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日記

aitoの日記: 3月7日 情報処理学会全国大会「演奏支援」

日記 by aito

座長が当たったセッションその1。

・喉頭の運動に注目した歌唱音声の自動判別と評価(法政大)
歌の中で「苦しい発声」の判別。ここでは高くて苦しい声を「喉絞め声」と呼んでいる。歌唱訓練への応用が目的。地声・裏声・喉絞め声の3つに分類。舌骨筋の筋電センサー情報によって正解をラベリングする。分類は音響情報だけを使う。分類器は線形判別で、特徴量としてF0やスペクトル傾斜が有効だった。

・教則本を利用したギターフレーズの難易度推定(法政大)
楽譜を入力すると、ギター演奏の難しさを自動計算する方法。難しさの正解には主観評価値を使う。評価値が「弾けるようになるための練習期間」というのが面白い。特徴量は、押さえる弦の情報や移動量、奏法などを数値化したもの。推定方法は、与えられた楽譜と、すでに難易度が付与された楽譜との類似度を計算して、似た楽譜の難易度を重み付き平均するという方法。評価の結果、難易度が中ぐらいのものは誤差が大きい。

・ギター演奏からの押弦パターン・発音時刻・フォーム変化時間制約を用いたタブ譜自動生成システム(京大)
音響信号からのタブ譜推定。ベイズ推定による音高推定に基づくが、ギターの押弦可能性やパターンの出やすさを制約として入れる。各時刻で制約を考慮したスペクトルの生成確率を計算し、それを動的計画法でつなぐことで全体のタブ譜を決定する。ふつうの音高推定よりも推定精度が上がるのだが、オクターブ誤りを含む音高推定結果からタブ譜アレンジの手法でタブ譜を作った場合とどれくらい違うのかが気になった。

・エレキギターのピックアップを交換することによる音色の変化をソフトウェアを用いてシミュレートするシステムの提案(岩手県立大)
表題の通り。補正には、FFTとかではなくてバンドパスフィルタを使う。各フィルタの増幅量を決めるために、なんかまだるっこい方法を使っている。エレキギターの音づくりとして、ピックアップの違いってどの程度意味があるのかよくわからないと思っていたら、糸山さんから似たような指摘。

・バイオリンを構えた際の姿勢評価モデルの検討(沖縄高専)
バイオリン演奏の学習支援。バイオリン指導者が「構え」の良さを知覚するとき、どこに注目しているのかを調べてモデル化した。姿勢計測はモーションキャプチャ。計測された座標から、「肩と腰の角度」「頭の位置」などを計算し、それらの重回帰分析で主観評価値を推定する。エアバイオリンの練習に使えそう。

・動的計画法に基づく音符長を考慮したバイオリン運指推定(名工大)
バイオリンの運指の自動推定。演奏の難しさに応じて、運指の難しさを自動調整する(難しい局面では運指の簡単さを優先し、簡単な局面では高度な奏法のやりやすさを優先する、等)。このときの「難しさ」は音符長で表現する。各音符について可能な運指を状態として表現し、それを時間的にDPでつなぐ。ここで「奏法を優先する」というのは具体的には太い弦を使うことに対応するらしい。

・初心者の楽器練習のための楽器別イコライザー(法政大)
混合音楽信号から特定の楽器の音を強調。櫛形フィルタなどで特定の楽器の基本周波数と高調波を取り出すだけでなく、スペクトルの概形がその楽器に近づくようにバンドパスフィルタを使ってイコライジングする。また、時間方向のパワーのゆらぎがその楽器の持つ揺らぎ範囲に収まるよう加工する。

・Score following of human accompaniment using a lead-sheet for an artificial lead singer (Kyoto U)
歌の伴奏を練習するため、伴奏に合わせて歌唱合成するための楽譜追跡。入力は、歌詞つきメロディにコードがついただけのもの(lead-sheet)。それを見て引いた伴奏を聞いて、楽譜のどこを演奏しているかを追いかける。楽譜にはコードしかないのに伴奏は適当に演奏するので、対応をつけるのが難しい。追跡にはパーティクルフィルタを使う。音響信号からクロマベクトルを求め、楽譜上のコードから予想されるクロマとの類似度を計算する。

・楽譜の二次元木構造表現とリズム語彙に基づくMIDIデータからの自動採譜(東大)
MIDIデータを楽譜にする研究。自然な楽譜を生成するため、個々の音符の長さと全体のテンポ変動を同時推定する。音符の生成モデルとして、2次元の木構造(楽譜の縦方向と横方向)を生成する確率文脈自由文法を考える。ありがちなリズムを「リズム語彙」としてアプリオリに持っている。リズム語彙を使うことで変なリズムを取らなくなるので精度が向上する。

・弾き直し・弾き飛ばしを含む音楽演奏への高速な音響入力楽譜追跡(東大)
自動伴奏のための楽譜追跡。弾き直しなどを含む演奏に対して柔軟に追従する。弾き直し・弾き飛ばし位置(ジャンプ)の位置を事前に特定しないところが新しい。「どの位置からどの位置に飛んでもよい」とすると状態遷移の数が多いが、ジャンプの確率は事前に計算しておくことができて、計算量を削減することができる。また、「休止状態」を用意することによっても遷移の数のオーダーを下げることができる。この発表に学生奨励賞をあげた。

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一つのことを行い、またそれをうまくやるプログラムを書け -- Malcolm Douglas McIlroy

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