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日記

chuukaiの日記: ダウンロード刑罰化 + 警察内部でサイバー犯罪検挙件数ノルマが実際に課されている = 違法ダウンロード検挙数が年々増加する可能性

日記 by chuukai

・警察内部ではサイバー犯罪検挙件数がノルマとして課されているのか
 ここでは警察でのノルマの当不当については論じませんが、交通違反の検挙でノルマが課されていることはよく知られたことだと思います。そのあたりは警察のノルマ その実態と弊害に詳しく書かれています。
 私たちのような一般人には、警察のノルマが存在することを確かめる手段は、上記のようにインターネットで他者が発信したものや報道などの間接的な方法であり、その内容は伝聞でしかないのですが、今回は伝聞でなく、その存在を示すポインタとなるものを紹介したいと思います。
 それは、「平成24年度実績評価計画書」国家公安委員会・警察庁,平成24年3月です。
 この文書の23頁、基本目標7 業績目標1は「情報セキュリティの確保とネットワーク利用犯罪等サイバー犯罪の抑止」で、業績指標は「サイバー犯罪の検挙件数」となっています。
 ここで「サイバー犯罪」とは何かというと、「高度情報通信ネットワークを利用した犯罪やコンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪等の情報技術を利用した犯罪」(警察白書平成23年版第1節サイバー犯罪の現状1サイバー犯罪の概況(1)サイバー犯罪の検挙状況の注意書きより)です。内訳は不正アクセス行為、ネットワーク利用犯罪、コンピュータ・電磁的記録犯罪のことです。私が調べた範囲では、明確に違法ダウンロードをサイバー犯罪としている警察の文書を見つけることはできませんでしたが、違法ダウンロードをネットワーク利用犯罪=サイバー犯罪の範囲外にするほうが難しいので、違法ダウンロードはサイバー犯罪に含まれていると解しています。
 「検挙件数」は、警察が事件を検察に送致・送付し、又は微罪処分をした件数です。
 この文書では、サイバー犯罪の検挙件数を過去3年間の平均値よりも増加させれば、「情報セキュリティの確保とネットワーク利用犯罪等サイバー犯罪の抑止」という目標が達成できたと考えています。
 ここで不思議な事は、「過去3年間の平均値」は数字で表せられるはずなのに、書かれていないことです(平成24年2月17日に開催された第23回警察庁政策評価研究会で、平成24年度実績評価計画書の案が提出されているので、それまでには23年度の件数は判明していたでしょう)。試しに計算してみると、先ほどの「警察白書」を見れば、21年度6,690件、22年度6,933件で、平成24年3月15日付け広報資料「平成23年中のサイバー犯罪の検挙状況等について」を見ると、23年度5,741件ですから、「過去3年間の平均値」は6,454件余りになります。
 こんなに簡単で、政策評価研究会の議事録(8頁)で委員から「目標が数値で表せるものは数値にして明確にしていただいた方が良い」と言われているのに、数字で明確に表さなかった理由は警察に直接聞くしか無いのですが、もう面倒なので推測してみます。
 私が推測する、数字で明確に表していない理由は「数字で明確に表してしまうと、数字の形でノルマが課されているという、警察が隠したがっている事実の一部が目に見えてしまうから」です。
 もちろんこれは根拠がない推測なのですが、自分としては的をそんなに外してないと思います。ちなみに、ノルマを設定していると言われる全都道府県警察本部でも同じように色々な検挙件数を目標達成の基準として作っていて、数字の形で表されている場合があまり無いのですが、たまに数字の時もあります。つまり数字にできるけれど組織的には隠したいということだと私は理解しています。

・違法ダウンロードの検挙数は年々増加するか
 23年度の達成目標は(1)不正アクセス行為の検挙件数を過去5年平均より増加、(2)ネットワーク利用犯罪の検挙件数を最近の増加傾向を維持する、でした。
 23年度の実績は(2)のネットワーク利用犯罪の検挙件数は5,388件(前年比+189件、+3.6%)と目標を達成したのですが、(1)の不正アクセス行為の検挙件数は248件(前年比-1,353件、-84.5%)と大幅に減少しました。これは、不正アクセス行為の検挙件数の中に、余罪の多い犯罪(例:大規模なオークション詐欺)があるかないかで年度に差が出てくるためですが、過去5年平均より増加という目標に未達になってしまいました(警察庁政策評価研究会議事録では、◎○△のうち△だが、基本目標「安心できるIT社会の実現」全体では目標をおおむね達成という評価)。
 24年度は、23年度の不正アクセス行為とネットワーク利用犯罪に、コンピュータ・電磁的記録犯罪を加えたものをサイバー犯罪として、その検挙件数を目標としました。
 そのサイバー犯罪の検挙件数の推移を見ると、13年度から22年度まで右肩上がりに上昇していました(23年度警察白書より。他の統計資料を見るとそれ以前から増加傾向にありました。)が、23年度は大幅な減少(前年比17.2%減)に転じました。
 もし、24年度のサイバー犯罪の検挙件数が過去3年間の平均値よりも増加することがノルマとしてあって、24年度の検挙件数が23年度と同レベルで推移すると仮定すると、24年度(仮に5,741件)はノルマ(「過去3年間の平均値」6,454件)を達成できないことになります。
 ノルマを達成できないことが明らかになっていくと、幹部が部下に指示することは「なにかで帳尻を合わせろ」であることが多いでしょう。その「なにか」の有力な候補が違法ダウンロード検挙だと、私は考えるわけです。
 ただし、24年度はまだ終わっていないので、違法ダウンロード以外の検挙件数が予想よりも多くてノルマ達成が容易になるかもしれません。特に、24年度にはフィッシング行為の禁止を定めた不正アクセス防止法の改正があり、その施行が24年5月からだったので、その検挙件数が増えるかもしれません。
 でも、年度が変わる毎にどんどんハードル(過去の年度の平均値)が上がっていくと、ノルマ達成はますます難しくなりそうです。そうであれば、違法ダウンロードの検挙件数を上げていくという方針が掲げられてもおかしくはない、言い換えると自然にそうなってしまう恐れは強くあるだろうと思われます。

 以上が私の分析ですが、結果だけの帳尻合わせが起きないようにするにはどうしたらよいかということは、評価基準を設定し、評価結果を還元する際の大きな問題で、なかなか解決しないと思います。警察の方々の不断の努力を期待します。

 この日記の記事は高木浩光@自宅の日記「ダウンロード刑罰化で夢の選り取り見取り検挙が可能に」から着想を得ています。また、ダウンロード刑罰化が警察官の検挙数ノルマをクリアするために使われるという指摘は2ちゃんねるの関連スレの中のレスにもありました。

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