共生体部門より。
Anonymous Coward曰く、"今週のNatureに「The ring of life provides evidence for a genome fusion origin of eukaryotes”(進化:『生命の環』は真核生物がゲノム融合でできたことを示す証拠となる)」(全文閲覧には要登録)という論文が掲載されている。
高校の教科書にも取り上げられていた(今もそうかは知らないが) Lynn Margulisの「共生説」の通り、真核生物は複数の原核生物が融合して誕生し、細胞小器官のいくつかは元々は別の原核生物だったとされているが、これまでは遺伝子解析の結果からはどの生物とどの生物が融合したのかははっきり分かっていなかった。これは、従来の分子系統解析の方法が、「樹」状の系統関係を仮定したものであったことから、ゲノムの融合を上手く解釈することができなかったからだと思う。
今回、この論文の著者たちは「ゲノム融合や遺伝子の水平転移が起きていても系統関係を推定可能な手法」を用いて原核生物と真核生物の全ゲノム配列を元に系統関係を推定し、それが「環」状になることから、真核生物のゲノムは複数の原核生物のゲノムが融合してできたのだと述べている。
今後も解析手法とデータ蓄積の進歩から生物の系統関係が明らかになっていき、地質記録から得られた知見との統合により生命の進化史が徐々に明らかになっていくだろう。"
高校時代は遊んでばかりだったので (スコア:1)
生物進化の歴史から言えば (スコア:3, 参考になる)
まず、生物には酸素が好きな好気呼吸と、
酸素が嫌いで硝酸あるいは硫酸で行う
嫌気呼吸があります。
38~40億年程前のLUCA(すべての生物のもっとも最近の共通の祖先)
は、弱いレベルながらも好気呼吸を行っていたと見られます。
●酸素発生
35億年程前の化石にあるシアノバクテリア(ラン藻類)が、光合成による
酸素発生を行うようになりました。
ただ26~18億年前の間、酸素は出るそばから岩石に奪われ、
特に海洋に豊富に存在した溶解性の二価鉄Fe2+を不溶性のFe3+になり、
現在の鉄鉱床になり鉄文化を構成ました。
同時に27億年ぐらい前には、海水中の硫黄Sを酸化し硫酸SO4_2-になり
硫酸還元バクテリア(嫌気性)が活動するようになりました。
●細胞内共生の始まり
27~22億年前、以上の流れで出てきた原核生物「アーキア」「バクテリア」
「シアノバクテリア」の3種類がありました。これらは遺伝子レベルでは、
大きく違い、アーキアとバクテリアの縁遠さから見れば、人間と酵母菌は親戚に
なってしまうぐらい違います。
それ程違うもの同士が22億年前一緒になってひとつの細胞内で共同生活を
始めたのが真核生物の起源だといわれています(細胞共生進化説)。
アーキアが細胞核、好気性バクテリアがミトコンドリア、シアノバクテリアが
葉緑体になったと考えられます。
ミトコンドリアは今でこそATPという「高エネルギー物質」を作り出す目的で
いて「有機物+酸素=エネルギー」を担っています。しかしミトコンドリア祖先が
大型の嫌気細胞に好まれ飲み込また原因は、その酸素除去能力だといわれています。
一方は、宿と栄養を供給し、他方は酸素毒性に対するボディガードを努める共生関係です。
予断ですが、このミトコンドリアの好気呼吸とATP生産能力の共役により
極めて高効率のATP生産力獲得しました。これにより真核細胞に
代謝エネルギーの余剰を生じさせ、動物ではコラーゲン、植物ではリグニンの
発明とともに、単細胞から多細胞化へ「進化の大爆発」を生んだ布石になります。
参考文献
生命の星・エウロパ、長沼毅、NHKブックス
親コメント
Re:細胞内共生 (スコア:2, 参考になる)
> それぞれがひとつの細胞内で共生するための,
> 共通のインターフェースのようなものはどうやってできたのでしょうか?
タレコミのリンク先細胞内共生説 [wikipedia.org]によれば、
ミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官はその形態から
共生由来ではないかとする考えが古くからあったが証拠はなかった。
その後、これらの細胞小器官を囲む生体膜は二重であることが明らかとなり、
好気性細菌や藍藻が細胞外から取り込まれそれらの膜が残ったと
考えればそれらの機能からも説明しやすいことから、この説が提唱された。
さらにこれら細胞小器官は独自のDNAを持ち、転写・翻訳機構が
原核生物に類似する、またより新しい時代に藍藻が細胞内共生したと
考えられる生物も存在する、といった証拠から支持者が増加し、
現在では定説に近い。
とあります。
なぜそうなっているのか、そこに人間という知的高等生物が居るから
・・という、いわゆる人間原理的で、嫌いなんですが^^;
現在判っている範囲では、これが限界なのではないでしょうか
もしSassyOS2さんが、新しい仮説を立てて、それを裏付ける
研究結果があれば、それは新しい定説になっていくのだと思います
親コメント
論文を読んでみました (スコア:1)
> これは、従来の分子系統解析の方法が、「樹」状の系統関係を仮定したも
> のであったことから、ゲノムの融合を上手く解釈することができなかった
> からだと思う。
今回の手法も「樹」状の系統関係を使用しています.
ただ,ちょっと操作的なのですが,ある閾値以上の確率で複数の支持される
「樹」が複数ある場合,その「樹」を重ね合わせるという操作を行うとして
います.
その重ね合わせをつじつまあわせすると「環」ができあがるという仕組みで
す.
つまり,閾値を上げるとただの樹になり,下げすぎるとつじつまが合わなく
なってしまうので,本当に有効な手法かどうかは・・・
手法自体は
Lake and Rivera, Mol. Biol. Evol. 21(4):681-690. 2004
に書いてあって,私もちゃんと理解したわけではありませんが,これまでは
塩基配列のACGTが二つの生物でどう変わったかを比べて二つの種の距離を計
算して系統関係を導きだしていましたが,その方法だと単一の遺伝子を見て
いるだけならいいのですが,複数の遺伝子でそれぞれに系統関係を計算する
と矛盾する結果がでることが(よく)ありました.
これは人とチンパンジーとゴリラの間ですらあったように思いますが,バク
テリアのレベルではこのような現象はバクテリア同士での遺伝子の交換(水
平移行)の寄与が大きいとされています.
従来の方法は同じ遺伝子が祖先から受け継がれてきて徐々に変化して行くモ
デルだったため,このような「突然外からやってくる」遺伝子まで入れた系
統関係を把握することができませんでした.
そのため著者らがとったのは塩基配列だけではなく,ある生物の遺伝子をみ
たときに他の生物でその遺伝子に相当する遺伝子があるかないかを2つの記
号の配列に換算して,DNAの配列と同じように計算するという手法です.
もうここまで言うと何のことやら,となると思いますが,私の印象としては
「新しい手法により今日正接が補強された」というよりも「既に受け入れら
れている共生説が自説で再現できることを示した」仕事だと思いました.
kaho
エントロピーは保存則の内側に有る (スコア:1)
どこかでエントロピーが増大する(エネルギーを放出して安定になる)と
どこかでエントロピーが減少する(エネルギーを吸収して不安定になる)
意外と、地熱と太陽熱というエントロピー源のある環境では
生命体のような、エントロピーの低い構造物ができる必然が
あるのかもしれない。
(自分の生きた恥を残せ)