von_yosukeyan (3718)の日記

○ ◎ ●

飲めや歌えや

von_yosukeyan による 2004年06月26日 21時25分 の日記 (#230281)

そういや、昨日農協の総代会だったらしい

組合系組織だけでなく相互会社なんかもそうなのだが、組合員や出資者が限りなく多い法人というのは、総会の代わりに組合員や出資者の代表による総代会というのをやる

保険会社(生保は大抵相互会社。株式会社もあるけど)なんか非民主的かつ非資本主義的な選出方法で、実にいい加減な総代が選ばれるが、農協は結構真面目に総代を選ぶ

といっても、農協である。すさまじく組合員の数が多い。だから、大抵町内会に農協委員というのが持ち回りの役職であったりするのだが、この農業委員が各農協支店に集まって、総代選びと議案確認、要望なんかをやる。要はミニ総代会

このミニ総代会ってヤツ(正式な名称は知らんのだが)が終わると、本式の総代会と同じように、飲めや歌えやの酒盛りというか、まぁお疲れさん会をやる。まぁ総代会なんてのは基本的にだるいんで、その労をねぎらうって意味もある。酒代は当然、農協持ち

おいおい、という意見もあるかも知れんが、漏れ自身は結構合理的な制度なんじゃないかな、と思う。株式会社の場合には、経営に直接関心のない株主と、経営者の間の関係というのが常に議論になるわけだが、農協なんかは配当には関心が無いが経営が生活に直結する組合員が組合を合有(所有の一形態)しているワケだ。ある程度のでかくなる組織で、意思決定を円滑化するためには所有と経営を分離させる必要がある、というのが現代資本主義の出発点であり、株式会社(Societe Anonymous)制度の発端でもあるが、日本では明治維新前にすでに農地の所有(領主・地主)と経営(農民)の分離が進んでおり、生産者主義的資本主義とも言い換えることもできる日本型資本主義の原型を成した、と言ってもいい。その直系の末裔が農協組織なのだ

と、どうでもいいことを書いているうちに、そういえば選挙なのだということを思い出したのだが、実のところ市民革命後の近代の選挙制度というのも、この「飲めや歌えや」に非常に似ている。17世紀ごろのイギリスの下院選挙は、通信や交通の問題から投票期間が2週間とか3週間にわたっていたために、候補者は有権者(当時は財産による制限選挙)を酒や料理を振舞うという一見不正に満ちた選挙が行われていた

アメリカも同様で、当初アメリカ建国の父たちは合衆国をジェントル階級による賢人政治を目指した。現在でも大統領選挙で残っている選挙人による間接選挙制度もまた、ジェントル階級による賢人選挙を前提としたもので、実際に大衆政党化するまで選挙人候補たちは「飲めや歌え」の選挙を提供したし、大衆政党化(南北戦争以後)の後も、貧民に対する炊き出しや職業斡旋など、社会機構の一部を担う形で、不正選挙がきちんと社会システムの一部として機能していたのである

もちろん、こういった時代にわれわれは戻れないだろうが、少なくともこういった時代には、政治とわれわれの距離というのは非常に短かったのではないか、と酔っ払いは思うのだった

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。

皆さんもソースを読むときに、行と行の間を読むような気持ちで見てほしい -- あるハッカー

処理中...