von_yosukeyan (3718)の日記

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アチェ特別州

von_yosukeyan による 2005年01月01日 18時44分 の日記 (#273062)

スマトラ島沖地震の推定死者数が10万人を超えた。未だに、増えつづけ、未だに統計に加えられない死者数が増えつづけているのには、被災国の特殊な政治事情がある

スマトラ島沖地震は、典型的なプレート境界型地震である。ニューギニア島中心部からティモール海、スンダ列島の縁(スンダ海溝)、ニコバル諸島、アンダマン諸島を通って、丁度ミャンマーのネダレイス岬を結ぶ弧を描く境界線が、丁度インド・オーストラリアプレートがユーラシアプレートに潜り込む形になっている

スマトラ島沖でまず発生し、アンダマン諸島の北部に至る約1000キロのプレート境界上で連続して発生した「プレートのずれ」が、今回の地震の正体である。極めて幅の広い震源地、いわば震源帯を持った自信であり、震源帯の中点と垂直に交差する線上に存在するタイ南部と、インド南部・スリランカに大きな被害をもたらしたのはそういう理由である

それでも、地震発生当初から現在まで震源地に近いインドネシアやアンダマン・ニコバル諸島、それにスリランカ北部の被害状況はそれほど明らかになっていない。本土から遠く離れたインド領アンダマン・ニコバル諸島(連邦直轄地)は別としても、インドネシア北部やパキスタン北部の状況が不明なのは、主に内戦が関係している

インドネシアは、本島(ジャワ島)による外島資源の搾取と、資源利権と強く結びついた事実上の軍事独裁政権が長く続いた。本島による経済的搾取と中央集権的傾向によって、古くから分離独立闘争が存在しており、その最大級の問題が東ティモール、イリアン・ジャヤ、そしてアチェ問題である

#東ティモール問題とは、大半がカトリック教徒が占めるポルトガル領ティモールにインドネシアが武力侵攻し併合した問題で、豪州の支援を受けて独立したのは記憶に新しい。旧ポルトガル領の独立問題では、本国政府の一貫性のない政策から、他にインドのゴア失陥や、中国領のマカオ失陥など数々の問題があった
#イリアン・ジャヤ(イリアン・バラット)問題とは、旧オランダ領の西ニューギニア地方をインドネシアが併合した問題で、地域的には東南アジアではなくメラネシアに、民族的にもニューギニア系住民が多数居住する。東ティモール問題と同様に、本島による資源搾取と人口圧迫から本島から流入する移民と原住民の対立が激化しており、現地の採鉱企業(米国系)の環境汚染問題を抱える。一方で、イリアン・ジャヤの併合を求め、独立派を支援する立場にあるパプア・ニューギニアも、銅鉱山があるブーゲンビル島の分離問題を抱えている。同島は、民族的にはメラネシア系住民が多数居住し、本国による経済的搾取と移民問題が存在するという意味では、問題の構造は東ティモールやイリアン・ジャヤと同じであり、イリアン・ジャヤ問題で大きく出られない原因でもある

アチェは、スマトラ島北部地域を指し、イスラム教徒が大半を占めるインドネシアの中でも厳格なイスラム教徒が多いことで知られている。アチェは、地政学的な位置関係的にも古くから交易で栄えた経済的先進地域であると同時に、イスラム教の先進地域であり、オランダによる植民地支配以前には高い文化水準を備えた地方だった

オランダ及び日本の植民地支配を経て、アチェの独立運動派はインドネシア建国の父であるスカルノらを援助したが、インドネシアの独立と共に彼らは裏切られ、一転して弾圧を受ける側になる。ソノ傾向が強まるのは、アチェに存在する豊富な天然ガス資源であり、インドネシア国営石油公社とエクソン・モービルによって開発されたアチェの天然ガスは、大半が日本に供給されている

石油資源に限った話ではないが、インドネシアの経済構造は原則的に、資源利権を華人系財閥が独占し、軍や官僚と強く結びついた国有企業が華人系財閥に利益誘導を行うことで癒着している。さらに、華人系財閥は日本やアメリカの大手企業と提携する形で資源や市場利権を供給することで利益を上げており、腐敗度の高いインドネシア経済は現実的には日本とアメリカの経済的搾取の対象となっている。その原動力がODAである

前世紀まで東南アジアの先進地域だったアチェが、独立運動の弾圧と石油資源の搾取によって、インドネシアの中でも後進地域の一つに数えられるようになって久しい。アチェに限った話ではないが、外島のインフラ整備は本島に比べ著しく遅れており、また住民の大半が漁業に従事しているため沿岸部の居住人口も多い。こういった状況下で津波が襲った

最悪なのは、このアチェの独立闘争を指揮している反政府武装組織自由アチェ運動と、インドネシア国軍との間は現在も交戦状態であるという点だ。インドネシア政府は、停戦を発表しているが、実際には停戦には至っていない。スハルト政権崩壊後のインドネシアでは、国軍の軍閥化の傾向が著しく、中央の命令を地元の軍が守るとは限らないという状況がある

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日々是ハック也 -- あるハードコアバイナリアン

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