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収量2割増で倒れにくいコシヒカリが誕生 29

ストーリー by yosuke
たくさんあればもっとおいしい 部門より

MIYU曰く、"従来より多く収穫できる美味しい米の開発に、名古屋大学の芦苅基行助教授らの研究チームが成功し、サイエンス誌で発表されました(理化学研究所のプレスリリース朝日新聞の記事読売新聞の記事毎日新聞の記事)。
研究者らは、コシヒカリの遺伝子に、コシヒカリの2倍の収量で草丈が低く倒れにくいインディカ種の「ハバタキ」という品種の遺伝子を導入して、収穫量が20%多い品種を開発する事に成功しました。このイネはコシヒカリの遺伝子を99%以上持つため、味や形はほとんどコシヒカリと変わらない、と発表されています。
味や成長などに関する遺伝子は、表現形質が連続性を示すことから「量的形質遺伝子座(QTL)」と呼ばれています。これらの発現には多くの遺伝子が関与していると考えられています。研究者らはQTLの解析を行なって、粒数に影響を与えるQTLを5つ、草丈に影響を与えるQTLを4つ見つけました。これらの遺伝子を入れ替えることで、優れた品種を作り出すことができます。さらに、イネは全ゲノムの解析が終了した穀物であり、ゲノム解析によって得られた情報と交配の結果とを比較することで、経験に頼ることなく有用な性質の有無の判断ができるため、短期間で効率的に品種改良を行なうことが可能です。そのため、遺伝子組み換えを使わない従来の育種方法で、4年という短期間のうちに求める品種を得ることができたそうです。
今回の成果の応用は、世界中で最も消費されている穀物である米の増産に結びつくものと期待されています。また、他の三大穀類の改良にも応用できる可能性もあるそうです。"

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by Anonymous Coward on 2005年06月25日 18時16分 (#757703)
    収量増が話題の中心になってますが、それよりも倒れにくいのほうが重要かも。いままでコシヒカリなど倒れやすい米は追肥のタイミングなどで調節して倒れないようにしていましたが、失敗したり穂が大きくなってきたころに台風が直撃したりすると倒れて……そのままにしておくと倒れたまま水につかって芽がでてしまったりするのです。

    #それでも最近のコシヒカリは初期に比べてよくはなっていますが

    担い手不足だったり、大規模化や手間をかけて有機農法をするなどしないと生き残れない時代ですし、これでリスク軽減と省力化が可能なら素晴しいことですね。

    #実るほど 頭をたれる 稲穂かな は、「実れば実るほど重圧に頭が上がらなくなる」と言う意味だと思っていたのでAC
    • コシヒカリが(美味しいと評判になってからも)しばらくのあいだ新潟の特産だったのは、美味しい品種であるが倒れやすく、イモチ病に弱くあまりにも育て難かったからというのがあったからですよね。それが、ノウハウの積み重ねと品種改良で広がっていったのでしょう。

      肥料をたくさんやると丈が伸びすぎて倒れてしまい、従って肥料のやり方を調整しないといけないから収量が上げられないというのは実にやっかいな特性だと思います。つまり、倒れやすいのと収量が上げられないというのは同根の問題だったと、今回の改良はそこを何とかしたわけで、素晴らしいですね。

      うーん、そしてますますコシヒカリが広まるのか、、、orz
      僕は澱粉質を喰ってるという感じがするササニシキが大好きなのですがますます入手性が悪くなってしまうかもしれない。

      参考リンク:コシヒカリ物語(まきの農園版) [makinonouen.com]
      親コメント
  • by n68 (18156) on 2005年06月25日 5時49分 (#757436)
    >コシヒカリの遺伝子を99%以上持つ
    ヒトやサルの遺伝子は九割強ほど同じと聞いたことがあるのですが、そうすると1%弱の違いといってもかなりのものになるのではないのでしょうか。

    # 識者のつっこみぷりーず。
    • by Anonymous Coward on 2005年06月25日 6時58分 (#757446)
      チンパンジーの遺伝子は98.5%までヒトと同じといわれています。
      人類の間の個々人の遺伝子の違いは0.1%程度といわれています。
      人間と使徒の遺伝子構造は99.89%同じと設定されています。
      親コメント
  • この成果自体は、すばらしいものだと思います。
    ですが、いつぞやの不作の時に、タイ米の投棄が続出した事とか、
    米増産のために開墾した水田を、作物転換で畑に埋め戻した事などを
    思い出してしまいました。

    生産だけではなく、流通から消費に至るまでの部分で
    何らかのブレークアウトが必要だと思います。

    # 私の環境では、トップページに当ストーリーが表示されていません。
    # ジャンルによるオミットはしていないのですが・・・
  • by KENN (3839) on 2005年06月25日 8時14分 (#757456) 日記

    遺伝子組み替え作物の是非はひとまずおいて、世界規模で安定して増産するためには収穫した種子が親の持つ特性を継承できる必要があります。でないと、この技術をもった一部の人々が生産量をコントロールできてしまうからです。

    要はF1 [enjoy.ne.jp]じゃ困る、という話ですが、そこらへんはどうなんでしょうね?

    • by MIYU (17727) on 2005年06月25日 10時53分 (#757518)
      POSTされた元記事 [mypress.jp]が有りますので読んでみて下さい。
      多分ご理解いただける様に書いてあると思いますが、これは普通に「交配」を行って作り出されたものなので、一般に言われている「遺伝子組み替え作物」ではありません。(私は、「交配」==「遺伝子組み換え」だと理解しているのですが)

      また、イネは自家受粉作物ですので、「他の花粉が飛んでくる前に自分の花粉で受粉」します。(参考記事:稲の出穂と開花 [janis.or.jp])

      今回の掲載ストーリーから切り落とされていますが、
      粒数に最も強い影響を及ぼしていたものが、植物ホルモンである サイトカイニン [osaka-u.ac.jp]の分解に関与する「サイトカイニンオキシダーゼ/デヒドロゲナーゼ遺伝子(CKX)」 だという事が解明されています。研究者達は、サイトカイニンを分解する酵素の働きが悪いと、花が増えて結果的に粒数が増えるのだと考えています。

      世界で重要な位置を占める作物はイネ、トウモロコシ、コムギですが、これらはすべてイネ科に属する作物です。つまりゲノムの構造が似ているのです。ですから、今回「サイトカイニン」の生成に関連する遺伝子が増収に結びつく事が解明された事によって、他の作物でもそれを制御している遺伝子が見つかる可能性が非常に高くなりました。

      もちろん、栽培のためには、病害虫に強い、倒れにくいなどの条件も必須です。そのような条件に関しても、2004年にイネの全ゲノムの完全解読が完了しているという点は強みになっています。また稲の最大の病害である、稲熱病の病原菌のゲノムの解析も行われ [mypress.jp]、病気に強い品種の選抜に役立つ物として期待されています。

      芦苅基行助教授は、名古屋大学生物機能開発利用研究センターの植物分子育種分野の研究者でいらっしゃいますが、どのような研究を行っているのか、そして何を目的としているのか、という事を判りやすく解説したWebページ [nagoya-u.ac.jp]が有りますので、ご覧になってみて下さい。

         # 個人的にはサイトカイニン関連遺伝子の特定が重要事項だと思います
      親コメント
      • by KENN (3839) on 2005年06月25日 12時34分 (#757560) 日記

        話が全く噛み合ってませんが、倒伏や収量に関係する遺伝子が特定されることと、その遺伝形質が通常の交配で子孫に継承されることは別問題です。私が疑問に思っているのは後者なんですが、それは理研のプレスリリースにもどこにも書いてありません(前者についての研究結果なんだから当然ですが)。

        なお「緑の革命」については負の側面を指摘する意見 [hit-u.ac.jp]もあります。今回の研究自体を否定するつもりはありませんが、作物の収穫量は最終的には生物的な光合成能力と土からの養分吸収量に還元されることを忘れてはいけません。

        本音を言えば、2割程度の収量は天気次第で変わります。気象条件とは関係なく常に2割増えるのであればまた意味が違いますが、少なくとも今回の成果によって環境的な要因による減収をカバーできるとは思えません。なので、この研究発表で重要なのは「収量」よりも「倒伏しにくい」だと思います。現実の稲作では、倒伏が病害虫被害や生育不良による収穫減につながる場合が多いので。

        稲作農家の息子なのでちょっと偏見が入ってるID

        親コメント
        • by CBGB (9874) on 2005年06月25日 18時17分 (#757704)
          元論文が読めないので詳細は不明ですが、理研のプレスリリースを見た限りで。

          通常、QTLの効果の検証には、準同質遺伝子系統(NIL)という系統が用いられます。これは、今回の場合で言うと、Gn1とPh1というQTL領域はインディカのハバタキ由来でホモ接合され、その他の領域はコシヒカリ由来でホモ接合された系統のことを指します。このことから、今回作製された系統における、低い草丈や多粒数といった形質は、自家受粉する限り安定して継承されるものと思われます。

          今回の話で気になる点を挙げます。
          理研のプレスリリースには、「粒数が約20%増加」と書かれてあります。これは必ずしも、「収量が約20%増加」を意味しません。というのは、仮に粒数が増えたとしても、登熟歩合(念実の度合い)や千粒重(籾数あたりの重さ)がより大きく減ってしまえば、収量としては下がってしまう可能性もあるからです。プレスリリースには収量構成要素の詳細が載っていないので不明ですが、収量を語る上ではそのような細かい調査が不可欠となります。

          また、KENNさんが指摘されておられるように、収量を高める上で最も必要なことの1つは、光合成による物質生産を高めることです。個人的には、従来以上の高収量を目指す分子育種としては、細胞分裂活性のような「器」を増やすものよりも、光合成能力や光合成産物の効率的な転流などの「中身」を増やす方向性の方が、より重要ではないかと考えます。
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          • by MIYU (17727) on 2005年06月25日 21時38分 (#757766)
            米は「二酸化炭素と水を主な原料に炭素化合物を作り出す」光合成の産物ですから、登熟相で実際に登熟歩合や千粒重がどうなるか、というのは … 稲はもしかしたら、現在すでに能力の上限値で米を作り出していて、現状でこれ以上粒数を増加させれば粒の重量の減少に結びつく(結果として収量は変わらない)かもしれないという話ですね。

            > 光合成能力や光合成産物の効率的な転流などの「中身」を増やす方向性
            タバコの葉緑体のDNAに藍藻の光合成関連遺伝子(二酸化炭素結合酵素のルビコス・RuBisCOなど2種類の酵素の遺伝子)を組み込み、光合成速度を7割高める事に成功し、結果として光合成からの産物である「でんぷん」も7割増えたという報道が有りました。
            そういう話でしょうか?

            中国では既に「害虫に抵抗性を持たせた遺伝子組み換え米」 [biotech-house.jp]が栽培されていますし、将来的には多分増収の為にいもち耐性遺伝子の組み込みも含めて使える手段は全部使う、という方向で行くしか無いのだろうとは思いますが … 現在の日本では「遺伝子組み換えコシヒカリ」なんて誰も食べたがらないでしょうし、売れない米では作る人が食べていけない。自然交配の出来る高い光合成能力を持つ野生種が有るのなら話はまた違ってくるのでしょうが、あるのかな …

            それから、稲作を可能にしている水路等のインフラを維持してきた「集落」が無くなってしまうと、田圃で米を作る事は出来なくなります。能力の高い品種はがんばって育種して欲しいですが、米を作ってくれる人の育成・確保も含めて、米作りの為のインフラを壊滅させない努力も要ると思います。


            補足事項:稲作農家でない人の為の稲の基礎知識

            日本のイネは「他家受粉」による交雑をさけるように品種改良が行われたため、「出穂と同時に開花し、開花すると受精する」ようになっています。その為、「自家受粉」性が強く、元々持っていない遺伝形質が入り込む事はあまりありません。(混ぜ米の鑑定がDNAによって可能なのは、この条件が有る為です) 日本の栽培品種のイネに新たに遺伝形質を導入する品種改良の為には、人為的な操作が必要とされます。

            稲の生長という場合、「栄養生長期」と「生殖生長期」の2層が存在します。今回の話で、背丈が低くなるというのは「栄養生長期」に関連する部分で、実がたくさんつくというのは「生殖生長期」に関連する部分です。

            稲は、「栄養生長期」という時期に1つの種から出た芽が「分蘗(ぶんけつ)」といって茎の数を増加させてゆきます。そして日照時間の長さの影響をうけて、茎の先端部にある成長点が花芽に分化する時期を迎える事になります。今回の話で出ている「背が低い」という特徴は、成長点が花芽に分化するまでの茎の長さが短い事を意味します。

            成長点が花芽に分化した後が「生殖生長期」です。今回の話で出ている「粒数が多い」という特徴は、生殖成長期により多く分化がおきて、よりたくさんの実がついた事を意味します。「生殖生長期」は生殖相(受精まで)と登熟相(その後の種子形成まで)に分かれますが、合計60~70日と品種にあまり左右されません。
            親コメント
    • Re:で、遺伝するの? (スコア:2, すばらしい洞察)

      by guchis (27687) on 2005年06月25日 18時40分 (#757709) 日記
      今回のがF1かどうかは知りませんが、 F1がもつ「形質が子孫に代々伝わらない」という性質は 環境とか生態系といった観点からは好ましいことになるのでは。

      # これって特許はとれるんですかね?

      親コメント
  • by AKN (26100) on 2005年06月27日 0時10分 (#758313) 日記
    実家に帰ったとき「たんぽぽ転作」なるスラングを聞いて愕然と
    したことがあります。

    ローカルのテレビ番組で「十二期作」なる言葉が出たことも
    ありました。田んぼをアパートにしたら年収が十二倍になったとのこと。

    お米を食べる人も増えてほしいです。

    #岩手の沿岸部はヤマセがきつい
    --
    -- AKN
  • by Anonymous Coward on 2005年06月25日 1時26分 (#757389)
    エロゲのキャラが処女か非処女か気にするようなもんで、
    気持ちいいか悪いかってレベルの問題な気もする。

    自然に交配しても遺伝し組み変わっちゃうわけで。

    # まぁ、「自然にはまだボクらの知らない神秘があるんだ」という主張もごもっともだけどさ。
    • 交配を繰り返す方はゲームを攻略サイト見ながらフラグを進めていく方法で、遺伝子組み換えはメモリ上のフラグを強制書き換えする方法と考えると、フラグ強制書き換えのほうがプログラムが異常動作を起こす確率が高いということではないかな?
      親コメント
      • よく言われるのは逆ですね。自然な交配ってのは、様々な要因がどう作用するかわからないので、うまくいかない確率が高いです。だから交配による品種改良はこれまでこんなに時間がかかってたんですよ。遺伝子組み換えは、何をしているかはっきりしている分、異常動作を起こす確率が低いと言われています。

        実際はどうかわかりませんよ。
        親コメント
      • じゃあ攻略サイトに不備があって、大事なイベント落とすのは
        交配を繰り返すうちに大事な何かを無くしたり、よけいな形質が混ざったり?

        #こうはいの第一候補が後輩って、俺の趣味て・・・
         後背が最初よりましか?
    • まったくだねー。
      人の生死だって、極論すれば気持ちいいか悪いかってレベルの問題だよねー。

      ってかさ、遺伝子組み換えの全否定も愚かしいかもしれんけど、全肯定もどうかと思う。
      もっと個別に判断するべきじゃない?

      個人的には、今回のような収量増加は歓迎したい。
      でも、害虫抵抗性とか日持ち向上性みたいのはやっぱり抵抗があるな。
  • by Anonymous Coward on 2005年06月25日 7時02分 (#757448)
    ご飯に砂糖をかけて食べてるヤツはぁ!

    #アレは許せん!(・∀・)9!!
  • by Anonymous Coward on 2005年06月25日 15時37分 (#757645)
    あとはスーパーササニシキがあればコウガマン誕生。
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アレゲは一日にしてならず -- アレゲ見習い

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