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流し読みの範囲ですが.
関連しそうな論文 Phys. Rev. Lett., 106, 101101 (2011) [doi.org]http://arxiv.org/abs/1003.5914 [arxiv.org]
重力が量子化しにくいのはよく知られています.これは相対論(物体の作る重力が、その物体の存在する空間自体を変形させる)にそのまま量子論を適用すると,微小な領域での重力の揺らぎが空間を変形させ、その変形によってまた新たな相互作用が定義され……といった結果繰り込み不能な発散が生じるためです.これは非常に微細な領域(=重力の強い領域)で起こる紫外発散です.そのため,短距離でカットオフを入れる(ある程度以上短い領域で重力が強くなっていくことを見なかったことにする)ととりあえず発散は起きません(でもそのカットオフに物理的な意味がなければ,単なるこじつけでしかない).
これを解決する手段はいくつかあるのですが,有名な弦理論ではそもそもの重力を伝達する重力子やら何やらが有限のサイズを持つ弦からなる,という手法で解決します.つまり,ある程度のサイズのあるものが相互作用の主体なんだから,そのサイズより小さい領域は意味を持たないとしてカットオフが自動的に出てきます.そのかわり,こういった超弦が現実の物理的な相互作用を表していてかつ安定,という必要条件から弦は11次元もしくは26次元の実体を持たなければいけない,ということになります.
もう一つの手段として,空間次元の数を減らす,というものがあります.3次元では物体に近づくにつれ重力はr-2で強くなります(重力が球面として広がっていくから,1/その面積 で弱くなる,というイメージでOKです).これが2次元ではr-1でしか強くなりません(同様に,円周として広がっていくから,1/円周の長さ で弱くなる).さらに1次元なら,重力の強さはどこまで行っても同じです.つまり,微視的に見たときもし空間が2次元やら1次元だったなら,短距離では物体に近づいてもそれほど重力が強くならない,ということを意味しています.
これは短距離での相互作用の影響を減じる方向に行きますから,紫外発散は起こりにくくなります.実際,空間次元が1次元とか2次元なら相対論を量子化できることが知られています.(3次元の量子重力が難しいから,その基本的な性質を探ろうととりあえず低次元で量子重力理論を構築している人たちがいる)
今回の論文で述べられているのは,この「実は微視的には空間次元が少ないのでは?」という観点からの考察です.arXivの論文に図が載っているのですが,金網で出来たシートが何枚もあって,それが縦横に無限の枚数が並んで交差している様子を考えてください.例えばX=0,±1,,±2,……の無限個の平面と,Y=0,±1,,±2,……の無限個の平面が存在しているような状況です.遠くから見れば,全空間を埋め尽くす3次元の固体に見えます.ちょっと近づいてみると,実は何枚もの平面から出来た2次元の集合体であると判明します.さらに近づくと,その平面は1次元の金属線が組み合わさって出来ている,つまり小さなスケールでは1次元の物体であることがわかります.
空間がこういうものだとして量子重力を考えると,ある距離以下では1次元のため,物体に近づいていっても重力は増えません(1次元の重力は,同じ強さで伝播しているため).そのため紫外発散が起きず,量子重力理論がちゃんと作れるよ,という話のようです(この理論自体は少し前から出ているらしい).
今回のPRLの論文はその考えを使って考察を進め,もしそういう空間構造が事実だったとすると,高波数の重力波は存在し得ない(高周波=空間の微視的構造に対応し,その領域では空間が1次元になって自由度が減るから波として存在できない)ということを示しています.でもって,そのリミットは現在の装置で検出できる重力波の下限以下だよ,と.つまり,今行われている重力波検出実験で重力波が見えていないのは,装置の感度が低いわけではなく,(空間が微視的には1次元だの2次元だののせいで)そもそもそんな周波数の重力波が存在できないからなんじゃないの?という主張のようです.で,もっと低周波の重力波が検出できる装置を作ると,ある周波数以下から検出できるようになるはずで,そうなると空間が少ないことの実験的証拠になるんじゃない?と.
dodongaです。
論文は以上に加えて、宇宙創生初期段階まで述べています。
重力波に明確な遮断周波数があれば(観測できれば)、重力波が伝達できるのは次元が 4次元(空間3-時間1)になってからなので、その時に3次元(空間2-時間1)から4次元になった 証拠になるのではないか・・・と。 高エネルギ~宇宙線や加速器で、その証拠は既に手に入れているのではないか・・・と。
# 観測可能な値と宇宙モデルから求められる値(これは一意には決まっていない)で# 概算値を計算し、提示してますが省略;
重力波の周波数(エネルギ~に比例する)に上限があれば、宇宙初期は今の4次元ではない 明確な証拠となるので観測する事を提案する・・・
と締めくくられてます。
# 非常に明快なコメントにコメントをつけるのは憚りましたのですが、ココへ。^^;
追伸
その後「100TeVのエネルギー状態にまで冷やされた」時点で空間次元が折りたたまれ2次元となり
これ、係りが逆です。 原文がヘンなのですけども・・・;;。
「折り畳まれたいた時空が2次元となり」
ですね。
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192.168.0.1は、私が使っている IPアドレスですので勝手に使わないでください --- ある通りすがり
概念だけ (スコア:4, 参考になる)
流し読みの範囲ですが.
関連しそうな論文
Phys. Rev. Lett., 106, 101101 (2011) [doi.org]
http://arxiv.org/abs/1003.5914 [arxiv.org]
重力が量子化しにくいのはよく知られています.これは相対論(物体の作る重力が、その物体の存在する空間自体を変形させる)にそのまま量子論を適用すると,微小な領域での重力の揺らぎが空間を変形させ、その変形によってまた新たな相互作用が定義され……といった結果繰り込み不能な発散が生じるためです.これは非常に微細な領域(=重力の強い領域)で起こる紫外発散です.そのため,短距離でカットオフを入れる(ある程度以上短い領域で重力が強くなっていくことを見なかったことにする)ととりあえず発散は起きません(でもそのカットオフに物理的な意味がなければ,単なるこじつけでしかない).
これを解決する手段はいくつかあるのですが,有名な弦理論ではそもそもの重力を伝達する重力子やら何やらが有限のサイズを持つ弦からなる,という手法で解決します.つまり,ある程度のサイズのあるものが相互作用の主体なんだから,そのサイズより小さい領域は意味を持たないとしてカットオフが自動的に出てきます.そのかわり,こういった超弦が現実の物理的な相互作用を表していてかつ安定,という必要条件から弦は11次元もしくは26次元の実体を持たなければいけない,ということになります.
もう一つの手段として,空間次元の数を減らす,というものがあります.3次元では物体に近づくにつれ重力はr-2で強くなります(重力が球面として広がっていくから,1/その面積 で弱くなる,というイメージでOKです).これが2次元ではr-1でしか強くなりません(同様に,円周として広がっていくから,1/円周の長さ で弱くなる).さらに1次元なら,重力の強さはどこまで行っても同じです.つまり,微視的に見たときもし空間が2次元やら1次元だったなら,短距離では物体に近づいてもそれほど重力が強くならない,ということを意味しています.
これは短距離での相互作用の影響を減じる方向に行きますから,紫外発散は起こりにくくなります.実際,空間次元が1次元とか2次元なら相対論を量子化できることが知られています.
(3次元の量子重力が難しいから,その基本的な性質を探ろうととりあえず低次元で量子重力理論を構築している人たちがいる)
今回の論文で述べられているのは,この「実は微視的には空間次元が少ないのでは?」という観点からの考察です.arXivの論文に図が載っているのですが,金網で出来たシートが何枚もあって,それが縦横に無限の枚数が並んで交差している様子を考えてください.例えばX=0,±1,,±2,……の無限個の平面と,Y=0,±1,,±2,……の無限個の平面が存在しているような状況です.遠くから見れば,全空間を埋め尽くす3次元の固体に見えます.ちょっと近づいてみると,実は何枚もの平面から出来た2次元の集合体であると判明します.さらに近づくと,その平面は1次元の金属線が組み合わさって出来ている,つまり小さなスケールでは1次元の物体であることがわかります.
空間がこういうものだとして量子重力を考えると,ある距離以下では1次元のため,物体に近づいていっても重力は増えません(1次元の重力は,同じ強さで伝播しているため).そのため紫外発散が起きず,量子重力理論がちゃんと作れるよ,という話のようです(この理論自体は少し前から出ているらしい).
今回のPRLの論文はその考えを使って考察を進め,もしそういう空間構造が事実だったとすると,高波数の重力波は存在し得ない(高周波=空間の微視的構造に対応し,その領域では空間が1次元になって自由度が減るから波として存在できない)ということを示しています.でもって,そのリミットは現在の装置で検出できる重力波の下限以下だよ,と.
つまり,今行われている重力波検出実験で重力波が見えていないのは,装置の感度が低いわけではなく,(空間が微視的には1次元だの2次元だののせいで)そもそもそんな周波数の重力波が存在できないからなんじゃないの?という主張のようです.で,もっと低周波の重力波が検出できる装置を作ると,ある周波数以下から検出できるようになるはずで,そうなると空間が少ないことの実験的証拠になるんじゃない?と.
Re:概念だけ (スコア:2, 興味深い)
dodongaです。
論文は以上に加えて、宇宙創生初期段階まで述べています。
重力波に明確な遮断周波数があれば(観測できれば)、重力波が伝達できるのは次元が
4次元(空間3-時間1)になってからなので、その時に3次元(空間2-時間1)から4次元になった
証拠になるのではないか・・・と。
高エネルギ~宇宙線や加速器で、その証拠は既に手に入れているのではないか・・・と。
# 観測可能な値と宇宙モデルから求められる値(これは一意には決まっていない)で
# 概算値を計算し、提示してますが省略;
重力波の周波数(エネルギ~に比例する)に上限があれば、宇宙初期は今の4次元ではない
明確な証拠となるので観測する事を提案する・・・
と締めくくられてます。
# 非常に明快なコメントにコメントをつけるのは憚りましたのですが、ココへ。^^;
追伸
これ、係りが逆です。
原文がヘンなのですけども・・・;;。
「折り畳まれたいた時空が2次元となり」
ですね。
閑話休題
Re: (スコア:0)
空間の等方性との折り合いをどうつけるんだろう。
「絶対空間はないと思っていたが、気のせいだったぜ!」