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ネットワーク

yasuokaの日記: 総務省のマイナンバー仕様書案

日記 by yasuoka

「地方公共団体における情報連携プラットフォームに係る中間サーバー・ソフトウェアの設計・開発作業の調達仕様書」案(総務省大臣官房企画課個人番号企画室、平成25年6月)に対する意見招請が、無事に終了したらしい。仕様書案そのものは、現在も政府調達事例データベースからダウンロード可能だが、記録のために、私(安岡孝一)個人の意見の一部を以下にも記しておくことにする。

総務省のこのマイナンバー仕様書案が、そのまま仕様書となった場合、かなり不公正な形での入札排除がおこなわれることが懸念される。問題となるのは、p.101の「17 参考資料」にある以下の部分だ。

③社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究(平成25年3月 内閣官房社会保障改革担当室)

  • 既存システム実態調査・既存システムへの影響調査報告書
  • 符号付番に係る初期突合の既存業務への影響調査報告書
  • 既存システム技術標準の検討に係る報告書
  • 中間サーバー技術標準の検討に係る報告書
  • 技術標準の検討に係る報告書
  • インターフェイスシステムに求められる要件の検討に係る報告書

本資料については現状未定であり、応札希望者及び受託者に対して別途担当課室が定める手続を行った上で提示することを想定している。

すなわち、この参考資料は非公開のままで、今後、入札がおこなわれるわけだ。極端な話、参考資料の「提示」を意図的あるいは非意図的に遅らせれば、その応札希望者は圧倒的に不利になる。しかも、手続そのものも公開されていないから、遅らせたことすら応札希望者にはわからない。もちろん、この参考資料が本当に単なる「参考程度に使う」資料であるならば、私の心配は杞憂に終わるだろうが、現実にはそうではない。総務省のマイナンバー仕様書案p.9には、以下のように書いてある。

この情報連携においては、情報のやりとりの安全性をより高めるため、個人番号を直接用いず、住民票コードを変換して得られる「符号」を用いて行うこととしている。情報連携の流れについては、「社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究」(平成25年3月 内閣官房社会保障改革担当室)に記載された内容を前提とする。
なお、参考資料については、「17 参考資料」を参照のこと。

p.16には、以下のように書いてある。

年間の情報照会件数は、「社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究」(平成25年3月 内閣官房社会保障改革担当室)に記載された内容を前提とする。
なお、参考資料については、「17 参考資料」を参照のこと。

p.23には、以下のように書いてある。

インターフェイスシステムについては、「社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究」(平成25年3月 内閣官房社会保障改革担当室)に記載された内容を前提とする。
なお、参考資料については、「17 参考資料」を参照のこと。

p.24には、以下のように書いてある。

以下については、「社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究」(平成25年3月 内閣官房社会保障改革担当室)に記載された内容を前提とする。
① 送受信データ標準

  • データ標準
  • データ構造

② 通信プロトコル標準

  • メッセージ交換全体仕様
  • メッセージ交換技術標準
  • 制御用通信プロトコル標準
  • 情報照会/情報提供用通信プロトコル標準
  • プレフィックス情報等配布用通信プロトコル標準

pp.25-26には、以下のように書いてある。

「4 情報システム要件」については、内閣官房における「社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究」の成果を踏まえて記述しているものであるが、今後の内閣官房等における検討により前提とする事項が見直されることもあり得るものである。

p.30には、以下のように書いてある。

データベース設計については、内閣官房社会保障改革担当室において策定する「技術標準の検討に係る報告書」(「17 参考資料」を参照のこと)のデータ標準に定めるデータ項目その他の情報連携プラットフォームにおいて保有する情報を踏まえた、データベースの設計(概念設計、論理設計、物理設計)を行うこと。

p.54には、以下の文章が2回でてくる。

電文は、送信ヘッダ部、メッセージヘッダ部、メッセージボディ部での構成を想定しており、「技術標準の検討に関する報告書」(「17 参考資料」を参照)で示される形式で記述することを想定している。

p.60には、以下のように書いてある。

暗号化の方式については、「社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究」(平成25年3月 内閣官房社会保障改革担当室)に記載された内容を前提とする。
なお、参考資料については、「17 参考資料」を参照のこと。

p.75には、以下のように書いてある。

4.4 情報・データ要件
内閣官房社会保障改革担当室において策定する「技術標準の検討に係る報告書」(「17 参考資料」を参照のこと)のデータ標準に定めるデータ項目その他の中間サーバーにおいて保有する情報を踏まえた、データベースとする。

p.89には、以下のように書いてある。

脅威への対策として、「表7-1 中間サーバー・ソフトウェアに関係する脅威と対策例」に例示した対策等を適切に行うよう、中間サーバー・ソフトウェアを開発し、ミドルウェアを選定すること。
加えて、「社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究」(平成25年3月 内閣官房社会保障改革担当室)に記載された内容を前提とする。
なお、参考資料については、「17 参考資料」を参照のこと。

p.90には、以下のように書いてある。

8.4 ネットワーク構成
「社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究」(平成25年3月 内閣官房社会保障改革担当室)に記載された内容を前提とする。
なお、参考資料については、「17 参考資料」を参照のこと。

p.91には、以下のように書いてある。

運用要件として、「社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究」(平成25年3月 内閣官房社会保障改革担当室)に記載された内容に加えて、関連法令、技術的基準等に準拠し、地方公共団体による運用設計が可能となるよう、運用要領(案)として取りまとめること。

その上で、p.101の「17 参考資料」には、こう書かれているのだ。

③社会保障・税に関わる番号制度が情報システムへ与える影響に関する調査研究(平成25年3月 内閣官房社会保障改革担当室)

  • 既存システム実態調査・既存システムへの影響調査報告書
  • 符号付番に係る初期突合の既存業務への影響調査報告書
  • 既存システム技術標準の検討に係る報告書
  • 中間サーバー技術標準の検討に係る報告書
  • 技術標準の検討に係る報告書
  • インターフェイスシステムに求められる要件の検討に係る報告書

本資料については現状未定であり、応札希望者及び受託者に対して別途担当課室が定める手続を行った上で提示することを想定している。

総務省が、子飼いのITベンダーに入札させたい、という気持ちはわからなくもないが、ここまで露骨にやるのは正直どうかしていると思う。ここまで「前提とする」ことになっていながら、その「前提」資料そのものが非公開なのだ。このまま入札をやったら、他のITベンダーからクレームがつくだろう(それも入札終了後に)ことは、火を見るより明らかだ。総務省は速やかに、当該「参考資料」を公開させるか、さもなくば、当該「参考資料」の内容を全て繰り込んだ形で仕様書を作り直すしかないだろう。

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