よく通る道の高架の下に、日雇いのおじさんたちの事務所みたいなのがある。
そこの作業員募集の看板に「斫り業の○○」と書いてあって、
「斫」の上に小さくカタカナで「ハツ」と読みがなが振られている。

昔なんとなくその字が気になって、でっかい漢和辞典で調べてみたことがある。
ところが。
読み方は「ハツ」だと分かっているが、音訓索引には載っていない。
そこで石扁から探してみた——載っていた。だが「ハツ」という読みがない。
これはいったいどういうことだと少々混乱しながら、
ひょっとして「斫」という字は別の字の略字とか当て字のようなものなのかとか、
雨などで一部が消えてしまって読み間違えてしまったのかもしれないとか、
そもそもこれを書いた人が字を間違えているのではないかとか、
色々と仮説を立てるも解決はせず、そのまま謎は残っていたのだった。

で、その道は今でもよく通るので、
通るたびに「斫り業」とは何ぞやとは思っていたのだが、
ついさっき、それが偶然にも解決した。
俗字の字典というページの中に、俗訓として紹介されていたのだ。

• 「～斫り工業」という名前の会社は全国に存在するらしい
• やはり漢和辞典にはこの読みは載っていないらしい
• 「斫る＝はつる＝削り落とす」という当て字は、業界では一般的らしい

余談だが、この俗字の字典に辿り着いたのは、
『フィネガンズ・ウェイク』の商品の説明で、柳瀬尚紀氏が紹介していたからである。
こういう小さな疑問が意外なきっかけで解決すると、ちょっと嬉しい。

＃あれ？今goo辞書で試しに調べてみたら、あっさりと載っているぞ。謎だ……。