業務フローの打ち合わせで、「ここは自動的にコードが振られるよね」などと言いながらノートをつけていたら、ひらかなの「ふ」が出てこなくなってしまった。

漢字の「振」とカタカナの「フ」は問題なく思い出せる。でも、「ふ」の字形が出てこない。頭の中に四角いマスを用意して、何度も「ふ」を書いてみようとするのだけれど、最初の書き出しでつまずいてしまう。

周囲に聞こえぬようにこっそりと、口をすぼめて「ふ」と発音してみる。大丈夫、音声はイメージできる。だけど、いざその姿を捉えようとすると、途端に手応えがなくなってしまう。ぼんやりとした形すら浮かばず、のっぺらぼうのようにつるりとしている。奇妙な喪失感と、言いようのない焦りが、じわじわと体の中に広がる。恐い。

気を取り直し、中空をペンでなぞるように「は」「ひ」と続けていたら、ようやく「ふ」が出てきてくれた。嬉しくて思わずノートに書き留め、しっかりと目で確認する。救出まで、時間にして 5 秒くらいだったろうか。ああ良かったという安堵感とともに、苦いやるせなさが残った。

とほほ。