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Microsoftの戦略担当GM、Martin Taylor@本家 23

ストーリー by kazekiri
当時のMSのスタンスを如実に示している 部門より

airhead曰く、"今回はMicrosoftのプラットフォーム戦略担当ジェネラルマネージャー(05年2月インタビュー当時、今年3月の組織改編で異動)、Martin Taylorへのインタビューをお送りします。彼は、WindowsとLinuxとを比較するMicrosoftの広告キャンペーン「Get The Facts」を推し進めていた人物で、本編ではTCO調査への疑問を中心に、MicrosoftのLinux/FOSS観、両者間の相互運用性、セキュリティのコストなどの質問に答えています。
なお今回は、本家編集者Roblimoによる電話インタビューとして行われました。両者の反応もあわせてお楽しみください。(原文録音MP3

Martin TaylorのLinux観

Roblimo: えー、SlashdotのRobin 'Roblimo' Millerです。電話は今、MicrosoftのMartin Taylorにつながっています。調子はどんなもんでしょうか?

Martin: 上々だよ。君と話す機会を持てて、とてもわくわくしている。お互いの都合をあわせようとして、もう何ヶ月も経ってるんだよなあ。僕のスケジュールのせいであわせるのが難しくなってたとしたら、申しわけない。しかし、ついにこうして話せることになって、嬉しいよ。

Roblimo: こちらこそ。ようやく、だね。(Martin笑い) さて、ここにある質問はすべて読者から寄せられたものだ。最初の質問はGreyfeldから――Slashdotユーザー521548番――「Linuxを使ったことは? 何のために使って、Linuxを使っての個人的体験はどんなものだったか?」

Martin: ここ、僕のオフィスには現に何台か、Linuxを走らせてるマシンがあるよ。たいてい、何ができて何ができないかを調べるだけなんだけど。それにうちでは、たぶん百台かそこらのサーバを走らせてもいる。ええと、Red Hat、SuSE、Debian、Gentoo、とにかくいろんなものを。だから、どう動いてるかを調べるとか、比較分析をするとか、そんな類のことだってできる。

僕個人の体験? LinspireとXandrosの以前のバーションを使ってるんだが、他の連中ほどには技術に強くないんでエンドユーザーの一人として言わせてもらうと、いささか骨の折れるものだと思ったよ。アプリケーションをダウンロードしてインストールするとか、うちのプロクシサーバを通してインターネットに接続するとか、そういったことがね… デバイスのプラグイン・プラグアウトだって、僕が思っていた通りに、完全にスムーズにとはいかなかった。とはいえ、あちこちクリックしてまわるとか、そういったことをしているときの基本的なユーザー体験は良いんじゃないかと思う。

Roblimo: なるほど、それに関連してもう一つ。Askadarが、Linuxがうまくやってるところはどこ?と訊いている。「思うに、あなた方はLinuxを評価したに違いない。その過程において、Linuxで良いと思ったところはどこですか?」

Martin: いくつか挙げられるね。一つには、そうだな、ものごとをきっちり切り分けて、すべて自分たちでこなし、独自のディストリビューションを作りたいと強く思っている、そんなユーザーに向いてると思う。いうまでもなく彼らはそのレベルのソースコードアクセス能力をしっかり備えていて、欲しいものだけにして他の多数を排除したメモリ使用量のごくごく小さな、カスタマイズされたディストリビューションを作るといったことができる。Linuxは、そういったユーザー層にとって魅力的だよね。それからLinuxは、例えばGoogle――つまり巨大サーバファームを構築することを切実に望んでいる大企業にとって魅力的だ。それを絶えずきちんと調整するとかの類のことをするために、彼らはすごく才能のある技術者を相当数雇用したいとさえ考えている。だから、特定のニッチ分野であるとか、多くの自己責任を負うことになるが自らの力で深く追求したいと強く思われているような分野をしたくなったら、そういうシナリオにおいてLinuxは魅力的だろう。いうまでもなく、そういった基準でLinuxを採用する需要が数多くあるのは君も知ってるよね。

相互運用性

Roblimo: ふむ。別の質問に移ろう。これは君や僕のお気に入りのSlashdot投稿者、Anonymous Cowardからだ。こいつは選定基準には入らなかった質問なんだが、僕が思うに… Slashdotは読んでる?

Martin: 読んでるよ。少なくとも週に何度かはSlashdotに行くって程度だと思うけど、その日のニュースやその週のニュースによっては一日に何度も行ってるんじゃないかなあ。(Roblimo笑い) 世界で何が起こっているか次第だもんね。大ニュースの日もそうでない日もそれなりにMSNBCに行くのと同じようなもんだよ。ということにしておこう。

Roblimo: なるほどね。で、こいつはAnonymous Cowardの質問。「Microsoftは、相互運用性を円滑にすることを望んでいると宣伝しているようだが、その場合、貴社のオペレーティングシステムとMac OSX、Linux、Sun Solarisなどといった別のシステムでの環境との間のスムーズな相互運用性を意味しているのか? それとも、Microsoft製品間の相互運用性を意味しているのか?」

Martin: そうだな、実際のところ僕は二つを分けて考えてる。現に僕は、Microsoft製品が別のMicrosoft製品とうまく連携することを、まず第一に、統合と呼んでいる。ちょっとまてよ。これってMicrosoftテキストブックとかSlashdotグロッサリとかで定義されてる用語だったかな。憶えてないけど…(Martin笑い)。

Roblimo: うちにはグロッサリはないよ。そんな格式ばったところじゃない。

Martin: でも個人的には、あー、なんというか、Microsoft製品が別のMicrosoft製品と連携することを考えた場合――そっちのほうを統合 (integration) というように考えている。それらがどれだけうまく連携するか。で、それを踏まえて、Microsoft製品が非Microsoft製品と連携することを相互運用性 (interoperability) と考えている。で、何だかんだを円滑にすることについて、僕たちはかなりの労力を費やしていると思う。ずっと前のことを振り返ってもらいたいんだけど、あのほら、Novellとの統合に取り組んでいた頃。僕らは自前のNovellクライアントを書いて、自前のIPX/SPXスタックを書いて、Novellサーバと統合できるようにしていた。

Roblimo: それで今は?

Martin: そしてそれから、それをずっと前進させてきている。現在でも、Vintelaを導入すればSMSでOpenWebを通じて、UnixおよびMacクライアント、それにMacサーバ、UnixおよびLinuxサーバを管理し、配布することが可能だ。Services for Unixで僕らが行った取り組み――NFSゲートウェイ、NFSホスト、NFSクライアントは、UnixやLinux環境との統合を可能にしていると考えてる。だから、僕たちが状況を見極める――つまりVintelaのケースやServices for Unixのケースのように、僕たちはいずれのパートナーに対しても、MS製クライアントで何をすべきなのかをしっかりと見極めることができると思うし、別のシナリオでも相互運用する方法を見つけることができると思う。

Roblimo: 読者から寄せられたんじゃないけど、ここにぴったりとつながる質問がある。Sambaプロジェクトとの協力を深めてはもらえないかな?

Martin: うまく連携できるということを確実なものとするために、僕たちは常に、様々に異なったレベルの人々との協力関係をオープンにしていると思うよ。で、相互運用性の観点から僕らがやってることのほとんどは、どちらかといえば、業界よりも顧客の意向に沿ってなされることが多いと思うんだ。つまり、「ねえ、この2つを連携させる必要があるんだけど」と言う顧客がいたら、うちのVintelaプロジェクトやチャンネル・パートナーシップが大挙して、UnixやLinuxとの統合に取り組むことになる。Services for Unixや他のいくつかの分野で僕たちがやっている作業も、そういったものなんだ。誰とも議論しないなんてことは言わないけど、結局は顧客が望むことに全力を尽くすことになるね。

Martin Taylorのマルウェア対策

Roblimo: 次の質問。ProteusQ、Slashdotユーザー665382番から。彼はマルウェアからの保護について訊いていて、君、Martin Taylorに自身のことを訊ねてる。「マルウェア(ウィルス、トロージャン、スパイウェアなど)からWindowsライセンスを保護するのに、あなたはどんなアプリケーションを走らせていて、その保護にかける年間の出費はどれぐらいですか? 他のWindowsユーザーが負担しているコストと較べると、また、Debianで提供される同等の保護を利用する場合に支払うことになるコストと較べると、どの程度のコストになるでしょうか?」

Martin: うん。まず最初に言っておくと、僕が走らせてんのは、いうまでもないけどWindows XPだ。XP SP2を走らせてる。スパイウェア製品のベータもダウンロードしたな。うちは最近の買収の一つをもとにして、XP SP2とスパイウェア製品を組み合わせようとしてるけど、僕がダウンロードしたのはそれだ。保護にはだいたいそれぐらいだね。僕がここ、Microsoftで使ってるデスクトップやラップトップにしても、自宅にある3台のPCにしても――よく似た設定だよ。

Roblimo: それら追加プログラムは、どれぐらいの出費になるだろう? 君や僕、つまり僕の場合はジャーナリストだからだけど、僕たちのような人間ならソフトウェアを、誰かからタダで手に入れられるじゃないか。君が通常のユーザーだったら出費はどれぐらいになる?

Martin: あー現在、Windows XPの正規ユーザーなら、XP SP2は無償だ。ダウンロードするだけのことだよ。僕がダウンロードしたスパイウェア製品も無償ベータだし、今のところ、価格だとか販売予定だとかは一切発表していない。だから今僕が使っているものは、すべて無償。

Roblimo: なるほど。必要な防御はそれで全部なんだ?

Martin: 今あるのはそれで全部だし、今のところ上手くやってくれてる。でも、それで必要なもの全部と言うのにはためらいがあるな。というのは、正直に言うと、必要なものすべてをきちんと分析することにかけて僕が深く考えてるとはいえないだろうけど、現行の設定でどんな形どんな類の大問題も経験していないからね。スパイウェア技術、いや対スパイウェア技術って言うべきかな、そいつは結構な働きをしてくれるし、僕のデスクトップ・プロファイルでの、有ると無いとで大違いなものの一つだな。あーなんというか、あらいざらい言ってしまうと、うちの嫁さんが家で使うためのDellマシンを買ったときには、スパイウェア技術を調達するまでもなくて、実は元から入ってたんだ。確か、PCには初めからNortonツールがいくつか付いていたし、念のため言っとくと、それについて追加料金はなかったし、ええと、Dellはそれを価格に組み入れてるのかもしれないけど、よくわからない。だけど個人的には、何かしらかの追加のセキュリティ製品を買いに行くとか、ダウンロードして支払うとかしなきゃならんってことは、これまでなかったよ。

Roblimo: なるほど。じゃ、個人的に訊いておかなきゃと思ってる質問。読者からじゃないけど、次の読者の質問にそのままつながると思う。いまさら言うのもなんだけど、僕はLinuxを走らせてる。

Martin: ちょっと訊くけど、君が走らせてるのは何? 今はどのバージョンを?

Roblimo: 走らせてるのはMEPIS、本質的に言えばDebianだよ。で、今開いてるブラウザはFirefox。

Martin: うん。

Roblimo: それで僕は、例のポップアップとかそういったものとは無縁だ。君はどうやってポップアップが視界に入るのを避けてる?

Martin: Windows XP SP2、こいつにはポップアップ・ブロッカーがあって、Windows XPのアップデートの一部なんだけど、ポップアップを遮断してくれるし、多機能バーもついてくる。ポップアップを見る必要があるなら、何かブロックしたと告げてるときに右クリックして指示できるようになってるんだ。というのは、ミニ・ウェブサイトが持ってるトランザクション・エンジンによっては、ウェブサイト内でどっちに進むにしてもトランザクションを継続するのに情報を得る必要があって、ポップアップを出してくるものもあるから…

Roblimo: それ、Firefoxにもあるよ。

Martin: いやそうだけど、僕が使ってるものの話。Windows XP SP2の話だよ。

Windowsとオープンソース・プロジェクト

Roblimo: Doug Danteから、関連する質問が来ている。彼が訊いているのは、Windowsの競争力を助けるオープンソース・アプリケーションについてだ。彼曰く、「Windowsのオープンソース・アプリケーションは、Linuxに対抗する競争力を高めるうえで、どれだけWindowsの助けになっているだろうか? 例えば私は、まっさらのWindowsのインストール後は直ちにOpenOfficeとか、Firefoxや、Thunderbirdをインストールしている。」

Martin: ええと、ごめん。最初のほうは「いかにオープンソース・プロジェクトがWindowsの競争を助けるか?」と言ってたと思うけど、はっきりとは… もう一度質問を繰り返してくれる? 聞き逃したよ…

Roblimo: 彼が言っているのは… 彼が書いた順番とは逆に質問を追っていこうか… 彼が言うには、彼がWindowsをインストールする場合、まっさらのWindowsをインストールしたら、そこに直ちにOpenOffice.org、Firefox、それとMozillaベースの電子メールプログラムのThunderbirdを追加するそうだ。で、彼は訊いてる。「それらはLinuxに対抗する競争力を高めることにおいて、どれだけWindowsの助けになっているだろうか?」

Martin: あー、僕には、必ずしもそう取れるとは思えないなあ。「Windowsで利用できるオープンソース・プロジェクトには素晴らしいものがあるよね」なんて言ってるとは思わないよ。ええと、言い換えて答えさせてもらえるかな。彼が言ってるのは、「SourceForge(.net)にある新しい系統のアプリケーションやオープンソース・アプリケーションは、Windowsをより有用にしたり、WindowsがLinuxと競争するのを助けたりしているだろうか? だって結局のところ、WindowsもLinuxもオペレーティングシステムに過ぎないし、上に載るアプリケーションスタックはその選択を人々に委ねてるわけだし。」そう見るのが自然じゃないかな?

Roblimo: そうだろうね。

Martin: その観点に立っても過去と現在で変わるものは何もないんじゃないかな。僕たちはこれまで常に上質のアプリケーション・カタログに恵まれてきたけど、僕たちが書いたのはその一部であって、大部分は他の誰かによって書かれたものだった。で、ある意味オープンソースは、Windows上で実行できるアプリケーションをこれまで以上に大量に生み出してきた開発モデルということもできる。で、これを聞くと皆たいてい驚くんだよね。彼らは知らないんだ。SourceForgeにはこのオペレーティングシステムを対象とした――Windows 2000およびWindows XPを対象としたものだけでも、10,000を超えるプロジェクトがあるということを。で、SourceForgeに行ってブラウズしてまわってみればいいけど、そこらじゅうに大量のアプリケーションがあることに気づくはずさ。そのことは実際、ええと、差し支えなければ質問をちょっと延長したいんだけど。

Roblimo: どうぞ。

Martin: 僕が少々不満に思って止まないことがあって、その責任の一端はMicrosoftにいる僕たちにあると言われても仕方ないし、僕たちも改善してきたと思いたいんだけども、何が不満って、皆がMicrosoft対オープンソースという構図で捉えようとするということなんだ。決して僕は世界をそんな風に見ていないし、僕の周りの人間も世界をそんな風に見ていない。僕たちがどう見てるかというと、OpenOfficeを使おうって声がある、ってことだ。僕たちは、自分たちの製品Officeを優れた製品だと思っているし、Officeが製品価値においてOpenOffice.orgに優っていると示せるように万全を尽くしたいと考えている。そういう機会にあるなら比較対象はOpenOfficeでもStarOfficeでも、どちらでもいいんだけど。これは、僕たちが反オープンソースだということを意味してるわけじゃない。そういった製品と比較してより良い製品を持っていると自負している、ということなんだ。オープンソース・モデルとプロプラエタリ開発モデルの、いずれにによるものかは関係ない。僕たちがCorelをどう見ているかというのと同じことで、AmiProとかWordPerfectとか、何を挙げてもらっても答えは変わらないよ。で、そろそろ質問に決着をつけよう。Windowsを対象として書かれたアプリケーション・コードがあって、それがGPLなどのライセンス形態のもとにライセンスされるなら、それはオープンソース・モデルに基づくもの、ということになるね。で、オープンソース、結構じゃないか。繁栄と神のご加護のあらんことを。僕たちの持っているアプリケーション・プラットフォームとしての有用性を増大させるわけだしね。

感情論

Roblimo: ここで、前もって用意しておいたリストにはない質問をしようと思う。今、実際にSlashdotを見てて、ええと、君の答えを聞いて気になったんだけども、その質問そのものを見つけなくても大まかな内容は説明できるんだが… このインタビューの質問募集には、1,000を超えるコメントがあったからなあ…

Martin: 昨日の晩、夜中のことだけど僕は不安で、ビクビクしながらSlashdotを読んでたんだ。(Roblimo大笑い) いやもうRoblimo、君にどこに連れて行かれるのか、わかったもんじゃなかったし。昨日の晩は夜中までかけて全部読んじゃったよ、一つ残らず。夜中に見た数字は1,096だったかな。

Roblimo: 何言ってんだよ、大丈夫だって。皆君のこと大好きだよ。

Martin: でも僕は皆のこと大好きだからね。(両者笑い)

Roblimo: ともあれ、質問の主旨は… 見つけられそうにないなあ… いっぱいあり過ぎるよ。追加質問は5つだけにしなきゃならんのに、50幾つもある。ええとこれは根強い恐怖・不安・疑念 (FUD) の話題について訊いてるやつだな。「MicrosoftとMicrosoft製品が他よりもそんなに良いなら、なんであんなことをする? その真意は何だ? Fordが、Fordを持ち出すかわりにGMを叩くのに時間を費やしてるようなもんじゃないか?」

Martin: 君がどれを元にして言ってるか、わかるような気がするよ。昨日の晩読んだものの幾つかがそんなのだった。僕がわかるって言って、それで僕がズルをしてるって言われるなら、知らないってことにしておくけど。でも昨日の晩見た中でそんなことを言ってるような投稿は、ひっくるめて8つだか10だかになるかな。ええと確か…

Roblimo: 今それをやろうとしてるんだけど。(笑い)

Martin: 今でも鮮烈に、全部憶えてるよ。昨日の晩、総じてどんなものが聞こえてきたか、どんなものを読んだか教えてあげようか。だいたいこういうやつさ。「お前さんとこの製品が、お前さんの言う通り別のカテゴリに分類される程に優れてんなら、なんでGet the Factsキャンペーンなんかやるんだ? より優れてると言いふらさなきゃならんと思ったのはなんでだ?」

Roblimo: いや、訊きたい質問はそれじゃないんだ。

Martin: そっか。

Roblimo: 君自身のじゃないよ、君の同僚、Microsoftの重役から出てくる発言が、Linuxやオープンソースに対する怒りに満ちた、敵意むきだしの批難みたいになってるのはなぜだと思う?

Martin: こいつについては、僕たちはかなりの前進をしてきたと考えてるし、率直に言わせてもらうと、僕の印象では過去のことだし、これについての君の記事は気に入っているんだ。なにしろ君は、僕たちや業界、それに君が時間の許す限りやってきたことを観察してきたんだし。数年前の僕たちは充分に理解していなかったと思うんだ――これは会社全体の傾向について言ってるわけだけど――Linuxやオープンソースを充分に理解してなかったし、それらとして分類されているものは何であれ、今でもちょっと未知の部分がある。それに対してある種の感情的な反応が起こるのは、無理もないことだと思うんだ。そしてまた、ものごとに理解できないところがあったら、つまり人々がなんだか訳のわからない行動をしているように思えたときには、それが何らかの形である種の感情的な反応に結びついてしまっていた。これは早期の見方だったと思うんだ。もう一つ言っておきたいのはこれが共同責任として扱うべき問題だということで、というのは、Slashdotの熱心な読者として言わせてもらうと、Slashdotに集う人たちの中には何というか… 直情的な人も多いし。

Roblimo: おやまあ! どうしてまた、そのようなお考えをお持ちになったんでしょうか?(笑い)

Martin: 僕たちに対する印象もあるし。それで、どちらの側にしてもちょっとだけ相手と似たところがあったと思うんだ。そんなのは卒業して建設的で実利的な対話をすることで、誰にとっても利益となるような論点に移る必要があると思う。Linuxはダメだとかオープンソースはおぞましいとか、そういった類の言葉を並べる感情的なものじゃなくて、もっと実利的な、顧客本位のものであるべきなんだ。例えば「ここに我々が大きな付加価値を提供できると考える理由はこうで、より良いTCOストーリーを提供できると考える理由はこうで、我々の統合が…」

Roblimo: TCOの質問に移ろう。どっちみち訊くことになるんだし…

Martin: いやいやいや、僕が言おうとしてるのは要するに…

Roblimo: だけど、TCOについての質問が来てるんだよ。

Martin: ちょっとだけ待ってよ。

Roblimo: 了解。

Martin: それで、僕たちは数年前よりもかなり前進してきたと思うんだ。毎日全員の全部の発言に対処するなんてできるかい? 無理だ。でも全体的に見たときに、Microsoftから聞こえてくる言葉は3年前とは違ったトーンになっていると思う。同意してもらえたら幸いなんだけども。

Roblimo: 温情あるプロプラタエリ・ソフトウェア企業だ。(笑い) じゃあ次の話題に…

Martin: (笑い)今のは名文句だな。次のPRスピーチで使う場合には、君に使用料を支払わなきゃならんかな?

Roblimo: 当然。値打ち分だけ支払ってもらうよ、ゼロってことになるだろうけど。(笑い)

Windows TCO vs Linux TCO

Roblimo: お次はRailGunner、登録ユーザー554645番だ。彼は、Windows TCO vs Linux TCOを話題にしたいみたいだ。彼はこう訊いてる。「あなたはなぜ、総所有コスト (Total Cost of Ownership) はWindowsのほうが低いなどと主張しているのですか? LinuxやFOSS――つまりオープンソース・ソフトウェア周辺において負担となることのない、ウイルススキャナ、デスクトップでのMicrosoft Office、サーバでのIIS/SQL Serverのコスト、さらにはBlasterやSlammerといったワームによる被害を計上していないにも関わらず。」

Martin: これは二つに分けられる質問だね。第一に言っておきたいのは、Forrester、Giga、IDCその他のアナリストそれぞれによって行われた調査の総所有コストを調べてみると、それらはソリューション全体に及んでいる、ということだ。それらソリューションには、その一部として一定レベルのウェブサーバやアプリケーションサーバを備えているものもあるし、単純な作業負荷シナリオに留まらないものもある。僕たちが「Microsoftはより低い総所有コストを提供します」と言うことは、滅多にないと思う。その次の段階に踏み込んだ場合に、僕たちが「Microsoftは、このソリューションで、このシナリオで、製品をこのように組み合わせた場合に他のこれらの組み合わせと較べて、より低い総所有コストを提供できます」と言ってるのを目にすることは確かにあるだろう。だから調べるにあたっては一製品ベース、一シナリオ・ベースに留まることはないし、それらすべての要素が関わってくるんだ。これが前半に関係してくる第一の事柄。後半で言及されているのは、その観点から一部のセキュリティ問題をどのように計上するか、その考え方だね。

Roblimo: それらが含められていると思えたのはなかったね、僕が読んだ調査について言えば――いや本当に。Microsoftのマーケット資料や独自調査はすべて当たってきたんだけど。ある時点においてMicrosoftのサポートを受けていた企業による独自調査だよ。でも、断りを入れておかなきゃならないな。MicrosoftはOSTGの大広告主で、君たちのサポートに感謝しているってことを。

Martin: それに、それらの企業がこの業界の動向次第で、IBMやHPやRed Hatやその他の企業から同じようにサポートを受けることもあるしね。まあそれはそれとして、後半について言うと、いかにそれをモデル化するかの方法をずっと探し求めてきてはいるんだ。セキュリティに関して行うことを、どのようにモデル化するか。例えばハリケーン後の調査で「このシナリオに基づいた被害はどれだけのものだったか?」などと調べてみても一向に構わない。でもそこから総所有コストについての見通しとか、その類のものが得られるわけじゃないし、だからこそモデル化する方法、つまりはそれによって見通しが利くとかできるようになる、総セキュリティコスト (Total Cost of Security) とでも言うべきものを見つけようとしているんだ。でもそれは途方もなく難しいことだし、このSlashdotユーザーの一大コミュニティにもお尋ねしたい――何らかの形の予測モデリングを行うことのできるモデルを示せる者はいないかな? というのは、それこそが核心だから。それこそが、今後3年ないし5年のコストがどれだけになるかについての予測モデリングそのものなんだ。それはどのように映るものなんだろう? どんな意見や提言でも歓迎するよ。一部の調査会社も同様に、この概念に取り組んでいると聞いているけど。

Roblimo: そういう人の多くもSlashdotを読んでるしね… 答えはきっと見つかるよ。

Martin: そうするとある時点についての見積もりをすることになるだろうけど、そのやり方は「見ろよ、Blasterのせいで金額にしてこれだけの損失になったぞ」と言うようなものじゃなくて、適切なのはこう問うことだと思う。「セキュアな環境を設計するのに、どんなコストがかかるだろう? 我々の環境に予防接種するのに、どんなコストがかかるだろう? 必要とされる適正な冗長性を築き上げるのに、人的リソースの観点から、どんなコストがかかるだろう?」 だからこれだけのコストになると… こういった観点で総セキュリティコストを調べる場合には、モデル化したものを調べるのがいいと思う。でも間違ってるかもしれないし、フィードバックは歓迎するよ。

Linux技術者は割高?

Roblimo: 期待していいんじゃないかな。次の質問は、説得力のある千語を連ねようかというものの一つから僕が抜粋したものだ… これは、Microsoftが後押ししているTCO調査の全体に関わってくるテーマだよ。彼は僕たちに、こう問いかけている。「給与面においてLinuxギークはWindowsギークよりもかなり金がかかるというが、本当にそうだろうか?」 これはよく聞くテーマだね、Linux管理者を雇うとよりコストがかかる、というのは。で、彼曰く、「この主張はにわかには受け入れ難く思うし、現在の経済状況においてはなおさらだ。」

Martin: うん、ええと、これは不本意ながら「君がそう言うなら僕はこう言う」って感じになってしまうな。だけど、僕が今やってるプロジェクトでLinuxコンサルタントを16人雇ったところなんだ。で、実際に、雇用した会社に訊いてみた――同じくWindowsおよび.NETのアーキテクトを16人雇う必要もあったんだ。訊くまでもなく、Linuxの16人を雇うほうが大幅にコストがかかっていた。で、これは単に経済の――単純な経済の問題なんだ。業界にははるかに多くの人がいるし、親愛なるSlashdot読者にとってこれは、不安にさせることかもしれないとは思うけど… 悪い意味で言うわけじゃないけども… 正直に言って、Linuxを解ってる人よりもWindowsを解ってる人のほうが、はるかに多いんだ。これは単に、現実だよ。

Roblimo: こういう可能性はないかな? それに深く関わろうというLinuxに精通している人… Microsoftのために働いてもいいというスキルのある人間を見つけづらかった、なんてことは?

Martin: じゃなくて、というか、あれはサードパーティだったんだ。彼らは自分たちがMicrosoftのために働いてるってことを知らなかったんだよ。

Roblimo: ははあ。なるほど。

Martin: とあるサードバーティに依頼して、一流のLinuxデベロッパー/アーキテクトを16人、一流のWindowsアーキテクトを16人、雇わせてたんだ。そうして僕たちがしている研究における比較調査をすることができたってわけさ。その作業の雇用に関してMicrosoftが関係しているとは、誰も知らなかったんだよ。

Roblimo: 興味深いね。

Martin: 話を戻すけど、いずれにせよ、それはたいした問題じゃない。より事実に即して考えるなら、このIT業界の就労人口においては総体として、スキルのある人はかなり稀だ、ということが挙げられる。僕はそれこそが大きな問題だと思うよ。

Roblimo: ふむ。給与の話はここフロリダで見聞きするのとは違うんだがなあ。それは置いとくにしても、君がそう言うなら、僕だって給与調査や回答を二千三千と読んできたんだ、てなもんだけど。

Microsoftは自らの首を絞めている?

Roblimo: じゃ、次の質問。まったく別の内容だ――Microsoftについて――自社のソフトウェアを台無しにしてることについて。Aim Here (765712) からだ。「シリアルナンバー・チェックに、『お家に電話』機構、登録機構、デジタル『権利』管理機構、不自由な『スターター』版のWindows、おまけに、自分のWindowsマシンにパッチを当てたいと思ったら避けて通れない、ありとあらゆる対海賊行為チェック。Microsoftはとんでもなく多くの時間と労力を費やして、顧客が決められた輪をジャンプしてくぐらないことには同社のソフトウェアが動かないよう、じわじわとではあるが手段を講じてきている。君は心配にならないのかい? 他でもない自分のところのソフトウェアをじわじわと壊している――および/または不自由にしている、この絶え間のない(そしてだんだんと煩わしさを増す)プロセスによって、君んとこの顧客の中から遠ざかってしまったり、犯罪者扱いされてると感じたりする者が出ないかと。特に、君たちが今まさに鎬を削っている相手、フリーソフトウェアのオペレーティングシステムの作者がそれらを必要としてなくて、自身のソフトウェアを改善させるのに全リソースを集中できるとなると、ことさら心配の種じゃないの?」

Martin: ごめん、とりあえずそれぐらいに。最初のほうからすると、わからなくなっちゃうよ。

Roblimo: つまり要点はこうだ。僕のところではDebianを運用してるけど、コンピュータ3台を追加したいと思ったら、CDを取り出して放り込んで、一件落着。一通り揃ったデスクトップにかかる総コストはゼロで、登録する必要もない。それで僕はWindowsを1インスタンス持ってるけど、そうすることはできないし、それを別のコンピュータに放り込むこともできない。

Martin: 幾つか指摘しておこうか。まず一つめ、調べてみればわかるけど、営利企業は現在Red Hatや商用ディストリビューションを採用・配置している… 追加のサーバにRed Hatをインストールしてそのサーバについてサポートを得たい場合、登録プロセスがあるよね。どこでも好きなところに自由にコピーできるけど、サポート付きサーバやサポート付きデスクトップを世間並みに手に入れたいと思ったら、登録プロセスは避けられないんだ。だからそれと、利用者に登録であるとか、最低限でも正規コピーを使っているのか記入/照合することを求める僕たちのモデルとが、かけ離れているとは思わないよ。

二つめに言っておきたいんだけど、Aim Here氏の発言で解せないのは「僕たちが利用者に、自身のシステムにパッチを当てるうえで輪をくぐることを要求している」という部分だ。現在そんなプロセスはない。現在、Windowsを運用していてセキュリティパッチが必要な場合、製品にセキュリティ修正をインストールするのに改めてくぐる必要のある輪とかいったものは、今のところないよ。だから、それもちょっと妙な話だ。それともう一つ最後になるけど、この全プロセスをとんでもなくスムーズにしようと、僕たちは全力を尽くしている。さっき言ったとおり、最近僕は嫁さんが家で使うためのDellのコンピュータを買ったんだけど、そいつがMicrosoft.comに行ってIDを照合し戻ってくるまでにかかったのは、文字通り数秒だったよ。

で、僕が思うに今後Linux界、あるいはなんと言うかな、ディストリビューション界において、コミュニティから商用へのアプローチのような、絶え間ない進化が起こるのを目にすることになるだろうと思う。なぜかというと、Debianとかそういったものは、お望みなら百万台のマシンにインストールしたって全然かまわない。でも、Linuxディストリビュータに関することが商用性を帯びるにしたがって、同様のプロセスが定着するのを目にすることになるだろう。それは、サポートモデルを提供できるようユーザーを照合するための、唯一の方法だからね。

Roblimo: で、Linuxのサポートには登録が必要だ、と言っているわけだね。

Martin: ええと、僕は、我らがSlashdot読者にもいるような積極的なLinuxユーザーじゃない。でもここで僕の運用してるサーバや、僕の運用してるデスクトップについていえば、Red Hatサポート契約を結ぶためにはRed Hatに登録する必要があるんだ。

Roblimo: それはいいとして、皆が皆Red Hatを使うわけじゃない。

Martin: いや… 僕が話を聞いた商用の顧客のほとんどは主としてRed HatやSuSEを、商用顧客向けディストリビューション扱いで使ってたよ。

いかなる用途にも適合するものではない?

Roblimo: ふむ… それじゃこれを訊くとしよう。質問はあと2つあって、長いのはこれが最後だ。寄せてくれたのはJimmytheGeek… (笑い)

Martin: もうそれだけで不安になるよ。

Roblimo: 彼はSlashdotユーザー180805番、ちょっとした古株だね。彼曰く、「Windowsにまつわる俗信の一つは、組織に衝撃を与えるような欠陥があっても、その責任を負わせることのできる会社が背後についている、というものだ。」 続けて、「しかしEULAつまりエンドユーザー許諾契約を読んでみると、どのMicrosoft製品のものでも、アップデートのものでさえ、いかなる責任も負わないことが謳われている。具体的にいうと、いかなる用途にも適合するものではない、とそれらは明言している。これは一体どういうことなんだ?」

Martin: あー、こいつはどこでも話題になってる、どこでも持っている懸念だね。確かに、このJimmyからの質問も昨晩読んだ覚えがある。

Roblimo: 僕はEULAを読んでるよ。僕ぐらいだろうね、インストールしたあらゆるソフトウェアの許諾契約を一つ残らず読んでるのは。

Martin: 同じく大量のEULAを読んでいる法務担当が、うちには何人かいるよ。

Roblimo: そいつらもどうかしてるね…

Martin: (笑い)それはともかく、いくつか指摘しておこう。なによりもまず、僕らが説明責任の類とその背景について述べるとき、時間をかけて言及する事柄がいくつかある。一つは、商用の顧客を対象とするもので、その観点つまり一般的なサポートの観点から、これこれのレベルの達成目標やこれこれのレベルの担当責任、そういった類のものを現時点でいかにして示すことができるか、そしてそれがいかに機能するか、というものだ。つまり、Red HatでもIBMでも、NovellでさえSuSEに関して、責任を限定的にせざるを得ないというのは承知してもらえるだろう。というのは結局のところ、カーネルは彼らのものじゃなく、2.6に何が採用されて何が採用されないのかの最終決定を下すのは、彼らじゃないから…

Roblimo: いや、彼らは望むままに、どんなふうにでも改変することができるよ。

Martin: いや、もちろん彼らが改変する場合、ユーザーは違うツリーの違うパスだかフォークだかに位置していることになるかもしれないし、そうであってもおかしくない。でも基本的には、彼らの行った改変のレベルが彼らの基準点となる。その場合の要点は「担当責任のレベルを、我々に扱える最大限にまで引き上げました」ということになるね。

説明責任の問題で持ち上がってくるより大きな問題は、この補償と保護の意向にまつわるものだ。この意向というのはつまり「弊社のすべての顧客に以下を約束します。特許、著作権、企業秘密などの、ITの観点からの問題がある場合...」というようなものなんだけど、Microsoftは皆さんを相当丁重に扱っているし、その範囲をうちの通常のEULAに含まれてなかったあらゆるエンドユーザーにまで広げている。11月付けでその変更もおこなった――EULAがまさにエンドユーザー許諾契約といえるものになるように。そしてそれは、多くの説明責任が関わってくる問題だと思う。しかしベンダ、ディストリビュータ、ソフトウェアプロバイダが彼らのソフトウェアを使っている顧客を、いかにして全面的に保護し補償するかというのは…

Roblimo: 僕らが訊こうとしている質問は、そういう内容じゃないと思うよ。彼が言ってるのはつまり、全部読んでもいいけど… 「オープンソースライセンスにもたいてい同じことが書いてあるが、それらは概して、無償の製品だ。君らは何千億と手中にしている。加えて、僕らはコードを好きなように使える。君らは等価となる類のものを明言できない。」 それで、彼が話題にしているのはただ一点、重大で紛れもない事実だと思うんだ――それらのEULAにおいてMicrosoftは基本的に、ソフトウェアが何らかの特定用途に適合する、あるいは機能すると、明言していない。

Martin: あー、僕たちがまったく… 機能しないとは思わないけど。よくわからないな…

Roblimo: いや、いかなる所定の用途に対しても。

Martin: ちょっと待ちなよRob、こいつは広範囲に見られるものじゃないか。Red HatのEULAを読んでみたらRed Hatはちゃんと書いてるはずだよ、「我々は、ソフトウェアに関わるあらゆることを保証できるわけではありません」とかなんとか。僕だって読んでるんだよ、彼らの書面にした声明を。これは同じことさ、だろ?

Roblimo: Linuxにもいろいろあるし、ひょっとすると僕が使うのとは違うかもね…

Martin: そうさ。思うに、どんなソフトウェアプロバイダにしたって、君がしたいと思うありとあらゆることを一つ残らず実現できますなんて、断言するのは不可能だ。だろ?

Roblimo: うむむむ、そうか、でもこれまでずっと娯楽としての部分もあったわけだし。君が笑わずにはいられないような…

Martin: そりゃ結構だよ、それで楽しめる人もいるってのは結構なことさ。でも要点をまとめるなら結局のところ、繰り返すけど、「我が社の製品は、あなたがしたいと思うことをなんでも実現できます。どうぞお試しください」と言えるソフトウェアプロバイダなんて、聞いたことがないよ。

Roblimo: たいていの製品には黙示の適合性というものがあるね。僕がジープ・チェロキーを買いに行った場合――持ってんだけど――それが売り物であることにより、FTC(連邦取引委員会)がそれらに施行している、黙示の事実があるように… また別の政府機関はそれらに対して、路上での走行が安全であると導かれるように、あるいはある程度満たすように施行している。なにも酔っ払ってシートベルトもしないで時速120マイルで飛ばしても安全だということじゃなくて、ものが輸送機関だけに、その用途に応じた適合性がある。

Martin: そうだね。

Roblimo: それで話を戻すと、これもそういったもので、ソフトウェア業界がその全般にわたって取り組む必要があるかもしれない。これについてはどうだろう?

Martin: ああ、実際僕は、これに着手するよう仕向けたいと思ってるんだ。これはMicrosoft固有の問題じゃない。僕らが他の商用ソフトウェアプロバイダからかけ離れた存在だとは思わないしね。で、そのことに関して、僕たちは他の者よりもちょっかい出されやすい、ということなんだろう。そうは言っても…

Googleはアホか?

Roblimo: 最後の質問は、君が初めのほうで触れたことに関係するものだ… Augustz――末尾は「Z」――は、かなり単刀直入に訊いている。「WindowsはLinuxよりもTCOが極めて低いとすると、Googleはアホか?」 彼が言及しているのはMicrosoftの広告や「Get the Facts」の文献だ。「Linuxを使ってるGoogleの連中はアホなのか? 彼らは数多くのコンピュータを使っているし、TCOは彼らの環境において重要なはずだ。」

Martin: あれは僕に言わせればニッチ環境とでも呼ぶべきものの一つなんだが、個人的に言わせてもらうと… ええと、正直に言おう。皆さんのいる平均的な営利企業が、Googleエンジンを動かすのにGoogleが必要としているスタッフを雇うことはないだろう。つまり彼らは、非常に特殊な業務をこなすために、最上級といってもよい技術に長けた人を大量に雇っている。そしてその観点から彼らは、皆さんのところの一般的なITシナリオとは大幅に異なっている。大部分の企業、つまり僕が話し合いを持った大部分の企業はテクノロジー企業ではない、というのが前提としてあるけど、彼らは、非常に大勢の人を雇って大量のサーバを運用することで事業を成り立たせてるわけじゃないんだ。彼らがなにを事業としているかといえば、つまり… 航空会社なら、皆に飛行機に乗ってもらうことだ。清涼飲料の会社なら、皆に飲んでもらうことだ。Slashdotのような報道の会社なら、皆にニュースを読んでもらうことだ。で、彼らはいざとなればいつでも環境の複雑性を解消することができるし、それを管理・保守するのに人を雇う必要はなく、それは彼らにとって良いことなんだ。それで繰り返しになるけど、汎用性の高いシナリオに基づくものにどれだけ最適化されているか、という点から考えれば、あれは別種の運用シナリオだと言えるだろう。

僕は「なんだこりゃ、どうかしてるよ、こんなことやってたら彼らにかかる所有コストはとんでもなく高くなる」なんて言ったりはしないよ。「Windowsサーバに切り替えれば彼らのTCOは半減するだろうに」などと言いふらしたりもしない。前にも言ったように、僕たちが総所有コストを考えるとき、それはソリューション次第、シナリオ次第なんだ――モノがなんであるか、どのような人が関わるかをすべて十把一絡げにするような話じゃないんだよ。

Get the Factsを語る

Roblimo: 僕が予定していた質問はこれですべてだ。訊くべきなのに入れ忘れたものはあったかな?

Martin: いや、昨晩読んでたんで言うんだけど、とてもじゃないけどおおっぴらに話せそうにないのが、いくつかあったな。だって…(両者笑い)良い内容だったけどね。でも彼らの名前とメールアドレスは控えといたから、回答はできる。それで、あの「Get the Facts」全般にまつわるものがいくつかあったし、もしよければ、締めくくりにそれについて少し話したいんだけども。

Roblimo: もちろんだ。

Martin: 僕がなぜやっているか、何をやっているか、どのようにやっているかといったことを、ちょっとさかのぼってお話したい。僕が参加したとき、これについてちょっと調べてみようとしたんだけど、Slashdotやその他のものを読んで、面食らってしまったよ… Microsoftはこうじゃないとか、Linuxはこうだとかいうことについて、皆がなんと攻撃的になっているか、にね。でもそれは(たいてい)「一度これをやった、これこれの理由で、優れてる/良い/悪いのは、こちら/両方/どちらでもない」というような一事例に立脚するものだったり、一定レベルのデータセットには少しも立脚していないものに過ぎなかったり。

だから僕からすれば大きな一押しが欲しかったし、それはただ事実を知ること、つまり「こいつを感情的・攻撃的な議論から引っぱり出して、より実践的・実利的な議論に基づくものにして行かないとまずいんじゃないか」と言うことだったんだ。実際僕だって顧客からそう言われたしね。

僕は経験豊富な技術屋じゃないし、百戦錬磨の業界人じゃない。どちらかというと僕は顧客と話し合いを持つことに時間をかけて、僕が行う作業を彼らの要求に基づいて構築することに努めてきた。顧客の要求は「我々がしているこの業務でこのシナリオの場合、Windows対LinuxでTCOがどうなるかを私にも解かるようにしてくれないか? どちらの技術を… これとあれについて、解かりやすく…」というもので、僕たちの仕事はそういうことなんだ。

だから詳しく読んでみると、君も読んだとは思うけども一応言っておくと、僕たちはMicrosoftに100%味方してるわけじゃない。Linuxが優れている理由を述べている部分があるし、僕たちの古い調査になるけど、ウェブ作業負荷においてLinuxとApacheがIIS 5.0よりも優れたTCOをもたらす理由を述べている部分もある。で、資料は開示されているし、僕はその類のもの全てを可能な限り透明にしようと努めている。さっきも別の会社について話したけど、僕は別の会社を使って人を雇い、Microsoftが雇っていると彼らエンジニアが知ることで調査にバイアスがかかるのを一切避けたかったから、サードパーティに彼らを雇わせていたんだ。そしてもちろん、ひとたび全てが完了したら全て透明にしているし、サーバの設定、誰を雇ったか、一体どのように機能するものなのか、そういった全てについて確かめることができる。だけどそれは、透明性を深いレベルまで提供しようと努めてのものなんだ。

しかし繰り返すけど、僕が話したものに関して、僕が雇っていたことで彼らにバイアスがかかるというのは、絶対に避けたかった。だから、そういったことに僕たちがバイアスをかけず、彼らが可能な限り実利的であるよう万全を期すため、僕たちはかなり手を尽くしていたんだ。そんなわけで、それが話題に上ると世間からは、それは僕たちが請け負うべきことだと思われてしまう… 顧客からいつも言われてて、それには時間をかけているんだけど、僕はこれからもSlashdotを読んでいくつもりだし、これにまつわる記事や課題が投稿されたら、その議論や課題の中には僕たちが引き受けるものも出てくると思うよ。

Roblimo: こうしてはどうかな、この際募集してみるのもいいと思うんだけども。これが掲載されたら、そこで議論になるだろう。Slashdotログインは持ってるかい?

Martin: Slashdotログインは持ってないんだ、申しわけなく思ってんだけど。で、今夜にも取ろうかと思う。いくらか金がかかるんだっけ?

Roblimo: Debian Linuxと僕のデスクトップにある全ソフトウェアと同じくらい要るよ。

Martin: そりゃ結構な大金だなあ、僕に工面していけるかどうかわかんないけど…(笑い)

Roblimo: あっいやいや、今のは忘れてくれ。大丈夫だよ(笑い) 要するに、一銭もかからないよ。

Martin: 了解。じゃあ今夜Slashdotアカウントを取ろう。

Roblimo: 議論に飛び込んでもらうのも大歓迎だよ。君の参加は大いに価値があると思う。

Martin: そうだね。

Roblimo: では、時間を取ってくれて本当にありがとう。おかげさまで上手くいったよ。

Martin: こちらこそRob、どうもありがとう。それと、これをやるのに時間が経ってしまって申しわけない。そのうちまたやれるといいね、どうだい?

Roblimo: いいね。

Martin: ありがとう。それじゃ。

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  • イマイチ (スコア:1, 興味深い)

    by Anonymous Coward on 2006年04月27日 11時23分 (#929340)
    まず気になったのは「スパイウェア製品」という言葉。これは「アンチスパイウェア製品」だよね。
    たまに見かける「ウィルスソフト」と同じくらいのミス。

    総じてMartinの方が一枚上手か。
    もう少し突っ込んで欲しいと思うところをうまく丸め込んでいる。
    電話を介したのがまずかったのか、インタビュアーの能力か。

    FOSS・LinuxへのFUDについての意見が興味深い。
    「過去のは理解不足による過ちで、未知に対する感情的な反応である」と読めるが、どうだろう。
    「今後はもっとスマートにやるよ」ってことなのかもしれない。
    • by tetsuya (11853) on 2006年04月27日 20時29分 (#929677) 日記
      先ずはairheadさんお疲れ様でした。これだけ冗長なやりとりのある文章を訳すのは大変だったと思います。

      で、
      FOSS・LinuxへのFUDについての意見が興味深い。
      「過去のは理解不足による過ちで、未知に対する感情的な反応である」と読めるが、どうだろう。
      「今後はもっとスマートにやるよ」ってことなのかもしれない。
      要するに普通のことをしているんですね。過去にはLinuxの台頭に過敏に反応して大騒ぎをしたけど今では冷静にその実力を計り終わって、その分析したデータを使って自社製品の有利な点をきっちり強調して宣伝に使おうとしている。

      失敗して、反省して、対策を立てて、行動しているってことでしょう。どんな会社でもこういうことってありますよね?MSの場合その声の大きさも、世界に与える影響も破格にでかいからみんなが迷惑がっていうか、多方面に波紋を投げかけまくることになるのが問題ですが。

      もう一つの感想としては、巨大企業になってからのMSって先見の明には恵まれていないけど、金と人のリソースは桁違いにあるから力業で方向修正出来ちゃうんですよね。そういう軌道修正の力というかPDCAをきちんと回せる正攻法の力は、さすがに強いと思います。
      親コメント
    • Re:イマイチ (スコア:2, 参考になる)

      by airhead (13423) on 2006年04月27日 22時59分 (#929792) ホームページ 日記

      EULA関係でRoblimoが軌道修正している部分があるけど、ここはもう少し突っ込んで欲しいと思いました。

      2003年春頃からSCOは、LinuxカーネルがSCOの知的財産を侵害していると主張し、それに関与したとしてIBMなどを訴えだしました。それだけに留まらず、Linuxを利用している企業に対して使用料請求をちらつかせていました。下記はLinux陣営各社の対応に関する記事。
      「SCO対策のユーザー免責保証は不要」、IBMが明言 [itmedia.co.jp] (ITmedia)

      Martinの言う顧客保護というのは要するに、それと同じ事態があっても補償しますよ、ということでしょう。(2004年)11月付けでの変更について詳しくは、下記の記事後半を。
      Internet Week 2004 - マイクロソフトからみたオープンソースとは? [mycom.co.jp] (MYCOM PC WEB)

      事前に「SCOの話はナシ」という取り決めがあったのかもしれないけど、「ソフトウェア開発における法的リスク」「利用者を訴えること自体が筋違いじゃないか」という線でMicrosoftの見解を引き出してもよかったんじゃないかと思います。

      # お互い遠慮があるのかもしれないけど、なんだか狐と狸、という感じもする。

      # どう見てもエスパーです 本当に > #929349

      親コメント
    • Re:イマイチ (スコア:1, 参考になる)

      by Anonymous Coward on 2006年04月27日 21時22分 (#929704)
      「スパイウェア技術、いや対スパイウェア技術って言うべきかな、」(原文では
      "The spyware technology or the anti-spyware technology, I should say,")
      という発言からして、ミスではなく語弊があることを承知で言っているのでしょう。
      親コメント
    • by Anonymous Coward
      ミスと呼べるほどじゃないでしょうに。
      「スパイウェア製品=スパイウェアを仕込んでくる製品」とも解釈できるけど、
      それはあまり常識的な解釈じゃないよね。話の流れからしてもそう。
      言わんとするところが通じるなら問題ないでしょ。
      • by Anonymous Coward
        > 言わんとするところが通じるなら問題ないでしょ。

        通じる通じないは問題ではない。
        そんなことも分からんのか。
        # コンパイルが通って動けばいい主義?
        • by Anonymous Coward
          コンパイルすら通らないと思うけど
        • by Anonymous Coward
          お前も人間なら類推能力を働かせたらどうなんだ。

          コンパイラ並みに融通がきかないのって人間としてどうかと……
        • by Anonymous Coward
          ま,これは電話での会話をテキストに起こしたものでしょ?
          生の声っぽくていいんじゃない?
  • by uuuss (29017) <uuussatm@gmail.com> on 2006年04月27日 11時36分 (#929349)
    長いよw
  • Get the Facts (スコア:1, 興味深い)

    by Anonymous Coward on 2006年04月27日 12時20分 (#929385)
    最高級の技術者を必要としない案件でのコスト比較に、一流のLinuxデベロッパー/アーキテクトを雇用した場合のコストを用いたという事か
    • by Anonymous Coward on 2006年04月27日 14時34分 (#929492)
      Linuxの管理がそこそこできる人

      てな募集でくる人のスキルって何で評価すればいいんだろ?

      WindowsだったらActiveDirectoryの構築をやったこと
      とか考えるけど、LAMP程度だとそれってスキルとして評価できるのか?とか・・・
      親コメント
      • by suzushiro (30819) on 2006年04月28日 1時59分 (#929868)
        OSスキルとは切り離した方が良いんじゃないかな? > ActiveDirectoryやAMP

        管理にはActiveDirectoryを使うが、メールサーバにはPostfixやsendmail、
        あるいはファイルサーバにはSambaを使いたいというケースもあるだろうし、
        WindowsサーバでAMPを動かす奇特な案件(WAMP?)もあるかもしれないし。

        大体、条件が「Linuxの管理ができる」や「Windowsの管理ができる」では漠然としすぎて、
        応募する方も困るんではw?
        親コメント
    • by Anonymous Coward
      Linux には一流デベロッパーしかいないということでFA?
  • by Anonymous Coward on 2006年04月27日 13時49分 (#929455)
    FOSSってはじめてみた…orz
    本家Wikipediaだと載ってるんだね。
    でも、わざわざFと断わらないといけないOSSって変だと思わないか?
    そもそもFSWの代替がOSSなわけだからデフォルトがFOSSの筈。
    よって断わるならPOSSとかCOSSだと思うのだけど。
    • Re:正直言って (スコア:2, 参考になる)

      by Anonymous Coward on 2006年04月27日 14時49分 (#929505)
      勘違いしてない?
      FOSS = "Free Software" + "Open Source Software"
      だよ。
      "FreeなOpen Source Software"じゃないよ。
      親コメント
      • Re:正直言って (スコア:1, 参考になる)

        by Anonymous Coward on 2006年04月27日 14時55分 (#929508)
        FOSSをはじめて見るくらいだから、Free Software と Open Source Software の違いは知らないんでしょ。

        ちなみに FLOSS という言い方もあって、この F と L は同じこと。
        親コメント
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UNIXはシンプルである。必要なのはそのシンプルさを理解する素質だけである -- Dennis Ritchie

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