von_yosukeyan (3718) の日記

2002 年 02 月 18 日
午前 09:29

変な判例(2)

NTT

『志免町水攻め事件』平成11年1月21日最高裁第一小法廷判決

水攻め、ってのは行政法上の隠語で正式な事件の通称ではないです(汗
水攻めというのは、ゴミ攻めと共に行政のセコイ嫌がらせとして知られているものです。高度経済成長期、大都市圏を中心に大規模な住宅開発計画が各地で実施されましたが、人口の急増に対してインフラ整備が追いつかない事例があちこちで見られるようになりました。

住宅開発業者は、大規模開発で大もうけできますが、行政の方は学校を建設したり、ゴミ処理場を整備したり、水道を整備したり・・・といったインフラ整備は簡単には行えませんし、行政の持ち出しで建設しなければなりません。そのため、行政は開発計画に際して業者側に相応の負担を求めだすのですが、負担に法的な根拠がないために、行瀬指導(行政によるオネガイなので、別に従わなくてもいい)を行うのですが、行政指導に従わなかった事を理由に業者側に不利益なこと、例えば建築確認申請の不受理などは行えません。(武蔵野マンション判例)

そこで、セコイ嫌がらせとして「マンションができてもゴミを回収しない」(ゴミ攻め)とか「水道の供給を拒否する」(水攻め)といったことをやるのですが、いずれも違法行為として判例はこれを排除しています。

この事件は、水攻めの典型例なのですが、業者側が敗訴したという希な例です。どういう根拠があったのでしょう?

福岡県志免町(しめまち)は、福岡市に隣接する小さな町で、ベットタウンとして人口が急増している町です。そもそも、北九州地帯というのは水が不足している地域にあたり、慢性的な水不足の状態にありました。
この町に大規模マンション建設計画が持ち上がり、町側は水道供給を拒否します(水道供給規則の改正でこれに臨んだ)。当然、判例から違法ですし、水道法15条1項は「正当な理由がない限り給水しなければならない」と規定しています。

水道法の規定は、逆にいえば「正当な理由があれば給水を拒否できる」と理解することができますが、これは本来渇水時に給水を制限したり、水道施設が破損したときのための規定で、そもそも水が不足しているという状態を想定したものではありませんでした。

最高裁は、そもそも給水したくても水がないんだから仕方がないじゃないか、という理由で町側の主張を認め、業者に対して逆転敗訴の判決を下しました。この判決に対して行政(厚生省)や学者の間でも批判が多いものですが・・・。

ところで、このマンションの住人は水道なしにどうやって暮らしているのかというと、業者がマンションの敷地内に井戸を掘って井戸水で暮らしているそうです。

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