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kahoの日記: あるマーカー遺伝子の死 1

日記 by kaho

最近構造が大きく変わって,最近の記事を斜め読みしにくくなったNature Web Newsに,幹細胞マーカーに対する疑問という記事があった.
これは一般の人には全く関係のないことであるが,タイトルを見た瞬間に私は何のことか理解し,血の気が引き,やはりそうかと安心もした.このエントリーは自分のためのメモとして書く.

Oct4という遺伝子がある.(マウスだとPou5f1でデータベースに載っている)
これはES細胞において遺伝子の発現をコントロールする転写因子だが,分化した体細胞では見られないので,未分化状態を維持する重要な遺伝子として知られている.
当初はES細胞でのみ発現する遺伝子とされてきたが,最近ではES細胞ではない幹細胞でも発現があるとして,ある組織に幹細胞が含まれているかどうか判定する際のマーカーとして利用されることも多い.

ところがこのニュースにあるように,それが本当かと徹底的に調べたところ,生殖細胞を生産する組織以外ではいかなる細胞にも発現は見られなかったということだ.
これまで単なる「未分化細胞のマーカー」としてOct4を使った研究は全て実験をやり直す必要がある.

教訓としては実験にはちゃんとnegative controlが必要だということなのだが,そういう一般的な話とは関係なく,このことはよく心に留めておき,幹細胞関連の研究を読むようにしなければと気を引き締めた.

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by teratera (19792) on 2007年10月12日 19時37分 (#1233128) 日記

    自分もタイトルを見て、血の気が引いた人間です。
    コントロールを取らないといけないってのは確かで、最初に使ったヒトもそう思ってたんじゃないでしょうか

    個人的見解ですけど、『どれがポジティブコントロールとして使えるか判らない』という、初期の段階にマーカとして定着してしまったのが、今回の結果に繋がったのかな、と
    マーカなどは定期的な見直しが必要ですねぇ・・・それを請け負うのは、ビジネスとして成立し難そうですけど。

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長期的な見通しやビジョンはあえて持たないようにしてる -- Linus Torvalds

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