ロイターから
なんというか、前にも書いたが唯一の長期信用銀行となってしまったあおぞら銀行の全身である日本債券信用銀行というのは、不動産担保融資に特化した銀行である。そもそも、設立当初は日本不動産銀行という名称であったくらいだから、事業評価融資などできようはずがない
そもそも、日本不動産銀行の設立の経緯自体がかなり異例であった。旧植民地銀行だった朝鮮銀行と台湾銀行の残余財産を元に設立された日本不動産銀行は、戦前に不動産担保融資を主に行ってきた日本勧業銀行と北海道拓殖銀行の業務を実質的に継承する形で設立された。実際のところ、日本勧業銀行と北海道拓殖銀行は普通銀行に転換したために、債券発行部門はさらに異例なことに日本長期信用銀行を新たに設立して移管するという不可解な経緯をたどった。もっとも、日本長期信用銀行は産業部門に対する長期資金融資を担当する銀行となったのだが
設立の経緯からして、不動産担保融資、朝鮮半島関連融資、地銀取引と非常に特異な銀行となった。他の長期信用銀行にも言えることなのだが、民営化の過程で出資を地方銀行に頼ったために、地方銀行とのつながりも強い。実際に、日債銀破綻後の売却スキームでソフトバンクグループ、東京海上、オリックスグループのほかに株式を引き受けたのは主要地方銀行と農林中金などであった
ソフトバンクグループへの株式売却も、当初外資への売却を予定していたところを韓国政府からの政治的圧力と、国内の在日韓国系経済団体からの強い与党への要請から見送られ、妥協策として在日韓国系経済団体から微妙に距離を置くソフトバンクグループに売却と言う形になった。ソフトバンクとしては、ベンチャー企業への投資銀行を担当する部門としての位置づけで日債銀買収を決断したので、実際のところは半島関係者の思惑は外れたのだが
FSAは、ソフトバンクグループによるあおぞら銀行の機関銀行化を恐れ、実際にはかなり経営に縛りを加えた。これが、ソフトバンクグループとソフトバンクインベストメント、あおぞら銀行の思惑の違いから株式売却を決断させ、結局は外資に再売却されることになったのだが、ここであおぞら銀行は漂流し始める
要は、ビジネスモデルの転換が進まないのだ。装置産業たる銀行は、ビジネスモデルの転換にはシステムの更新が必要となる。元々、債券系システムだけで構成され、勘定系機能が弱い長期信用銀行系はいずれもシステム更新に手間取った。完全に刷新した新生銀行は、Windows勘定系であるiFlexCubeに乗り換え話題となったが(iFlexCubeはUNIXでも稼働するし実際開発元のシティバンクはSolarisで稼働させている)、みずほコーポレート銀行(旧日本興業銀行)はシステム増強に1000億単位の投資を行った。東京三菱銀行も、関連投資だけでもやはり1000億近い投資を行っている
一方のあおぞらは、一旦はシステム更新のためにNTTデータと日立製作所をパートナーに選定し、BeSTAへの移行を決定したものの肝心のビジネスモデルの転換が進まなかった。資産の圧縮は順調に進んだものの、ベンチャー融資はおろか中小企業への事業評価融資などほとんど進んでいない
ところで、あおぞら銀行の子会社にはあおぞら信託銀行とあおぞらカードがある。あおぞらカードは、オリックスの与信ノウハウを使って個人向けの無担保ローンを展開してるが、オリックス自体はあおぞら銀行への関与に意味を見出せなくなりつつある。自前の銀行としては、すでに山一證券の子会社だった山一信託銀行を買収して、オリックス信託銀行として経営しているし、リテール関連ではクレディ・セゾンとの提携が進んでおり、必ずしもあおぞらの必要性はない。自然と、あおぞらカードの必要性は低くなっており、投資銀行として期待ができない以上、ローンの債券化などはあおぞらの必要はないのだ
そこで都合よく現れたのが、楽天だったのだろう。楽天の最近のM&Aはかなり採算性に疑問の多い案件が多いのだが、いずれも決済関連を握るという点では共通性がある。個人向け無担保ローン事業は、銀行系を含めかなり成長が期待できる分野と言え、買収に踏み切ったのだろうが、個人的にはかなりナニに聞こえる
最終的には決済そのものを握る部門、即ち銀行業免許の取得を目指す、というところに落ち着くのだろうが、これにはすでにライブドアが失敗している。残るは、あおぞら銀行とジャパンネット銀行となってしまうが、この二銀行がどこの手に落ちるのか、かなり興味深い話だ
最初のバージョンは常に打ち捨てられる。