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日本

戦中の理研加速器のオペレーションログ発見 32

ストーリー by mhatta
一級資料 部門より

Chomy 曰く、

共同通信社の報道によると、第二次大戦中に東京都文京区にあった理化学研究所の「大サイクロトロン」の運転日誌が、仁科記念財団のロッカー内から発見されたとのこと。この日誌は1942年7月〜1943年1月と1943年2月〜1944年4月の記録。サイクロトロン建造や実験における苦闘ぶりが、日曜日を除く連日、A5判のノートに図面や数値入りで詳しく書き込まれていた。従来、この日誌は原爆研究の責任追及を恐れて戦後まもなく焼却されたと考えられていたが、たまたま本の間に挟まっていて散逸を免れたらしい。

Wikipediaによると、理研は1941年、陸軍から原子爆弾の開発を依頼された(二号研究)。理研の仁科研究室は熱拡散法によるウラン濃縮を試みていたが、結局基礎研究の段階で敗戦を迎えた。にもかかわらず、戦後GHQはこのサイクロトロンを核研究施設と誤解し破壊、海中に投棄したとのこと。

実際マンハッタン計画では加速器を使ってウラン235を取り出すことが検討されており、GHQが誤解したのも無理はないのかもしれない。だが個人的には、加速器なんてほとんど真空パイプと電磁石でできているのだから、どうせ破壊するのなら海に捨てずに溶鉱炉にでも放り込んだほうが復興に役立ったのではないか思う。

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  • 純粋な鉄 (スコア:5, 興味深い)

    by Lafiell (6631) on 2008年07月21日 8時33分 (#1387412)
    この米軍がサイクロトロンを破壊したのは、米国ですら後に「科学に無知な軍部の蛮行」と
    非難されたそうですね。とはいえ、一般人には普通物の農薬がサリンの原料に見えるように、
    ある程度の専門家が居たとしても、原爆製造のどの段階まで進んでいるのか分かるものか、どうか。

    そういえばこのサイクロトロンのボール・チップについて最近興味深い記事を読みました。

    http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/news002264.html [nikkei.co.jp]

    元京大化研教授の柳父氏が、サイクロトロンからボールチップのみを取り外し、別の場所においていた
    ため進駐軍に見つからなかったそうな。
    柳父氏からボールチップを受け継いだ元京大講師の荻野氏が、スリーマイル島の残留放射能を測定する
    ときにこの鉄材が役に立ったとのことで、上記記事から引用。

     
    測定には自然界の放射線を遮る純鉄ブロックが必要。しかし戦後、溶鉱炉に放射性物質
    コバルト60が使われ、鉄材に微量混入しているため、市販品は使えない。「いい遮へい材がないか」と
    相談すると、柳父は答えた。「よいものがある。戦前の鉄材だからコバルト60を含んでいない」。
    それがポールチップだった。

    #この前中国産のステンレスから放射性物質が検出された、というのはどうもこのCo60らしく。

    • Re:純粋な鉄 (スコア:2, 参考になる)

      by Anonymous Coward on 2008年07月21日 10時56分 (#1387473)
      陸奥鉄 [geocities.jp]みたいなもんか。
      親コメント
    • Re:純粋な鉄 (スコア:1, おもしろおかしい)

      by Anonymous Coward on 2008年07月21日 14時28分 (#1387556)
      純粋な鉄 と聞いてこっちを先に思い浮かべてしまった・・・
      http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E8%A6%8B%E6%B5%A9%E5%BD%A6

      #しかし別に純粋ではない
      親コメント
    • by Anonymous Coward
      軍人なら敵国の生産工場や研究所を破壊しようと考えるのは当然でしょう。
      むしろ考えなかったら問題がある。
      馬鹿はそれを止める命令を下さなかった上部組織のほうです。
      • by Anonymous Coward
        上の人もわかっててニヤニヤしながら見てたのかも知れず。
        もっと上の人も「ま、いんじゃね別に」でスルーしたのかも知れず。
        # 後から学者がちょっと騒いだようではあるけど。
      • by Anonymous Coward
        エンジニアならダメシステムになろうと出来合いの仕様通りに作るのは当然でしょう。
        むしろ考えちゃったら問題になる。
        馬鹿なのはダメ仕様をOKした上司の方です。

        ということですね。わかります。
        • by Anonymous Coward
          工場の作業員ならそのとおりだが、エンジニアが考えることを放棄しちゃいかんだろう。
          え? あなたのとこは違う…?

          そりゃ…ご愁傷様としか……
      • by Anonymous Coward
        いえ、命令に従うことこそ絶対です。
        敵国の向上や研究所といえども、命令がないのに破壊したら命令違反です。

        それに、戦争はもう終わってるから敵国じゃないですし、むしろ、
        指導部を排除することで友好国として生まれ変わらせようとしてるんだから、
        意味なく反感を抱かせるのは、得策とは言えないはず。
  • by Anonymous Coward on 2008年07月21日 12時37分 (#1387503)
    転載可ということなので、ご紹介します。

    ●第28回市民科学講座
    「戦時下の科学―ドキュメンタリー『よみがえる京大サイクロトロン』を見て」
    http://www.csij.org/03/shiminkouza.html#28 [csij.org]
  • by epn (32606) on 2008年07月21日 10時39分 (#1387466)
    今回見つかった資料って、この辺に出てくる話の実験ログが見つかったって事ですか?
    http://brains.te.chiba-u.jp/~itot/work/genius/g6/riken_top.htm [chiba-u.jp]
  • by Anonymous Coward on 2008年07月21日 10時26分 (#1387458)
    > 結局基礎研究の段階で敗戦を迎えた。にもかかわらず、戦後GHQはこのサイクロトロンを核研究施設と誤解し

    「基礎研究」と「核研究」は排他的な関係なのでしょうか?
    その基礎研究は核兵器を作る目的でおこなっていたのでしょう?
    核(核兵器)研究施設であるというのは誤解ではなく正しい理解なのでは?

    誤解があるとすれば、核兵器完成にはほど遠いものであり、わざわざ
    破壊するほどのものでもない、ということを理解できなかったところに
    あるのではないかと思います。
    • by lazy_chain (35875) on 2008年07月21日 13時07分 (#1387517) 日記
      誤解の原因は、サイクロトロンは核兵器開発ではなく、主に核物理 [wikipedia.org]の研究の為に作られたということを(核物理も含めて)理解できなかったということだと思います。
      多くの人が核研究から核兵器を連想する点で当時も今も、たいして変わりませんな。

      仁科芳雄博士について [nishina-mf.or.jp]に 当時の状況の記述があります。
      親コメント
      • by Anonymous Coward on 2008年07月21日 13時58分 (#1387547)
        サイクロトロンを使っていた仁科博士は、基礎研究と同時に原子爆弾の研究も行っていた訳ですから、
        誤解もやむなしと感じます。

        親コメント
      • by Anonymous Coward
        タレコミ人なのかウィキが悪いのか知らんけど、「核研究」って書いたら包含されちゃうよなぁ。
      • by Anonymous Coward
        ひとりの研究者がおこなう研究について、そんなにきれいさっぱりと、切り分けられるものなのでしょうか。

        いまの研究者だって、たとえば複数の研究費をもらったら、この研究とあの研究は表向きは関係ないという
        ことになっていますが(でないと予算の使い方がぐじゃぐじゃになる)、どんなに切り分けたところで、
        こっちの研究から得られたデータがあっちの研究の参考になったりすることは、避けようもないし、
        避けるべきでもないです。最低でも、ウラン濃縮にサイクロトロンを使った方法は得策ではないという
        結論を出すためには、サイクロトロンの運転データが根拠になっているはずだし。

        それに、罪を着せられるかもしれない状況に置かれた人間やその仲間たちが語った内容を、そのまま
        額面通りに無批判に受け取るというのもどうかと思います。心情的には理解しますが。
    • by Anonymous Coward on 2008年07月21日 12時52分 (#1387510)
      核兵器研究をやっていたのは事実ですが、サイクロトロンは、核兵器研究には関係ありませんでした。

      サイクロトロンばかりが話題になるので、まるでGHQがやったことは誤解に基づくものばかりだとの
      印象が与えられがちですが、サイクロトロンについては誤解だった、ということです。
      親コメント
    • by Anonymous Coward
      サイクロトロンは無関係でしょ?
  • by Anonymous Coward on 2008年07月21日 8時16分 (#1387406)
    >どうせ破壊するのなら海に捨てずに溶鉱炉にでも放り込んだほうが
    鉄くずを原料にするのは電炉・・・というやり取りがつい最近にもあったような気がする・・・がどこだか思い出せない。
    • by LADY_ON_THE_LOOF (30195) on 2008年07月21日 17時25分 (#1387616) 日記
      鉄人28号?
      --
      ----- 傷の治療は傷より痛い -----
      親コメント
    • by Anonymous Coward
      電炉も高炉も溶鉱炉には違いあるまいて。
      • by Anonymous Coward
        鉄鉱石用の溶鉱炉に直接に鉄塊を突っ込んだら、何か不具合でも起きんのか?
        普通に精製出来ると思うんだが。まぁ、効率は悪いかも知れんが。
        • Re:溶鉱炉? (スコア:3, 参考になる)

          by mich (6859) on 2008年07月22日 0時08分 (#1387792)
          使えるよ。ただし、一度に大量投入は無理。

          高炉の場合、酸化鉄から鉄に変わるまでに反応熱を生じるので、炉を高温に保ってくれている。
          しかし、大量に鉄くずを投入した場合、温度を上げても熔けるだけなので、炉が固まってしまう恐れがある。
          高炉の中身が固まってしまうと、そこで生産終了。会社が傾くレベルの大損に…。

          逆に言えば、高炉の温度制御手段の一つなので、ちょっとずつ使う、が正解。
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        • Re:溶鉱炉? (スコア:2, 興味深い)

          by bochi-bochi (4490) on 2008年07月21日 18時08分 (#1387621) ホームページ 日記
          投入される鉄鉱石の酸化鉄から酸素を引っぱがして
          鉄を精製するのが高炉だから、あまり大量の鉄くずを投入されると
          還元反応がおかしくなって品質悪化を招くかも。

          --
          〜後悔先に立たず・後悔役に立たず・後悔後を絶たず〜
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        • by skobamoss (27007) on 2008年07月21日 19時09分 (#1387638)
          I'll be back.
          親コメント
  • by Anonymous Coward on 2008年07月21日 8時42分 (#1387418)
    >>GHQはこのサイクロトロンを核研究施設と誤解し破壊、海中に投棄

    米国にとっては、この「誤解」も織り込み済みだったんじゃないかな。
    • by Anonymous Coward
      > 米国にとっては、この「誤解」も織り込み済みだったんじゃないかな。

      というか、上層部も全部知ってて、あえてやらせたはずですが。
      米国としては基礎研究であろうと芽を潰すということで。
      • by kyo1 (28134) on 2008年07月21日 18時29分 (#1387629) 日記
        仮にも核研究施設として破壊するのに専門家の判断を得ずして破壊したって事はなさそうですよね。
        専門家の判断を仰いでないのであれば、そもそも判ってて破壊した。
        専門家の判断を仰いでいたとすれば、それにより判明したが技術力を削ぐために破壊した。
        辺りが想像されますが、いかがでしょ。
        親コメント
        • by Anonymous Coward
          >仮にも核研究施設として破壊するのに専門家の判断を得ずして破壊したって事はなさそうですよね。
          まさにそれをやってしまい、米国の研究者から激しい非難を浴びたのですが。
          たしか、現場の暴走と言う形で決着が付いていたのではなかったかと。
      • by Anonymous Coward
        米国としては日本が二度と立ち上がれないように
        貧しい農業国にしてしまおうという意図があった

        …けど、朝鮮戦争や米ソ冷戦で事情が変わった
        ということだったような。
  • どっちでも同じじゃないか
  • by Anonymous Coward on 2008年07月21日 18時50分 (#1387631)
    > Wikipediaによると、理研は1941年、陸軍から原子爆弾の開発を依頼された(二号研究)。

    カタカナの「に」を使うべきところが漢数字の2になってるので直してくださいなと。

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192.168.0.1は、私が使っている IPアドレスですので勝手に使わないでください --- ある通りすがり

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