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日記

aitoの日記: 音楽情報科学研究会/音楽音響研究会 2012年6月2日まとめ

日記 by aito

東京での開催のせいか、あるいは土日の開催のせいか、会場はいっぱいで立ち見が出るほど。

●データ可聴化・楽音/歌声合成 【12:30-15:10】
(1) 生命動態可聴化の現状と課題
   寺澤洋子,松原正樹,牧野昭二
筑波大学の寺澤さんが遅刻せずに発表。生命科学分野に大量にある時系列データを可聴化する話。特に可聴化の評価について。イントロでは可聴化の一般的な解説といくつかの作品紹介。2011年の地震データの可聴化作品等。本論に入って、データ可聴化とdata-inspired musicの違い。可聴化のデザインの評価をしなくてはならないが、難しい。デザインは「期待された機能性を満足するかどうか」で評価・検証される。演繹的評価と帰納的評価があるが、従来研究はほとんどが機能的評価(可聴化を使ったトレーニング成果の測定、アンケート、自由回答)。筑波大のプロジェクト紹介。線虫の活動の可聴化と帰納的評価。脳波の可聴化と演繹的評価。複数の倍音によって音脈をコントロールする。音脈分凝を可聴化に使うのが面白かった。

(2) 擦弦時の奏法行動を考慮した意図表現の合成手法:VIOCODER
   小泉悠馬,伊藤克亘
法政大。伊藤先生の研究室からの発表は最近多いんだけど、伊藤先生自体は見ないなあ。バイオリン等、擦弦楽器の音の分析合成だが、単に弦の振動をシミュレートするだけでなく、発想記号から導出される演奏表現と、擦弦振動や共鳴とを分けて分析合成する。ここでは、スペクトル包絡のうち共鳴特性とヘルムホルツ振動のスペクトルを除いたものを演奏表現と考えてモデル化している。また、観測スペクトルから調波成分を除くことで非調波成分を推定する。分析方法はTANDEM-STRAIGHT。dolce, appassinatoなどの発想記号の音はそれなりに合成できるが、feroce(荒々しく)はあまりうまくいかなかった。原因は非調波成分の合成が今一つだったため。発想記号の影響として音色しか扱ってないのはどうなのかと思ったが、その領域の中では比較的上手くいっているようだった。

(3) 楽器音や動物の鳴声の音色と音声の言語情報を保持したクロス合成VOCODER
   西大輝,西村竜一,入野俊夫,河原英紀
音声の情報をつかって楽器や動物の声を駆動するクロス合成ボコーダの研究。そのまま楽器音で声道特性を駆動すると、音色が変わるために楽器音の特徴が失われるので、楽器音の特徴をできるだけ保存しつつ言語情報も残す方法。音声のスペクトル包絡の概形(右下がり)の情報を取り除くことと、running spectrumの領域での時間変化を制御する(HPF+LPF)方法の2つからなる。やっていることはわかるが、意図がわかりにくい。評価は一対比較。変調周波数フィルタについては、通過帯域の下限周波数が低いほうが言語情報が保存され、楽器情報が失われる。上限周波数が高いほど言語情報が保存され、楽器情報が失われる。

(4) 音源およびスペクトル包絡の時間的微細構造の加工と歌唱音声の印象への影響について
   河原英紀,森勢将雅,西村竜一,入野俊夫
歌唱の「荒々しさ」の分析合成。最初にまとめがある。荒々しい音声には、変調周波数領域で50Hzを超える周波数が観測される。それを取り除くと、同じ音声で荒々しさが除かれたものになる。その後、交差間隔に基づく新しい基本周波数推定方式(よくわからない)。変調周波数領域で高い周波数まで安定して推定できる。そのあと、その方法を使ってexpressiveな(ダミ声風の)音声のF0分析を行うと、変調周波数領域で70Hzぐらいの速い変動成分が観測される。周波数領域および変調周波数領域の微細構造を除くと、通常の歌声に近いものができる。今回、新しい基本周波数分析手法ができたので変調周波数領域の微細構造が観測できるようになったというのが主旨で、詳しい分析はこれからのようだ。

●特別講演 【15:25-16:45】
(5) 確率的逆問題としての音楽の信号処理と情報処理
   嵯峨山茂樹,小野順貴,亀岡弘和,齋藤大輔
確率的逆問題としての音楽情報処理。2月のPRMU/SPでの特別講演と同じようなテーマだが、今回は音楽の研究会なので遠慮ない。最初に「確率的逆問題」の定式化。
 認識は逆問題。計測も逆問題(慶大:本多教授)。人間の生活は逆問題だらけ。
 確率的逆問題:観測から生成モデルのパラメータを推定する
生成モデルの例:HMM→和声進行、リズム、楽譜、etc.
音楽処理の諸課題:記号系と信号系 信号系から記号系への変換が確率的逆問題
記号系の処理例:自動作曲、自動伴奏、演奏表情付け
 自動伴奏システムEurydiceのデモビデオ
 音響入力による自動伴奏のデモ。
 自動作曲Orpheus。「こうしてこの研究は始まった」の曲デモ。
  作曲のための各種拘束。関東方言版君が代。
 自動表情付けシステムPolyhymnia。
 自動運指決定(ピアノ)。運指から音符列を生成するというモデルの逆問題として運指決定を行う。
 自動運指決定(ギター)。自動編曲への応用。
信号系の処理例
 和音進行、調の推定
 リズム認識
 Harmonic Clustering
 NMFによる音の分解
時間いっぱい使って解説。内容も大変面白く、1時間20分でも全く足りない感じだった。

●特別企画 【17:00-18:15】
(6) パネルディスカッション「その研究って音楽の必要あるの?」
北原先生、馬場先生、安井先生、丸井先生によるパネルディスカッション。飲み食いしながらユルい感じのパネルは画期的。北原先生司会。Twitterでリアルタイムで質問を受け付けながら進行。
・本音と建前
「音楽の研究」と正面切って言うことができるか。ちょっと話が収束していない気が。
・研究の目的
科学か工学か。なんで芸術が含まれていないのか。
・音楽の本質
音楽とは何か、について。音楽についての科学的アプローチ。
音楽の研究をするひとはもっと音楽自体の勉強をすべき。
後半NIMEとかICMCでの音楽の話などがでて話がグダグダな感じに。

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「毎々お世話になっております。仕様書を頂きたく。」「拝承」 -- ある会社の日常

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