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16705 story

ヒトの体細胞から万能細胞がつくられる 38

ストーリー by yosuke
ヒトクローンの必要性が1つ減る 部門より

teratera 曰く、

朝日新聞の記事によると、京都大学再生医学研究所の山中教授のチームがヒトの皮膚細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)をつくりだすことに成功したとのこと。論文は21日付けのCellに掲載される。
これまで、万能細胞で機能している遺伝子の一部がOFFにされるために、体細胞は万能細胞ほど分化能を持たないと考えられてきた。今回の報告では、万能細胞化に必要と考えられる4つの遺伝子を導入・培養することで万能細胞化に成功した。実際に、つくられた万能細胞から中胚葉系組織である軟骨と外胚葉系組織である神経細胞の分化が確認されており、多分化能を有していることが確認されている。
これまで、万能細胞と言えば胚性幹細胞(ES cell)を指し、文字通り『胚(受精卵)』からつくる必要があったために、その倫理性が問題となっていた。そのため、体性幹細胞を採取し分化させる方法も検討されていたが、組織ごとに存在すると考えられる体性幹細胞の採取・培養・分化技術の確立が困難であった。体細胞から万能細胞がつくられるようになったことで、倫理的問題の解消と再生医療技術の発展が期待される。

昨年8月に発表したマウスでの成果を発展させた研究となる。なお、ウィスコンシン大のジェームズ・トムソンらも同様の成果を22日付のScienceで発表する。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by Anonymous Coward on 2007年11月21日 18時54分 (#1253714)
    はやく、俺の毛根の量産体制に入ってくれ!
  • by yasiyasi (5450) on 2007年11月21日 9時00分 (#1253267)
     昨年8月に京大グループが発表した手法を元にして,ウィスコンシン大など複数の研究グループが新たな成果を生み出せたようだから,これは,韓国の黄教授の研究成果よりも信頼度は格段に高いと判断してよいのでしょうか?

     韓国では,黄教授の成果に国家を挙げてのめりこんで,やっぱり捏造だったため嘲笑されましたが,逆に,日本だと,どんなに信頼度が高く経済効果も望める成果を挙げても国家が乗り出さず,とんびに油揚げさらわれる結果になって嘲笑されるんじゃないかという予感が。
    • >これは,韓国の黄教授の研究成果よりも信頼度は格段に高いと判断してよいのでしょうか?

      まず,今回の手法は以前捏造問題のあったES細胞の論文とは全く原理・手法が異なります.
      件の研究(とされていたもの)はヒトの体細胞から染色体を取り出して,あらかじめ染色体を
      取り除いた未受精卵に注入するという方法でした.これはドリーなどでも使われてた,
      方法論的には古典的なものです.
      先日アカゲザルでこの方法を用いることができるようになったという研究が出て,おそらく
      ヒトでも使えるだろうという見込みがたったところです.(逆に言えば例の研究は本当であれば
      世界の幹細胞研究を4−5年先を行くほどのものだったので画期的だと思われたわけです)

      この従来型の方法の問題はヒトの未受精卵が必要だということで,ドナーの体にも負担が
      かかるし数もそう集められないしという原理的な問題があります.
      京大のグループの研究のすばらしい点は,通常細胞に4種の遺伝子を含むウイルスを感染
      させることで未受精卵を使わなくても万能に近い細胞を作り出せるという点にあります.
      一方でタレ込み文にもあるようにまだ課題があり,c-Mycが含まれているために特定の器官で
      ガン化を引き起こすことがマウスでわかっており,治療に使うまでにはいくつかハードルを
      越えなければならないということでした.
      マウスでは「よい状態の細胞を選別する」「最初に使う細胞の種類を変える」という2方向から
      改善を図っており,かなり近づいてはいるそうですが,まだ改良が必要だということです.
      --
      kaho
      親コメント
      • by pmjames (29210) on 2007年11月22日 0時05分 (#1253853) 日記
        > マウスでは「よい状態の細胞を選別する」「最初に使う細胞の種類を変える」という2方向から
        > 改善を図っており,かなり近づいてはいるそうですが,まだ改良が必要だということです.

        原著の一部を読みましたが、むしろそこから離れているところも驚くべきことなんですね。
        レトロウイルスベクターの感染効率向上のために少し細工をしていますが、結局「目で見てESっぽいコロニーを拾ってみたらiPSが出来ていた」ということなので。

        去年のCellに出たFbx15での選別からNanog(言うまでもなく山中先生が発見した遺伝子ですが、結局「山中ファクター」には含まれていないんですよね)での選別にかえたら生殖系列に乗った、というのが今年のnatureだったので、「同じ遺伝子を入れているのに、選別方法で性質が変わるとしたら、その差は何なのだ?」とか、「ヒトじゃトランスジェニックで選別するわけにはいかないが、どうするつもりだ?」というのが課題だった訳です。

        ヒトでやってるのはいわば公然の秘密だったので、テレビで山中先生を見た瞬間に「あ、できたのね」としか思いませんでしたが、内容はやはり驚くべきものだと思います。
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    • by Dosa (17200) on 2007年11月21日 19時28分 (#1253729) 日記
      >成果を挙げても国家が乗り出さず,とんびに油揚げさらわれる結果に

      これ [ucsf.edu]とかこれ [nikkeibp.co.jp]とかを読んでいると、とんびに油揚げどころか、豆腐屋ごとさらわれそうな苛立ちをおぼえます。

      現時点ではあくまでも客員として毎月往復しているだけだし彼のチームも京都にいますが国内の支援体制が整わなければチームごと頭脳流出という可能性もなくはない。
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    • ES細胞絡みでは研究に支援をする法案に対し倫理的な観点より拒否権を発動した大統領ですから、それが無くなるに等しい今回の発表は(少なくとも素人目には)米政府が支持しない理由が無くなったように見えます。
  • by Anonymous Coward on 2007年11月21日 9時23分 (#1253278)
    読売新聞の記事 [yomiuri.co.jp]によると、組み込んだ遺伝子の内、一つは癌遺伝子なので移植後に癌化しないようにする工夫が課題であるとも報じています。

    アメリカのチームは4つのうち2個違う遺伝子とのことですが、癌遺伝子はどちらなんでしょうね?
    • 念のため (スコア:3, 参考になる)

      by suzushiro (30819) on 2007年11月21日 9時44分 (#1253294)
      癌遺伝子とは、正常な状態では細胞の機能に重要な役割を果たす遺伝子で、
      だからこそ壊れると癌を誘発してしまう物です。

      決して「癌を起こすための遺伝子」ではないので、正常な癌遺伝子であれば、
      的が増えてしまう事以外に問題は無いと思います。
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      • Re:念のため (スコア:5, 参考になる)

        by Anonymous Coward on 2007年11月21日 10時07分 (#1253312)
        んー、書き方が紛らわしいのか、そもそもごっちゃにして覚えてるのか。その書き方ではいけません。
        どっちかというとそれは、p53に代表される癌抑制遺伝子の特徴の書き方です>「壊れると癌を誘発」

        とても大雑把に言うと、基本的に癌の原因となりうるのは、癌遺伝子の機能亢進か、癌抑制遺伝子の機能欠損です。前者は宿主癌遺伝子の過剰発現や、機能を亢進する方向に遺伝子変異することのほか、一部の癌ではウイルス感染によってウイルス癌遺伝子(HPV E6E7とかHTLV-I taxとか)が作用することによって生じます。後者は遺伝子発現が抑制されることや、機能を失う方向への突然変異、またレトロウイルスが癌抑制遺伝子の途中に組み込まれることで潰れてしまうことも原因になります。

        ついでに、上のコメントに対しても反応しときますと、入れてる4種類の遺伝子は、Oct3/4, Sox2, c-Myc, Klf4。いずれも転写因子で、Oct3/4やSox2は、胚細胞に特異的とされる転写因子。c-Mycが癌遺伝子の中でももっとも良く知られたものの一つで、細胞増殖をコントロールしてます。Klf4は、癌に対して両面的な作用があって、多くの場合は癌抑制遺伝子として働きますが、一部の癌(乳がんなど)では癌遺伝子として作用します。
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        • by suzushiro (30819) on 2007年11月21日 10時33分 (#1253336)
          補足ありがとうございます。癌遺伝子というネーミングが「不必要な厄介な遺伝子」という
          誤解を与えがちな物であるため、なるべく単純に書いたつもりでした。
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      • Re:念のため (スコア:2, 参考になる)

        by Anonymous Coward on 2007年11月21日 12時19分 (#1253433)
        追加で指摘しておきますが、「正常な(宿主)癌遺伝子」であっても、遺伝子導入によって入れた細胞は癌化します(厳密に言うと、完全に「がん細胞になる」とは言えない部分はあるんだけど、少なくとも癌細胞に特有の表現型は強まるケースが多い……というか、そもそもそれが「癌遺伝子」である条件の一つ)。

        そういう面から言っても、c-Mycのような癌遺伝子を導入した細胞が「的が増えてしまう事以外に問題は無い」なんてことは、まったくありません。全部が全部癌細胞になってしまうわけではありませんし、部位によっても異なりますが、癌化のリスクは高いため、今後の改良点として考察されてるわけです。
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    • by Anonymous Coward on 2007年11月21日 9時43分 (#1253293)
      c-Mycでしょうかね。
      確信もてないけどここ [expasy.org]にはそんな感じで書いてあるような気がします。
      ・DISEASE: Overexpression of MYC is implicated in the etiology of a variety of hematopoietic tumors.
      論文 [cell.com](PDF)読めば書いてあるのかも。
      みんなトランスクリプトに直接関わってるみたいだから、どれもそのケはありそうですが。
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      • by Anonymous Coward on 2007年11月21日 23時10分 (#1253816)
        共同研究者の慶応の教授から聞きました。
        c-mycなど4つを導入しています。
        c-myc導入による癌化も制御可能だそうです(詳細は競争相手のMITなどにばれるといけないのでココでは書きません)
        大阪城の苔から取った化合物で研究成果を出して、兆規模の製薬メーカーを出し抜いた話など、
        色々と面白い話でした

        #神経線維を脳から脊髄まで描写できる等、MRIの進歩を感じました。
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    • by the.ACount (31144) on 2007年11月22日 13時03分 (#1254070)
      どっちにしろ、万能細胞自体、正しく分化させてやらないとガンになってしまうものだし、その方法は未だ謎だらけなんだから、道は遠い。
      --
      the.ACount
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  • 孫悟空の世界に入ってきたなぁ。
  • タレコみのタイトルでは、
    ヒトの体細胞から~
    としてしまっているので、まるで受精卵が人の細胞じゃないみたいだ。
    --
    偏っていないと宣言する人なんて信用できん
    • 受精卵は「体細胞」じゃないのでは?
      やはり生殖細胞のカテゴリで考えるほうが自然だと思います。
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      • すみません。「してしまっている」などと書いてはいけませんでしたね。
        タレコみの参照記事では
        人間の皮膚から~
        となっていて、細胞学の用語に疎い人でも「ああ、受精卵由来じゃないのね」ってすぐにわかるようになっているのに、なんでかえちゃったのかなというただの感想が妙なコメントになっちゃいました。

        #読み返してみても「体細胞って書くのは正しくない」って主張しているようにしか見えませんね。回線切って吊って来ないとかんか。
        --
        偏っていないと宣言する人なんて信用できん
        親コメント
  • by Anonymous Coward on 2007年11月22日 11時03分 (#1254010)
    >倫理的問題の解消と再生医療技術の発展が期待される。

    新しい倫理的問題が発生したんだと思う。
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普通のやつらの下を行け -- バッドノウハウ専門家

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