akiraaniの日記: 「スティーブ・ジョブズ」は紙の書籍をの赤字をなぜ電子書籍で取り返せたのか 1
講談社の伝記「スティーブ・ジョブズ」、書籍版はまだ赤字 に関連する話。
個人的に件のブログの記事を読んで一番驚いたのは「電子書籍版含めて黒字化したらしい」という話。
なぜ驚いたかと言うと、以前に出版社にとって電子書籍って何かいいことあるのか?でネタにしたんですが、日本の電子書籍って基本儲からないからです。
主な理由は「売れる絶対数が少ない」「電子版は安値を強制される」「電子化コストが案外高い」あたりです。(※1)
では、なぜ「スティーブ・ジョブズ」はそれが可能だったのか。
まあ冷静に考えれば、上で挙げた条件には引っかからない例外的な商品だったからということが分かります。
まず、「売れる絶対数が少ない」という点についてですが、これは当てはまりませんよね。売り上げはもちろん、販売数でも年間で1,2を争う数字だったはずです。
次に、「電子版は安値を強制される」という話ですが、このタイトルはなんと電子書籍も紙の書籍も同じ値段です。
最後に、「オーサリングコストが案外高い」という話ですが、このタイトルに関しては電子版と紙の書籍が同時販売です。紙の書籍を電子化する場合、表示確認して見れない部分をチューニングしてなくすという後戻り工数が発生しますが、電子版と並行して作るのであればそういうコストは最小限で済みます。加えて、紙の書籍の装丁が豪華なのでそれに比べると相対的にコストは少なかったことが予想されます。
逆に、紙の書籍が赤字だった理由は、複数の要因が重なったのではないかと思います。記事ではロイヤリティが高かったことが原因とされていますが、おそらくこれは最後のトドメ的な要素だったのではないかと思います。
発売当時も価格が高い高いと散々叩かれていましたが、これは装丁を豪華にして分冊したことを考慮すればさほど高いという価格設定ではないはず。分冊して装丁を豪華にするということは、すなわちランニングコストがかさむということなので、リニアに出版社印税にかかわってくる。そこからさらにロイヤリティを引くことになるので、原価率がしゃれにならない状況になったのではないかと。
その点、電子版は装丁や仕様が豪華になってもイニシャルコストが増えるだけでランニングコストが増すといったことはないので、採算分岐点そのものは紙の書籍よりもずっと少ない。今回のケースだと、豪華装丁の価格設定という電子書籍では異例の高い価格付けで万単位の販売数を稼いだわけで、多少のロイヤリティは問題にならなかったのだろう。
仮に、通常の電子書籍がそうであるように、電子版のオーサリングコストを紙の書籍の製作コストに付け回していたとすれば、イニシャルコストも帳簿上はゼロなので単純に出版社印税からアップルへのロイヤリティを引いた額がそのまま利益になるはずです。
素人の予想なので見えてない要素も多々あるかと思いますが、案外こんなところなんじゃないですかね。
まあ、どっちにしても他の書籍ではめったなことではまねできない話であることは確実かと……。
※1
小学館、集英社、講談社が電子書籍でアマゾンと組みそうな「ワケ」 ――電子書籍に死骸累々の「出版界」(編集者の日々の泡)が参考になるかと思います。