phasonの日記: 惑星を持つ連星系 2
"Kepler-16: A Transiting Circumbinary Planet"
L.R. Doyle et al., Science, 333, 1602-1606 (2011).
論文のintroductionにも書いてある通り,複数の恒星を持つ惑星というのはSFではありふれた素材である.が,今までにそのような系は見つかっていなかった.一つにはそもそも複数の恒星を持つ系では惑星の軌道が不安定化しやすいこと(つまり惑星はどこか遠くに放り投げられることが多い)がある.惑星の発見には多くの場合惑星引力により恒星の位置がふらつくことを利用しているが,この場合は当然ながら巨大な惑星が恒星に近いほど観測が容易になる.ところが複数の恒星がある場合,惑星がこの連星の近くにいる(つまり互いに似た様な距離に存在する三体系)と不安定性が大きく弾き出されやすくなってしまうため,観測しやすい条件では惑星が存在しにくい,という事にもなってしまうわけだ.
今回報告されているのは,二つの恒星と(少なくとも)1つの惑星からなる系である.観測したのはKepler衛星で,こいつは系外惑星探索のために掩蔽を利用する.つまり,高感度なカメラで恒星を観測しておき,恒星の前面を惑星が通過すると輝度がわずかに下がることを利用して惑星を発見する.
今回の系の観測では,まず同じ周期の二つの輝度の低下が発見された.一つは輝度が13%低下するもので,もう一方は1.6%低下するものである.ここから,この系が連星系であることがわかる.つまり,明るい恒星Aの前を暗い恒星Bが横切る際に13%低下し,暗い恒星BがAの影に隠れてしまう際に1.6%低下,さらに二つの恒星は重心の周りを同じ周期で回転するのだからこの二つの掩蔽の周期は一致するわけだ.
一つの恒星に対し二つのサイズの異なる惑星が同一軌道上で周回しているような場合にも似た様な事は起こり得るが,そういった系は不安定なので現実的ではない.
#また,掩蔽の際の輝度変化のグラフの形状も微妙に異なる.
そしてこの二つとは別に,これまた周期が(ほぼ)同じ2つの掩蔽が存在する.一つは輝度が1.7%低下するもので,もう一方は輝度が0.1%低下するものだ.この二つはほぼ同じ周期であることから,一つの惑星が,二つの恒星の前を順次横切っていると解釈すれば説明出来る.「ほぼ」と書いた微妙な周期のずれは,この惑星が公転する間に連星もぐるぐる回って微妙に位置関係が変わるためである.
#そのため,最初は恒星A→Bという順に前を横切っても,次はB→Aだったりする.
さて,輝度や掩蔽から求まるサイズ,軌道の揺れから出てくる質量などをまとめると以下のようになる.
恒星A(数値は我々の太陽比)
質量:0.69
半径:0.65
温度:4450K
恒星B
質量:0.20
半径:0.23
温度:?(Aに比べ暗く寄与が小さいので不明)
惑星(数値は木星比)
質量:0.33
半径:0.75
密度:およそ1g/cm3
表面重力:1.4Gぐらい
連星間の距離:0.22天文単位
惑星の公転半径:0.70天文単位
中心付近にかなり接近した恒星が二つあり,それらの外側,(連星の軌道から見ると)やや離れた円として惑星が回っている.一応計算によれば,少なくとも当分の間は安定して回っているらしい.
惑星としてなかなか面白いのは,土星とほぼ同程度のサイズでありながら密度はかなり高い,という点だ.このため,半分ぐらいがガス,半分ぐらいは岩や氷などの固体であろうと推測されている.
また著者らは,惑星がなかったとしてもこの連星自体がかなり興味深い観測対称であるとも述べている.小さい方の恒星は主系列性としては最小ギリギリのあたりのサイズであり,もっと細かく光学的な観測を行うことで恒星の進化などに関する情報が得られるのではないか,という事のようだ.
#sup,subなどのタグが効かない?ような気がする.
supタグやsubタグ (スコア:1)
#コメント部分にコメントするのも何ですが(^^ゞ
手前味噌で恐縮ですがWindows7(32bit)上のFirefox3.6.22では表示出来ていない [slashdot.jp]です。
上記コメントではIE8では表示出来ていると書きましたが、どうも単にフォントのポイントが1段階小さくなっているだけで、ちゃんとした上付き・下付きにはなっていないようですね。
全ての修飾タグを試した訳ではないですが、まだまだこういうのが出てきそうです。
今回見つかった惑星を持つ連星、想像図は宇宙空間から見た惑星と連星でしたが、惑星の地表から見たら2つの恒星はどんな感じで見えるんでしょうね。時間差での日の出日の入り、てなイメージでしょうか。
むじるしそしな。
Re:supタグやsubタグ (スコア:1)
>どうも単にフォントのポイントが1段階小さくなっているだけで、ちゃんとした上付き・下付きにはなっていないようですね。
確かにそんな感じですね.下付はまだしも(サイズが小さくなるので下っぽくなる),上付きが使えないのは微妙……
>惑星の地表から見たら2つの恒星はどんな感じで見えるんでしょうね。
距離(というか位置関係というか)からすると,最大で恒星の位置が17度ぐらいずれて見えるっぽいですね.そんなに大きな差ではありませんが,見える差にはなりそうです.
ただ,小さい方の恒星は結構暗いみたいですので,もしかしたらうちらが見るところの満月っぽいものが太陽のそばにくっついて一緒に動いてる,という感じに近いのかもしれません(適当な感覚ですが).
#相対サイズから言うとメインの星よりだいぶ小さいんで,満月のように大きくは見えないでしょうけど.