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医療

がん細胞への近赤外光線免疫療法による治験がFDAに承認される 18

ストーリー by hylom
光で倒す 部門より
h-harry 曰く、

体の外から光線を当ててがん細胞を死滅させる新しいがん治療法「光免疫療法」を、米国立衛生研究所(NIH)の日本人研究者らが開発したと報じられている(読売新聞日本アイソトープ協会の「展望」PDF)。近く米国の3大学で安全性を確認するための臨床試験を始めるという。

がん細胞に結合するたんぱく質(抗体)に、近赤外線で化学反応を起こす化学物質(IR700)を追加。この抗体を注射で体内に入れ、がん細胞に抗体が結合した後で体外から近赤外線を当てると、光を吸収したIR700が、周囲の温度を急速に上昇させることによって水の膨張が起こり、その圧力波によって細胞膜が障害されると考えられているようだ。

近赤外光線免疫療法は、短時間の近赤外光照射で広範に散らばったがん細胞を消滅することができるので、例えば手術で取りきることが難しかった膵臓癌や悪性中皮腫、卵巣癌の腹膜転移などのがんに対して縮小手術を行って、手術終了前に、近赤外光線免疫療法で取り残し部分のがん細胞を完全に消滅させて治療を終わることも可能であろう。

また、血液中を流れているがん細胞や白血病細胞などは、抗体の注射とリストバンド型や毛布型の照射装置などでの就寝時の長時間照射などを行って、手術前後の血中がん細胞の除去による転移抑制や血液がんの治療に応用することも可能である。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 最小浸潤による治療手段とか光利用ということで、ニュースにするには目新しかったのでしょうね。もう10年以上に渡り(地味に)研究されている手法です。

    ここで紹介されている治療法についての論文(2011)でも言及されているように、従来のPDTのメカニズムと少々異なるものの、抗体を使って(故にimmuno-とされている・免疫系を活性化して云々の手段を使っているわけではない)標的へ細胞殺傷原因物質をより特異的に届けることを加えたPDT、と考えました。

    --上で引いた2011年論文
    Photoimmunotherapy: comparative effectiveness of two monoclonal antibodies targeting the epidermal growth factor receptor
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22057348 [nih.gov]

    --PDTの解説
    "Photodynamic therapy (PDT) is a treatment that uses a drug, called a photosensitizer or photosensitizing agent, and a particular type of light."
    http://www.cancer.gov/cancertopics/treatment/types/surgery/photodynami... [cancer.gov]

  • by wakatonoo2 (30019) on 2015年05月09日 10時38分 (#2811092) 日記

    技術的には目新しいことは無いですね。
    検索すると説明はたくさん出てきますが結構一般的です。

    患者に光に反応する薬を注射し、外部から光を照射して「(光学的な)火傷」で治療するものです。
    この治療法では600nm(赤色)~1000nm(近赤外線)のあらゆる光で、
    火傷するので真っ暗な部屋で行う治療法です。

    光線力学療法 [wikipedia.org]
    >光線力学療法(こうせんりきがくりょうほう、英語:Photodynamic Therapy)とは、生体内に光感受性物質(光増感剤)を注入し、標的となる生体組織にある波長の光を照射して光感受性物質から活性酸素を生じ、これによって癌や感染症などの病巣を治療する術式である。光線力学的療法ともいわれる。

    光線力学療法(PDT)について [kyoundo.jp]
    >光線力学療法(Photo-dynamic therapy; PDT)とは、レーザー光に反応する薬剤(フォトフリン)を静脈注射した後に、レーザー光線を病変部に照射しがん細胞を壊すという治療法です。
    強い光に当たると日光過敏症が起き、しみが残ることもあるので遮光管理が必要です。徐々に部屋を明るくするため入院生活を20日間、退院後さらに5週間はできるだけ強い光を避けることが必要です。

    光線力学療法に対するパルスオキシメータの影響 [nihonkohden.co.jp]
    >Photo Dynamic Therapy(光線力学療法)中の患者のSpO2モニタリングを行う場合、パルスオキシメータプローブの照射光により、プローブ装着部で熱傷を生じることがあります。Photo Dynamic Therapyは光反応性をもつ薬剤を投与し、光過敏性の副作用があります。
    ※パルスオキシメータでは660nmと900nm程度の光を計測に使用します。皮膚に密着させて光があたるので火傷する可能性があります。

  • by Anonymous Coward on 2015年05月09日 17時38分 (#2811324)

    日本の伝統
    こたつ型照射機希望
    というか
    注射して患部を露出して普通のこたつに入ればOKなんじゃないの?
    っていうかハロゲンランプ並の出力の近赤外線LEDってあるの?
    術後とかなら一日中こたつに入っていたいような気がする。

  • by Anonymous Coward on 2015年05月09日 9時00分 (#2811066)

    ですむのだろうか、身体の深部の場合は…

    • >ですむのだろうか、身体の深部の場合は…

      抗体(IR700)をがん細胞と結合させておいて、そこに近赤外光をあててがん細胞を選択的に破壊する。

      近赤外光で肌表面や体内水分には共振波長帯が無い辺りの光が体内深部まで到達しIR700に選択的吸収されて「そこだけ」を加熱し細胞破壊に至る。
      んだろうな、と推測してます。

      そこそこのパワー(光の量?)が必要でしょうけど、イマドキなら近赤外光だとLEDで生成できそうだし、肉体的にも負担にならなくて治療ができるならいいっすね。
      一気に患部を破壊するなら高エネルギーなパルス照射だろうけど、肉体の負担を抑えるためにギリギリ細胞を破壊するだけの熱量を与えるために継続的に照射するならCWになるのかな。

      いろいろ妄想が広がる・・・

      親コメント
  • by Anonymous Coward on 2015年05月09日 9時06分 (#2811067)

    抗体利用って、抗体がターゲットとなる癌細胞に取り付いたら、あとは白血球が食べてくれるってものでは無いんですかね?
    光を当ててやらなくても。

    • by Anonymous Coward

      そういう治療法もあるけれど
      今回のは説明を読む限り機械的な精密爆撃に見える

    • by Anonymous Coward

      抗体というのはこういった利用法の観点から雑に言ってしまえば標的にピタッと張り付く便利道具のくくり

      抗原と結合すればそれで治療効果を発揮したりする中和抗体
      仰るように生体の持つ免疫機能をうまく活用するための補助として利用するもの(細胞免疫を利用する場合オプソニン化という)
      抗体にマーカーとして仕込んだラジオアイソトープ、非放射性の同位体、抗体自体の蛍光等を利用したマーカーとしての利用
      今回のように爆弾の誘導装置的な利用

      いろいろある

      • by Anonymous Coward

        なるほど。つまり今回作られた抗体は白血球に攻撃対象として認識されるようなタイプではなかったということですか。

        してみると、何で(白血球に認識されるタイプの抗体を作って)白血球に食わせるのではなく、
        抗癌剤+光でがん細胞を破壊する方を選んだのかと言う疑問がわいてくるのですが、
        どういった理由が考えられるものなのでしょう?
        前者の方がより手間が掛からないように思えるのですが。

        抗癌剤+光方式の方が、より確実にがん細胞を破壊できる?
        それとも前者の方式はさんざん他で試みられているので、
        新しい手法の開発と言う意味で、とりあえずどれほど効果がでるかやってみると言う話?

        • by Anonymous Coward on 2015年05月09日 10時59分 (#2811102)

          オプソニン活性を利用する方法は自身の免疫力を利用するもの
          免疫力が落ちている場合極端に言ってしまえば無効

          熱力学的な方法は抗体が標的に届くだけの生体機能が維持されていれば免疫力は関係ない

          要するに別の方法
          ミサイルが強力だから機関銃が不要ということにはならない

          手段の選択肢多いほうがよい
          併用もあり得る

          親コメント
          • by Anonymous Coward

            他に考えられるのは、抗体が別の箇所でも何かにくっついてしまうため、物理的に部位を限りたい場合とか。
            あえて極端な例を書けば、ある抗体は肝臓癌にくっつくけど造血細胞にも多少くっついてしまう、なんてのがあった場合、「くっついたものならどこでも何でも壊しちゃうぞ」な治療法では身体にダメージが大きい。
            そのとき、「がん細胞にくっつきやすいもの」と「ある特定部位にだけ攻撃を加える手法」を組み合わせると、がん細胞だけ集中して高いダメージを与えることができるわけ。
            類似で放射線治療とデカいホウ素含有分子の組み合わせとかもありますね。

            なんにせよ、「○○に効く」とか「○○特異性」とかは決して「100%それにだけ向かい、他にはダメージを与えない」ってわけにはいかないので、複数の手法を組み合わせて”攻撃精度”を上げることは意義があるのです。

            #もちろん頑張っても「精度は高いがダメージは小さい」ということもあるので絨毯爆撃せざるを得ないケースもあるんですけどね…。

        • by Anonymous Coward

          副作用がなく良い感じに「利く」物質が都合良く見つかるとは限らない(そもそも存在するのかどうかという保証すらないところで頑張って探さないといけない)

          • そうそう
            免疫学的治療法に限らず、現実の治療法は"癌がスッキリ消える特効薬"などではなく
            副作用を勘案しつついろいろ組み合わせて癌細胞を削っていく持久戦に近い

          • by Anonymous Coward

            「効く」

            • by Anonymous Coward

              > 「効く」

              「利く」でも「効く」でも、どちらでも良い。

              重箱の隅をせせる様な愚かな書き込みに見えるんだが、実はもっと重大な指摘を含んでいるのかな?

  • by Anonymous Coward on 2015年05月09日 15時17分 (#2811238)

    2012年1月の記事

    このほど、東京大学大学院医学系研究科の浦野泰照教授とアメリカ国立衛生研究所(NIH)の
    小林久隆主任研究員らは、スプレーするだけでがん細胞のみを光らせることのできる蛍光試薬を開発。
    手術時に、1ミリ程度のごく小さながんを光らせることで、経験の浅い医師でも、客観的に目で確かめながら
    切除できる道を開いた。
    http://www.natureasia.com/ja-jp/jobs/tokushu/detail/246 [natureasia.com]

    ここからわずか3年で、がん細胞だけを光らせる技術を、がん細胞だけを死滅させる技術に発展させたのですね。
    オバマ大統領が2012年の一般教書演説で、「米政府の研究費によって、がん細胞だけを殺す
    新しい治療法が実現しそうだ」と発言しているのだから、当時から予定されていたのでしょう。

    体の外から光線を当てるという方法だと、医師の目に見えないような大きさのがん細胞に対して
    効果が期待できそうですね。

    日本人研究者の活躍を誇らしいと思う気持ちもありますが、頭脳流出問題も考えておかないと
    いけない昨今の状況です。

    • by Anonymous Coward

      研究者に頻繁に国歌を歌わせれば日本という国の素晴らしさを再認識して頭脳流出問題もすぐに解決するんじゃないかな

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