、簡保もあわせて350兆円ほどになる保有資産のほとんどが財投債や、機関債といった公的債務であることには代わりがない

この問題は郵貯の民営化の問題というよりは、むしろ政府の公的債務の管理問題であって郵貯の民営化問題とは基本的に分けて議論した方が好ましく思える。まぁとりあえず、民営化の郵貯の経営問題を単独で考える上では、公的債務の管理問題を扱うには議論を複雑化させてしまう危険があるので、とりあえず置いておく

第二に、民営化の形態である。これは現在、特殊法人の一種である公社という形から、政府の関与をある程度認め、根拠法として特別の法律を制定する特殊会社とするのか、それとも一般の金融機関と同じように銀行免許をとった株式会社とするのかという問題に端的に表現できる。現実的には、一般の銀行と同様な形態に単純民営化することはほぼ不可能で、特別の根拠法による制御が必要であることは変わりがない。要するに、問題は政府は新会社にどの程度関与すべきなのか、あるいは関与できるようにすべきかというものである

第三に、どのように分割するかと言う問題だ。郵政三事業をそのまま民営化した場合に、独占的な官製財閥が誕生することになるし、企業統治の上でも制御不能となるので何らかの形でこれを分割しなければならない。その場合に、郵便・郵貯・簡保の三事業を垂直的に分割するのか、それとも三事業を一体化した上で地域分割するのか。それとも三事業を垂直的に分割した上で地域分割するのか、という方式論が出てくるだろう

第四に、ビジネスモデルの問題である。というのは、報道の通り政府は郵貯事業と簡保事業に対して、今後政府保証を行わない旨を明らかにしている。となると、暗黙の政府保証が存在していたこれらの事業は、一般の金融機関と同じように支払い余力や、自己資本比率が重視されるようになり、従来の政府保証を前提とした事業展開が不可能となる。おそらくは、簡保事業は廃止を前提として民営化されるのだろう

一方で、郵貯の場合には巨大な顧客基盤があり、そして低コストな決済システムがある。これらは、全銀協が主張しているように、郵貯の主力商品である定額預金を廃止し、代わりに国債の販売やATM運用、通常預金(普通銀行の普通預金に相当)の扱いや決済機能などを主体とするナローバンクとすべきであるという議論がある

しかし、いずれにしても郵貯が民営化された場合の明確なビジネスモデルが見えてこない。確かに、郵貯のシステム効率は高く、決済コストも銀行と比べて安い為に、主要な決済手段の一つとして普及しているが、郵便事業がコスト負担をしている部分もあり、単独で本当にコストが安いのかを考えると決してそうではないと思う。先日も、ITProに新執行役員選出の提灯記事が出ていたが、郵貯のオンラインシステムは国内でも最悪レベルの高コストシステムである(コレに匹敵するのが国税庁と社会保険庁のシステムだろう)

一般の銀行でさえも、口座振替などの為替手数料などの収益はほとんどなく、決済業務は赤字のところも多い。まして、ATMの時間外手数料を徴収せず、給与振込などの口座振替手数料や、当座預金口座に相当する振替口座の開設や維持にも手数料を徴収していない。郵貯に対する国民の支持が強いのは、こういった手数料が政策的な立場から徴収されていないからであり、これらが単独の事業として成り立つかどうかは別の話であり、民営化後も提供できないとすれば、国民の支持を前提に郵貯事業の権限維持を論ずるのはどうかと思う

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