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18212 story
宇宙

ブラックホールの内部構造をスパコンで検証 54

ストーリー by nabeshin
提案から30年あまり 部門より

Anonymous Coward曰く、

英国の物理学者であるホーキング博士は1974年、ブラックホールが光などを放出しながら 少しずつ小さくなり、最終的に蒸発してしまうという、いわゆるホーキング輻射の存在を理論的に示したが、 高エネルギー加速器研究機構のリリースによれば、このホーキング博士の理論において、ブラックホール内部に熱源が存在するという予測がKEKのスパコンによるモデル計算で検証されたようである。リリース文の解説では、

素粒子の究極理論とされる「超弦理論」においては、すべての素粒子を極めて小さな「弦」の様々な振動のしかたとして表すが、その中には重力を媒介する粒子も含まれ、一般相対性理論を素粒子のスケールまで自然に拡張することができる。このことから超弦理論を用いればブラックホールの内部構造を解明できると期待されていたが、弦の間に働く相互作用が強いため具体的な計算は難しく、超弦理論の予測を実証できるかどうかについて世界の理論物理学者の注目が集まっていた。

とのことである。
この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by prankster (12979) on 2008年01月17日 11時46分 (#1282082)
    ホーキング輻射を思いっきり縮めて言うと、対生成した粒子の一方が飛び去ることでブラックホールがエネルギーを失う、つまりエネルギーを放出するというものです。

    この現象を物理的に観察するにはまずブラックホールを見つけてそばまで行かねばならないので、恒星間飛行が実用的な時間でできるようになるまでは無理だと思っていました。さもなければ人工(マイクロ)ブラックホール‥すみやかに蒸発する‥を作ることができなければ無理かと。

    理論計算の妥当性はモデルの妥当性に拠るわけですが、まだ決定的に認められているとはいえない超弦理論によるモデルがこれまた物理的観測の行われていないホーキング輻射を検証できたということは、両方が正しい可能性が高いと思います。

    ホーキング輻射の話は90年代に留学しているとき科学トピクスの本で読んだのですが、まさかそれから十数年で(ほぼ)検証されるとは思いませんでした。感慨深いです。


    ちなみに、ホーキング輻射をアナロジーで検証しようという試みが行われています。京大の院生による研究 [kyoto-u.ac.jp]です。これはこれで面白い観点だと思いました。
    • 理論計算の妥当性はモデルの妥当性に拠るわけですが、まだ決定的に認められているとはいえない超弦理論によるモデルがこれまた物理的観測の行われていないホーキング輻射を検証できたということは、両方が正しい可能性が高いと思います。

      専門外なので、土地鑑のない素人考えなのですが、独立した仮説から出発した結論が同じことを示したからといって、その仮説が補強された(正しい可能性が高くなる)というのは、論理的にはおかしいような。

      予定調和として美しいので、真理に近づいたのではないか、という感覚でしょうか?

      親コメント
      • by Anonymous Coward
        両者を一致させるようにパラメータを微調整しているのでなければ、頼もしい補強になりますよ。
        パラメータをいじっている場合は極限が一致するだけじゃだめで、ある程度高次の変化まで一致するかを見て判断。
    • by Anonymous Coward
      その京大の人の研究、続き無いの?
      すごく面白そうではあるのだけど、ホーキング輻射のまねごとに達する前に話が途切れてる…。
      これだけじゃ、ただのブラックホールのアナロジーにすぎない。

      それはともかく、超弦理論もだいぶ確実性高まってきたってことなんですかねぇ。
      今欧州で作ってる加速器が、マイクロブラックホール作れるかも(でも多分無理)とかいう話なので、是非実験で検証してほしいところなんですが…。
      • by Anonymous Coward
        でも怖いよね。
        「多分無理」といっても所詮は予想、未知の現象でうっかりでっかいマイクロブラックホールができてしまって、蒸発するよりも早く周囲の機材を喰って成長しはじめでもしたら・・・
        • by TarZ (28055) on 2008年01月17日 13時18分 (#1282160) 日記
          英文で難しいですが(詳細は理解できなかった…)、論文どぞー。Black holes in the lab? [arxiv.org]

          仮にこのブラックホールが蒸発しなくても、おっそろしく小さなものなので、簡単には周囲のものを飲み込んでホイホイ成長したりはしないはずなので、多分大丈夫です。
          LHCでブラックホールができて、それが蒸発しないなら、すでにそこらじゅうにブラックホールが存在していて、地球の中はブラックホールだらけでしょうから。
          親コメント
        • by Anonymous Coward
          >成長しはじめでもしたら
          それいいじゃないですか! 帯電させて捕まえて、トンネル掘りに使いましょう。
          南アルプスなんか一発貫通ですよ。
          • 工期にまにあわねー。と蒸発速度とのバランスで決まってる規定以上の速度で使って成長させて...バケツでウランどころじゃない話に。
            # 高エネルギーで素粒子の「位置を確定」するとその確定範囲の小ささにそれ自体で重力崩壊を起こす。って奴かな?
            親コメント
          • by Anonymous Coward
            >帯電させて捕まえて、トンネル掘りに使いましょう。

            そのトンネルの直径は何オングストロームくらいですかな?
          • by Anonymous Coward
            ゴミ問題も解決ですね。

            じつはあのゴミはレアメタル資源を豊富に含む宝の山だったと気付いても後の祭り。
    • by Anonymous Coward
      蒸発している最中に、或る程度の大きさになったら ブラックホールでは無くなるのでは? #蒸発すると質量が減る筈!
    • by Anonymous Coward
      超ひもでブラックホールのエントロピーを計算するってのは前からやられてますよね。だから、熱放射に対応するホーキング放射と一致しても初めて独立した観点から迫ってきたって感じはしないな。
      まあそれでも強力な補強ってところですか?
  • by Lurch (10536) on 2008年01月17日 13時03分 (#1282147)
    言った者勝ち?
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    惑星ケイロンまであと何マイル?
  • by Deasuke (34806) on 2008年01月17日 16時56分 (#1282272) 日記
    存在しない(c.f. http://srad.jp/science/article.pl?sid=07/06/24/1958215 )という説もあるらしいので、存在しない説が正しければブラックホールの中で何が起きていると言っても(それは、存在を仮定しての話であるから、仮定部分が誤りである命題は常に真なので)正しい(矛盾はおきない)ということになるんですよね。

    --
    Best regards, でぃーすけ
    • by prankster (12979) on 2008年01月17日 17時26分 (#1282288)
      >まだ決定的に認められているとはいえない超弦理論によるモデルが
      >これまた物理的観測の行われていないホーキング輻射を検証できた
      >ということは、両方が正しい可能性が高いと思います。

      これへの補足です。相対性理論と素粒子論(どちらも実験的に綿密に検証されています。)から導き出されたホーキング輻射予測と、純理論的な側面の強い超弦理論の予測が一致したということは、どちらも正しい可能性があると判断しました。異なるアプローチが同じ結果になるのならばそれは実在しどちらのアプローチも正しいという考えですが、この考えに対するご批判は甘んじて受けます。なにせ物理は素人ですので。

      なお、引用された/.の記事でも観察上「ブラックホールのように見える」存在は否定してませんよね。観測上実在物と同様に振舞うのなら実在物とみなしてよいのでは?
      # 黒体は実在しなくても黒体輻射を起こすもの(内側が鏡の箱)は黒体として取り扱える、というのを昔習ったような気が。
      親コメント
      • by Deasuke (34806) on 2008年01月17日 19時38分 (#1282343) 日記
        「本件」と「存在しない説」は素人目には元コメントの意味で矛盾しないように見えるのですが、実際のところはどうなの?という意味で投稿しました。
        pranksterさんの見解は「本件」は「存在しない」とは逆行するもの(ブラックホールの存在を証拠付けるもの)ということでしょうか?すなわち「存在しない説」は破れた、ということでしょうか?

        > なお、引用された/.の記事でも観察上「ブラックホールのように見える」存在は否定してませんよね。観測上実在物と同様に振舞うのなら実在物とみなしてよいのでは?
        以下、簡単のために「本物のブラックホール」(存在しない説で「存在しない」とされているもの)、と「偽ブラックホール」(存在しない説で存在が否定されていないもの)という言葉を使います。
        外からの観測では「本物のブラックホール」と「偽ブラックホール」は同じ観測結果を示す訳ですが、存在しない説ではもし「偽ブラックホール」が存在するならば、その内部構造は当然「本物のブラックホール」とは異なる訳ですよね。本記事で問題にしているのはブラックホールの「内部構造」ですから、「偽ブラックホール」の内部構造は問題にしていないと思うのですが、如何でしょうか?
        それとも、存在しない説を仮定した場合は、本記事で言う「ブラックホール」はそもそも「偽ブラックホール」のことなのでしょうか?

        無知なので疑問ばかりで申し訳ないですがよろしくお願いします。
        --
        Best regards, でぃーすけ
        親コメント
        • by prankster (12979) on 2008年01月18日 8時54分 (#1282522)
          一晩考えてみたので返事が遅れました。

          この件は「ブラックホールが実在するか?」という疑問とは無関係ですね。ブラックホールが実在するとしたらこのような性質を備えるだろうという予測のひとつがホーキング輻射です。これは観測により厳密に検証されている相対性理論・素粒子論を裏付けとしているので、前提が正しければ<ほぼ>確実に存在する現象と思われます。

          一方、超弦理論は相対性理論などの既知の理論および物理現象を説明するための枠組みとして作られたものですから、ホーキング博士のアプローチとは異なります。それをモデル化した計算機実験でホーキング輻射と一致した結果が得られたということは「ブラックホールが実在するという前提で<ほぼ>確実と思われる別理論の予測と一致した」ということです。すると、繰り返しになりますが異なるアプローチで得られた結果が一致したので、両方の理論がともに正しいと考えられるわけです。

          これはあくまでもブラックホールといういまだ仮想的な存在を実在のものとした上での一致ですので、ブラックホールが実在するかどうかとは関係ありません。ブラックホールの実在は肯定も否定もされていないと見るべきでしょう。
          親コメント
          • by Deasuke (34806) on 2008年01月18日 12時37分 (#1282663) 日記
            ありがとうございます。
            なるほど「存在しない説」とは無関係に、本記事の件は「本物のブラックホール」について扱っている、ということですね。
            そして、本件はブラックホールの存在ではなく、超弦理論の正しさに対する一つの根拠となる、ということですね。

            ということは、「存在しない説」が正しければ本件は「超弦理論の正しさに対する一つの根拠」という大きな意義はありますが、実在の物理現象については何も語っていないことになる、ということになる訳ですね。

            私は数学やコンピュータなど、自分で(ある程度は)勝手に大元のルールを決められる世界にしか居たことがないので、こういう考え(大元からひっくり返るかも知れないと言うような)は新鮮ですね。
            --
            Best regards, でぃーすけ
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  • by Anonymous Coward on 2008年01月17日 21時27分 (#1282386)
    参考記事:http://bogusne.ws/article/79011606.html [bogusne.ws]

    なるほど。社会勉強になる…。
  • by Anonymous Coward on 2008年01月17日 14時46分 (#1282220)
    KEK という単語を見るたびに略し方に違和感を覚えてむずがゆくなる
    知らない人はまさか日本の研究期間とも想像しないと思う
    日本秘密結社がまだマシだ
    • by nanno (17292) on 2008年01月18日 14時12分 (#1282733)
      地元ではKEKと言えばここ [citydo.com]ですけど。
      最近折り込みチラシが入ってこないなぁ。
      親コメント
    • by Anonymous Coward
      Kou-energy Kasokuki Kenkyuu kikouでKKKとかじゃなかっただけ良かったのでは。
      というか変にアルファベット使わないで高加研とかでいいような…
    • by Anonymous Coward
      NHKもダメ?
    • by Anonymous Coward
      組織改変で高エネルギー加速器研究機構ができる前、高エネルギー物理学研究所時代からの略称ですね。
      日本語略称では高エネ研って言うと思います。最寄のバス停は『高エネルギー研究所』。
      • Re:KEK (オフトピ) (スコア:3, 参考になる)

        by Deasuke (34806) on 2008年01月17日 17時11分 (#1282278) 日記
        10年前くらいの話になりますが、知り合いの京大物理やKEKの人は確かに「高エネルギー研究所」ないしは「ケック」と言っていました。ここはインターネットが早いせいでずっと昔からドメインがntt.jpとならんでkek.jpだったんですよね。バス亭は「高エネルギー加速器研究機構」に変わったようです(cf. http://www.kek.jp/ja/access/index.html )。
        --
        Best regards, でぃーすけ
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    • by Anonymous Coward
      トンカツのメーカーみたいですもんね

      #それはKYK
  • by Anonymous Coward on 2008年01月17日 15時23分 (#1282234)
    超弦理論は「それは間違ってさえいない [seidosha.co.jp]」とまで酷評されていたのですが、まだまだ見込みがあるのでしょうか。
    • by Anonymous Coward on 2008年01月17日 15時48分 (#1282243)
      >まだまだ見込みがあるのでしょうか。

      ようやく検証可能なところに下りてくる(かもしれない)雰囲気。

      とりあえず、理論的な豊かさは正しいとしても問題なさそうな状況なんで、問題はそれが実際に
      検証可能なのかどうか。
      検証不可能なら、そもそも正しいのかどうかわからない。理論そのものが無矛盾できっちりして
      いても現実とは乖離している可能性もあるし、検証できないけれども正しい可能性もある。
      ただし直接/間接ともに検証できないなら物理としては無価値。

      で、以前言われていたような本当に直接的な検証(当然エネルギー的に無理)ではなく、間接的な
      検証なら(未だ理論的に決定されていないパラメータの範囲によっては)そろそろ実験的に検証
      できるエネルギーレベルかも知れん、ということ。ただしパラメータの範囲によっては検証可能な
      領域よりもっと高いエネルギーでしか見えてこないかもしれないので、検証できればラッキー、
      というレベルだけど。

      理論が進むほど低エネルギー側への影響がきっちり見積もれるようになったり、理論が正しければ
      現れるはずの間接的影響が見つかるんで、実験の現実性が高くなる。
      また低エネルギー極限で現在の理論を近似として含まなくちゃいけない(必要条件)ので、その辺の
      研究も行われてはいる。まあここからわかるのは必要条件を満たしているか、ということだけだけど、
      無いよりはまし。
      親コメント
      • by Anonymous Coward
        超対称化する前のひも理論はタキオンが発生するので見捨てられた.しかし,超対称自体,究極粒子はフェルミオンだけだと言う立場の人からすると数学的虚構に過ぎないらしいね.
    • by Anonymous Coward on 2008年01月17日 17時44分 (#1282296)
      超弦理論派の一般向け入門書としてはエレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する [amazon.co.jp]がありますね。

      つーか、さっき読了して帰ってきたらこのニュース。
      すごく興奮してしまうw
      親コメント
      • 「エレガントな宇宙」はいい本ですけど、今では内容が古くなってしまった感があります。
        ブレーンワールドとかも書かれていなかったと思うし。

        なので、超弦理論派の著者ではないけれども、

        リサ・ランドール「ワープする宇宙」日本放送出版協会, ISBN 978-4140812396

        だと、より内容が新しくて良いかも。
        --
        masamic
        親コメント
        • by Anonymous Coward on 2008年01月17日 20時56分 (#1282371)
          そのリサ・ランドールの本も内容も間違っていたと軌道修正されたはず。
          彼女の新しい理論に関する単行本はまだ出てないのかな。
          親コメント
          • そうなの?
            #ちょうど昨日、彼女の自説が書いてある章の直前くらいまでは読んだだけなので、彼女の説は良く知らないのだけれど。

            まあ、彼女自身の説はそうかもしれん(まあ、間違っていたとしてあまり気にしない、科学なんてそういうもの)が、該当書籍で概説している超弦理論までの解説も間違っていたの?
            #解説よろ

            それはともかく、新しい説を解説した単行本が出たら是非読んでみたいです。
            --
            masamic
            親コメント
    • 間違ってさえいないのWoitさんやらSmolinさんやらによれば、最近超弦理論はこうやったら検証可能だ、っていう話がいろいろなところから出てるけども、そういう印象を与えるようにメディアに出しているだけで、実際はナンセンスだみたいなことをおっしゃってますね。

      素人目では去年のE8の話題以来、ループ量子重力のほうがかなり魅力的に見えますけどね。
      親コメント
      • ループ量子重力理論も興味あるなぁ。

        もっとも、自分の知識では理解するのは難しそうだが…。
        #超弦理論もきちんと理解できていないのだけれど…。orz

        時空に依存しないスピン接続?のネットワーク構造から時空が生まれるって感じだっけ?
        #だれか解説よろ
        #一般向け解説書の提示でも可w
        --
        masamic
        親コメント
    • by Anonymous Coward
      ひも理論より,わたしはこっちのアプローチの方が好きですね:
      Alain Connes -- Official Website [alainconnes.org]
  • by Anonymous Coward on 2008年01月18日 7時32分 (#1282514)
    女の子のスカートの中をスパコンで検証してくれぃ
typodupeerror

ハッカーとクラッカーの違い。大してないと思います -- あるアレゲ

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