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14659 story

HIVの「秘孔」を突くのに成功 21

ストーリー by mhatta
そろそろ鎮圧できるのかな 部門より

oddmake 曰く

News@Nature.com記事より。HIVはその表面を絶えず突然変異で変化させているため、これまでワクチンを作ることができなかった。いや、そもそも作れるかどうかさえわかっていなかった。この問題に対して米National Institute of Allergy and Infectious DiseasesのPeter KwongらはHIVの変化しない部分に対してb12という抗体で攻撃できることを示した。(NIAIDのプレスリリース
この発見はgp120というタンパク質についてのものである。このタンパク質はヒト免疫系に感染し複製するための重要な機能を持っているため変化することがないことは知られていた。しかしこれまでこの部位は抗体から隠されていて攻撃不能なのではないかと思われていた。
この研究成果は2月15日付Nature誌に"Structural definition of a conserved neutralization epitope on HIV-1 gp120"という論文として投稿された(Natureの論文データベース、ただし登録者のみ閲覧可能)。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 補足 (スコア:5, 参考になる)

    タレコミ文だと誤解を受けそうな部分があるので,少し補足します.
    HIVを無害化する抗体はこれまでにも知られていました.今回の論文で用いられた
    b12以外にも2F5, 2G12, 4E10といった抗体が知られています.
    しかし,無数の抗体の中でこれらがHIVの無害化に効果があるからといって,HIV
    の感染予防に使えるというわけではありません.
    抗体を直接導入しても,抗体はタンパク質なので遅かれ早かれ代謝されてしまいま
    すし(それまでの短い時間に感染しなければ意味がない),HIVの方が変異してし
    まえば効かなくなる可能性もあるからです.
    そのため「ある抗体が有効」というだけでは公衆衛生上意味がなく,ヒトでそれら
    の抗体に相当する抗体をつくれるようにしなければならないし(それを導くのがワ
    クチン),またその抗体がHIVの変異で無効にされないことも必要です.

    また,HIVの表面にあるタンパク質のgp120において,ある領域がほとんど変化の
    ない部分であることは既に分かっていました.
    この部分を認識する抗体であればHIVの変異に対して耐性があるのですが,3次元
    構造解析の結果この領域はgp120の奥にひっこんでいて,とても抗体がくっつきそ
    うには見えなかったのです.
    ところが,gp120がヒトの免疫細胞に結合するとき,この部分は決して隠れている
    場所ではなく,表面にでてくることが今回の研究で分かったのです.

    今回の研究が成功した勝因は,gp120がヒトの免疫細胞のCD4というタンパク質に
    結合する状態を,CD4がなくてもつくることができたことにあります.
    その上でgp120と,HIVの無害化抗体b12を結合させ,3次元構造を調べています.
    CD4-gp120-b12という3者の構造解析はおそらく難しすぎてつくれなかったでしょ
    うが,gp120-b12であれば解析が可能です.
    その結果b12がgp120の変異しづらい場所に結合することが分かり,b12がHIVを
    無害化できる理由も判明したのです.
    これらの過程を経ることで,(これまで抗体が結合しないだろうと思われていた)
    gp120の変異しない部分を標的にすることで,HIVワクチンを製造することができ
    るかもしれないということになるわけです.
    --
    kaho
    • Re:補足 (スコア:4, おもしろおかしい)

      by Anonymous Coward on 2007年02月17日 11時10分 (#1111489)
      つまり北斗神拳で言えば北斗柔破斬ですね?
      親コメント
      • Re:補足 (スコア:1, おもしろおかしい)

        by Anonymous Coward on 2007年02月17日 20時43分 (#1111681)
        親コメントでまじめに解説していただいて

        「つまり北斗神拳で言えば北斗柔破斬ですね?」
        で (スコア:5, すばらしい洞察)
        と判断されるのに 吹いた(笑
        親コメント
    • Re:補足 (スコア:1, 参考になる)

      by Anonymous Coward on 2007年02月17日 18時22分 (#1111643)
      # 解説参考になりました。

      あとあれですね、あくまで「抗体ができた人にとっては無害」になるだけで、感染は防げないつーのもポイントですね。
      親コメント
  • Exploit code (スコア:5, すばらしい洞察)

    by rin_penguin (9144) on 2007年02月17日 10時18分 (#1111465)
    「~という抗体で攻撃できることを示した」がそのまま脳内で
    "Exploit code for this vulnerability is publicly available."に
    変換されたオレはたぶんもうダメなんだよねorz
    • Re:Exploit code (スコア:2, おもしろおかしい)

      by Anonymous Coward on 2007年02月17日 10時26分 (#1111469)
      そんなことをいいだしたら、この投稿をみて
      HIVウイルスども、自分らのSecurity Advisoriesだすのかな、
      と思ったオレは、もっとダメなんだよなorz
      親コメント
    • by sameshima (10060) on 2007年02月17日 10時48分 (#1111478) 日記
      服役している天才クラッカーを連れてきて働かせたら
      短期間で立ち上がって才能を発揮するかも
      親コメント
    • by Anonymous Coward
      推奨する対応策 : すべてのHIV様は最新の耐性ウィルス遺伝子を直ちに導入してください。導入方法は、「この耐性ウィルス遺伝子に関するよく寄せられる質問」の「耐性ウィルス遺伝子は薬剤の乱用による一種の人為淘汰によって自動的に導入されますか?」をご覧ください。
    • by Anonymous Coward
      >「~という抗体で攻撃できることを示した」がそのまま脳内で
      >"Exploit code for this vulnerability is publicly available."に
      >変換されたオレはたぶんもうダメなんだよねorz

      生体コンピュータハッカーのはしりである。
  • 変なの (スコア:2, 興味深い)

    by Anonymous Coward on 2007年02月17日 13時22分 (#1111541)
    HIV-1で広範に保存されている領域なのに、
    攻撃不可能ではないかと"思われた"くらいで、標的から除外していたなんて。
    いくら標的にしても体内で抗体ができない(から論文が出ない)というのだったら、
    この論文の結果ってあんまり意味ない気がする。
  • ちょっと待て (スコア:2, おもしろおかしい)

    by Anonymous Coward on 2007年02月17日 21時36分 (#1111693)
    その秘孔を突いたという研究者はアミバじゃないだろうな?

    #4000年前からHIVがあったのだろうか?
  • お決まり(荒らし-1) (スコア:1, おもしろおかしい)

    by Anonymous Coward on 2007年02月17日 9時37分 (#1111449)
    安倍氏
  • オフトピだけど (スコア:1, すばらしい洞察)

    by Elbereth (17793) on 2007年02月17日 13時48分 (#1111548)
    HIVの秘孔で、Wizardryの「バブリースライムの首をはねた」を思い出した。
  • by Anonymous Coward on 2007年02月17日 9時36分 (#1111448)
    複製するための重要な機能を持っているということなんですが、体内に既存するHIVの(突然変異の)表面はどうするのでしょうか?
    ちょっと、疑問だったり。
  • by Anonymous Coward on 2007年02月17日 11時54分 (#1111504)
    どうせ「b12は人体にとって毒性が強い事が判明」とかでがっかりするんでしょ。
    そんな簡単に攻撃できるならこれほど手強い相手にならないと思う。
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身近な人の偉大さは半減する -- あるアレゲ人

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