taggaの日記: [読書] 曲り角の日本語
水谷 静夫. 2011. 『曲り角の日本語』 岩波新書、岩波書店。 http://www.amazon.co.jp/dp/400431304X/
「計量国語学」の水谷先生による、 日本語の規範と文法の変化についての解説本。 『岩波国語辞典』の編者として、 規範をどこまで認めるのかに関わってきた経験談、 それを踏まえた上で細かい用例検討による分析として面白い。 下の世代の研究者への苦言で、耳が痛いことは多い……。 けど、チョムスキー批判はちょっとずれている気がする。 「極大」と「最大」の区別なんて、翻訳の問題だし。
うーん。水谷先生、研究者としての文法解析に、 母語話者としての文法判断が引き摺られているんじゃないかな。 規範の背景に、一部の人たちの文法がある。 どの文法もそれなりに規則的なものであるはずで、 その規則を抜き出したつもりになると、 母語話者として判断が変になることがある。
たとえば、次の例 (p.161)。
こんなに豊富に漬け物が売っている店は関東にはないでしょう。
水谷先生は「漬け物がある」と「漬け物を売る」が 混ったと考えている。 けど、この「が」の用法が、規範的であるかはともかく、 他動詞の「ている」形が「が」をとる例は多い。 ただし、文脈が必要で、目的語が新情報になっているときに限るようだ。
p.154 の流行語と新語の概念的なグラフは、あんまり賛成できない。 流行らなくても広まるパターンはあるし、 定着ということだとS 字カーヴを考える方が今の多数説。
学校で教えている、橋本文法系の「国文法」が役に立っていないというのは、 同感なんだけど、 いきなり時枝文法を教えるのも大変だし。 水谷先生のは、生徒がいやがるかも。 格と用言の関係、情報の流れの両方をきちんとできてて、 普通の人が使える文法をだれか書いてくれないものかな。
それに関係して、「二重主語」批判のところは、話の流れがちょいと。 他の「二重○○」の例 (たとえば何を気を付ける」)は、 格と用言の関係による。 けど、いわゆる「二重主語」は情報の流れに関係している。
;; 『岩国』は、語義の整理がうまいと思う。 それに、規範意識も中庸をたもっていていい感じだ。 けど、僕は音屋なので、『新明解』派。 だって、アクセントを書いてくれてるから。
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