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Pravdaの日記: 毒ガス開発の父ハーバー

日記 by Pravda

宮田親平『毒ガス開発の父ハーバー 愛国心を裏切られた科学者』(朝日選書)、読了。

空中窒素固定法をBASF社の技師ボッシュと開発・実用化したフリッツ・ハーバーの伝記です。ハーバーは日本の暦でいうと明治元年に生まれ、昭和9年に亡くなった人。大正13年には星一(ほし・はじめ:SF作家の星新一の父)の招待で来日しています、

プロイセンはフリードリッヒ大王以来、ユダヤ人に寛容だったそうで、鉄血宰相ビスマルクがドイツ統一を成し遂げた後の1871年、ユダヤ人の完全な法的自由が認められます。そういう時代背景の中、ユダヤ系の出自で筋金入りのドイツ愛国主義者だったハーバーは、友人のアインシュタインから「君は傑出した才能を大量殺戮のために使っている」と言われ、夫の毒ガス開発と使用に反対した最初の妻クララは自殺し、晩年にはナチス政府の手で国外追放となる悲劇の人生。

星一は、第一次大戦後のドイツ科学界の窮状に対し「星基金」を創設して復興に助力し、またハーバーが国外追放されたニュースを聞いて日本に来るよう招聘したそうです。その一方、著者の宮田親平氏は、「ハーバー来日の際、日本陸海軍から毒ガスと空中窒素の講義の依頼があり、それを星一が斡旋した」という見方をしています。

この本の「あとがき」に書かれてますが、同著者による『毒ガスと科学者』(文春文庫)と重複する内容が多いのですけれど、フリッツ・ハーバーの生涯にスポットを当て、科学の光と影について考えさせられる一冊。

しかし、「星基金」の恩恵を受けたオットー・ハーンが原子核分裂を発見し、やはり「星基金」の援助を受けたレオ・シラードが「マンハッタン計画」に加わり、完成した原爆が日本に投下されたのは、歴史の皮肉とでも言うべきでしょうか。

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「毎々お世話になっております。仕様書を頂きたく。」「拝承」 -- ある会社の日常

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