mhattaによる
2008年06月04日 12時00分の掲載
これからはヤクルトを毎日飲むか部門より。
これからはヤクルトを毎日飲むか部門より。
insiderman 曰く、
「善玉菌」などと呼ばれている特定のバクテリアを含む飲料を服用することで、花粉症の原因となる免疫反応を抑えることができたという実験結果が、イギリスの研究者によって発表されました(Rautersの記事、原論文)。
この発表を行ったのは、英ノリッジ食品研究所のClaudio Nicoletti氏ら。花粉症を患っている被験者にカゼイ菌を含む乳製品飲料を5か月に渡って毎日飲用させ、その血液を調査したところ、アレルギーを引き起こす抗体の数がカゼイ菌を服用していない被験者と比べて少ないレベルになる、という結果が得られたそうです。さらに、アレルギー反応を防ぐ役割を持つIgGと呼ばれる抗体の数はより増加していたそうで、これらの変化により花粉症の症状を低減することができるとのこと。
日本でもヨーグルトや乳製品が花粉症に効くという話はよく言われていますが、その効果が正しく実証されたということで、これを活用して花粉症の特効薬などができるとよいですね。
この議論は賞味期限が過ぎたので、保存されている。
新たにコメントを書くことはできない。
ヤクルト? (スコア:3, 興味深い)
もしかしてヤクルトの選手にはただでヤクルトが配られるのか?
って、ここでいう「カゼイ菌」とヤクルト菌(代田株)とは違う?
ペーストビン [windy.cx]
Re:ヤクルト? (スコア:4, 参考になる)
ヤクルトの乳酸菌とおんなじ物でしょう。
#よく知らないのですが、L・バチルスナントカ株まで厳密に書くものなんですか?
____
#風邪をひきました、脳が故障しています
#残念ながら仕様です。
親コメント
Re:ヤクルト? (スコア:5, 参考になる)
シロタ株は、いわゆるプロバイオティクス用として選別して作成した菌株なんで、通常に分離されるL. caseiとは性質が異なる部分がありますから、そう考えれば菌株名を書くことに理由は付けられます。ただまぁ、タイトルには付けない方がむしろgeneralな話として広げられるんだけどなぁ…という部分はありますけどね。
実は、わざわざ付けてるのは、ぶっちゃけて言うと宣伝的な意味があるというか。原報のAcknowledgementsにはちゃんと(というか)日本のヤクルト本社がスポンサーについてることが書かれてます。
なんか、こう言っちゃうと「企業&御用学者の研究発表か!」みたいに、穿った見方をする人もいるだろうとは思うんですけどね。ただまぁ、ヤクルトは起業時の経緯なんかもあって、日本や世界の腸内細菌研究の発展に貢献した企業なんですよね。特に、日本で医学微生物学を研究しているラボは、最近では感染症の危険性がまた見直されてるとは言え、一時期(それこそWHOによる天然痘撲滅宣言の影響などから)「もう必要ない学問」として研究費配分が大幅に減らされ、正直、存続できないような状況に立たされたわけでして。そのときに、ヤクルトなどからの助成金に救われたところも少なくなかったり…。まぁ何にせよ、日本の微生物学研究を支えてきたところだ、という点については動かしがたいものがあるところです。
親コメント
Re:ヤクルト? (スコア:3, 興味深い)
親コメント
特効薬作るよりも (スコア:3, すばらしい洞察)
杉や桧の花粉以外は低減されませんが、杉花粉による経済損失考えれば2年もあれば元取れると思うのですが。
患者数の算出は厚生労働省で経済損失の算出は経済産業省で実際に整備事業するのは農林水産省だから無理ですね、
じゃなくて、それをやらせるのが政治家ってモノじゃないんですかね?
整備する会社に政治家の親族送り込めばやるんでしょうか。
Re:特効薬作るよりも (スコア:2, 興味深い)
親コメント
Re:特効薬作るよりも (スコア:5, 興味深い)
2005年5月号の日経サイエンスに、腸内細菌叢のバランスを変えることでアレルギー体質を改善可能であるという研究結果が載ってましたので、まるっきりの嘘ではないでしょう。
親コメント
真っ先に思ったこと (スコア:2, 興味深い)
妖精哲学の三信
「だらしねぇ」という戒めの心、「歪みねぇ」という賛美の心、「仕方ない」という許容の心
Re:真っ先に思ったこと (スコア:2, 参考になる)
これにブタクサを含めると世界三大花粉症 [health.ne.jp]だとか.
# 一時期セイタカアワダチソウも間違えて花粉症の原因と言われてましたね.
親コメント
腸と鼻 (スコア:2, 参考になる)
Re:腸と鼻 (スコア:5, 興味深い)
いや、その「だけ」っていうことの方がよくわからんのですけどね。
一応、「鼻炎」というか、花粉症(その他、アトピー性皮膚炎とかのI型アレルギー全般を含む)に関しては、その根治療法につながることが期待されてる「Thバランス仮説」ってのがありまして。
そもそも花粉症などのアレルギー(I型アレルギーと分類される)がなぜ起きるのか、というと、花粉に含まれる何らかのタンパク質に対する抗体が血中にたくさん増えるから、です。この抗体は、そのタンパク質と結合するものなら、何でもそうなるのか、というとそういうことはなくて、抗体の中でも特にIgEと呼ばれるタイプのものが問題になります。IgEは、アレルギーを引き起こすようなタンパク質(アレルゲン)と結合する傍ら、もう片方では(抗体分子のFc領域)では、マスト細胞とか肥満細胞とか呼ばれる、血液中の細胞と結合します。IgEを介して、アレルゲンがマスト細胞と結合することで(正確には、マスト細胞表面に結合しているIgEに、アレルゲンが結合し、細胞表面のIgEが架橋されることで)、マスト細胞が活性化されて、その細胞内にある顆粒から、ヒスタミンなどの、いわゆるアレルギー物質(ケミカルメディエーター)が細胞外へと放出されます。これが、くしゃみとか鼻水とか痒みとか、花粉症の諸症状の直接の原因になるわけです。(なので、抗ヒスタミン薬とか、ケミカルメディエーター遊離抑制剤なんかを対症療法的に用います)
で、このマスト細胞の表面に結合するのは、確かに一部のIgGなども含まれますが、そのほとんどはIgEです。大部分のIgGやIgMなど、他のタイプの抗体は結合しません。またこういった抗体というのは、「抗体産生細胞」とか「形質細胞」とか呼ばれる、B細胞というリンパ球が分化して出来た細胞から産生されるのですが、最初の段階では、そのB細胞が「どのタイプの抗体」を作るか、というのは決まってません。ここがミソでして、B細胞が分化する過程で、「花粉と反応するIgG」を産生する細胞にたくさん分化していけば、その分「花粉と反応するIgE」を産生する細胞は減少する、というわけです(かなりおおざっぱな説明ですけど)。
じゃあ、このB細胞の分化をコントロールしてるのは何かというと、それはサイトカインと呼ばれるタンパク質群です。サイトカインは体内のいろんな細胞、特に免疫に関わる細胞が分泌するタンパク質で、非常にたくさんの種類があり、俗に「サイトカインネットワーク」と呼ばれるように、それぞれが複雑に相互作用しながら、互いにコントロールしあってます。が、これまた非常におおざっぱに言うと、インターフェロン(IFN)と呼ばれるものが、B細胞をIgG産生細胞に、インターロイキン4(IL4)がIgE産生細胞に、それぞれ分化させます。そして、これらのサイトカインを産生するものとして、前者はヘルパーT細胞のタイプ1 (Th1) 、後者はタイプ2 (Th2) が知られています。このどちらが優位に働いているかによって、B細胞の分化のバランスが変化し、それによって血中のIgE濃度が下がれば、I型アレルギーの「根治的な」治療につながるだろう、というのが、もう10年以上前から言われている、Th1/2バランス仮説というヤツです。
「でも、そんなこと可能なの」というのは、もっともな疑問だと思いますが、Thバランスが変化しうるだろうってこと自体には、一応裏付けがありまして。例えば、昔から医療用、実験用の抗体(抗血清)をウサギなんかに作らせるとき、抗原を吸着させて投与する「アジュバント」ってを利用するのですが、このアジュバントの種類によって、IgGとIgEのどちらを増やすかコントロールできることが知られてます。一般的に用いられるフロインド完全アジュバントは結核菌死菌成分と鉱物油からなりますが、これを用いるとIgGが増えやすくなるし、一方、水酸化アルミニウムゲル(アルミナ)を用いるとIgEを作りやすくなるなど、何らかの条件によって、できる抗体のタイプをコントロールすることは可能だと。また、寄生虫感染のときにはIgEが優位に増えてくることも知られてまして、そういう「体内に感染する微生物」の種類も、Th1/2バランスに影響するんじゃないか、と考えられてるわけです。
腸内細菌との関係について言うと、近年「腸管免疫」と呼ばれる免疫機構の解明も進んできてまして、消化管の内部に存在するものの一部がM細胞という腸管の細胞を介して、マクロファージなどに取り込まれ、それに対する免疫反応が起こりうるというメカニズムが判ってきてます。なので、腸内細菌叢の状態がTh1/2バランスにも影響しうる、というのは、まぁちょっとばかし飛躍しているとは言え、ありえないとも言い切れないくらいの考え方です。ただ、じゃあ腸内細菌叢がどうなったら、Th1優位になって花粉症が軽減するのか、また実際にはどれくらいの効果があるのかについては、まだ何の手がかりもなかったわけで。今回の研究は、実際のヒトでの研究結果として、その第一歩と言えるものだと言えます。
親コメント
Re:腸と鼻 (スコア:2, 興味深い)
んーと要するに、上で引用した意図というか、ツッコミどころはここなわけです。「善玉菌」というものが存在するということと、それが「健康にいい」ということ、この二つの前提が「ホントウにそうか?」ということ。
これを「ホントウにそうだ」というためには、医学的/科学的な立場から実証しないといけないわけですが、そうなると結局のところ、順序が逆であることに気付くはずなんです。例えば「乳酸菌を採ると○○の症状が緩和された」「△△の症状も緩和された」「××を発症するリスクが下がった」 → 「乳酸菌は健康にいい」 → 「乳酸菌は善玉である」、という具合でなきゃならないわけで。今回の報告ってのは、要するに、その「○○」に「花粉症」が入っただけの話です。で、乳酸菌が「健康にいい」とか「善玉」というのが、そもそも十分に実証されてるわけではありません(つーか、そういう医学的に曖昧な指標をどうやって定義し、測定するというのか、という問題があるわけです)。
「善玉」とか「体にいい」という考え方も、いわゆる「善悪二元論」というヤツで、とにかく分かりやすいのだけど、それが真実かどうかは判らないし、却って物事の本質を見誤ることがあります。そこを出発点にして議論するのは危険ってヤツです。
親コメント
腸よ鼻よと(Re:腸と鼻 (スコア:2, 興味深い)
Th1/2細胞は、そもそも血中のリンパ球(Tリンパ球)の一種です。ヘルパーT細胞、あるいはしばしば「免疫の司令塔」なんて喩えられることもあります。ヘルパーT細胞が産生するサイトカインが、免疫系の全体を左右すると言ってもいい存在なので、その作用はもちろん鼻を含めた全身に及びます。
#ただまぁ、だからといって「体が軽くなった!」とか「朝からしゃきっとする!」などのような、「健康情報番組」的な意味での
#「体全体のバランスを良くして……」なんていう、ものではありませんが
花粉症に伴うアレルギー性の鼻炎も、上で説明したように、鼻から侵入した花粉(アレルゲン)が、鼻の粘膜のところに来たマスト細胞上のIgEと結合して、そこからケミカルメディエーターが放出されることによって起きると考えられてます。なので、血清中の花粉特異的IgEの量自体が減少すれば、その反応も和らぐ、ということになります。
問題はむしろ「腸から血中」、つまり「消化管の中(=体『外』に当たる)にある抗原が、ちゃんと血液中のT細胞などに認識できるようになるのか?」というところなんですけど、そこらへんを効率よくつなぐシステムとして、上で述べたような腸管免疫のシステムが注目されている、というわけです。
#サブジェクトに意味はない
親コメント
Re:腸と鼻 (スコア:4, 参考になる)
特保に関しては、そういういくつかの実験を行って効果が証明できれば、「その効果について」宣伝的に述べることが許可されるのであって、無制限に「善玉」だとか「健康にいい」と標榜していいってわけではないんです。そもそも、「血中コレステロールの増加を抑えるけど、糖尿病のリスクを上げる」なんて可能性もないわけではないのであって、「善玉」とか「健康にいい」なんていうのは、そこらへんを網羅的に検証しつくした上で、ようやく言えるような性質のものなんです。そこらへんを、きちんと検証する前に色々言ってしまうと、それこそそこいらの「怪しげな健康食品」と変わらなくなっちゃいます。
「腸内環境を改善するシロタ株を摂取することは、健康状態をより良くし、花粉症の症状を抑える」というけど、その「健康状態がより良くなる」というのを、そんな曖昧で「医学的でない」表現でなく、具体的に何がどうなったことをもって「健康状態がよくなった」と言うのかを、明確にしてもらえませんか?とか 「腸内環境の改善」なんてのも同様に、それが実際にどういう状況を指しているのか、具体的に述べることができるでしょうか?とか、私が指摘してるのは、そういうことなんです。
これが単なる世間話の一つならば、そこまで追求することはありませんけど、まぁそもそもがきちんとした医学研究の話なので。上述のように、ヤクルトはプロバイオティクスについて非常に真剣に研究しています。もちろん「善玉菌」のような言葉を広めたのもヤクルトではあるんですが、それを広めたものの責任として、単に「善玉菌」という言葉のイメージだけで商売していこうとするのではなく、きちんとした科学の俎上で研究しようとしているわけですので。こちらとしても、それを正面から受け止めて「医学研究」という観点から評価するのが、まぁ礼儀かな、と思ってる次第です。
親コメント