パスワードを忘れた? アカウント作成
142422 journal

okkyの日記: ものさしが直交しているのと、独立事象なのとは別

日記 by okky

表の記事『Geek は「いい人」よりも「能力ある人」がお好き?』 において、「いい人/悪い人」と「能力がある/能力がない」は別の次元なんだから…と反論する人が多数なのを見て思い出したこと。

.

今から10年以上前の話。当時PHSだってまだまだ隆盛で、というか携帯端末のデータ通信に限って言えばPHSの方が早かったという時代。この携帯端末にどうやってPCとかと同じ…あるいはフルセットとは行かなくてもサブセットソフトを入れ込むか、というのが研究テーマとして流行った事があります。ロータスノーツとか。JVMとか。

まぁ、フルセットを本当に入れると酷いことになるのは誰でも予測が付いている話なので、
1) どの機能を切るか
2) どういうハードウェアを前提にするか
という2つが焦点になる。研究者はいろいろ案を出すわけです。

しかし、1 に関してはあまりにも大事な機能を切り捨てるのでは意味が無い。 2 に関しても、自分たちでハードを組み立てるわけではないので、ある程度常識に即したハードウェア構成で行き、「ただ、ここだけは…」というポイントを押える必要がある。可能ならばぎりぎりまですでにあるものと同じスペックで「ここをほんの少しパワーアップすると、こんなソフトが動くようになります」と持って行きたい。で、そこを足がかりに、ハードウェアとかも売り込みたい。

で、調べたわけです。既存のデバイスの制作費と、CPUの能力、メモリサイズ、等々を。で、プロットしたわけですね。どういう分布になっているのか、と思って。

全部、互いに、一直線に載りました

まぁ、厳密にはいつ出たのか(つまりいつの時期にデザインしたのか)で、若干チップのお値段とかにバラツキがありましたが、はっきりと誤差と判る範囲。

つまり、高いデバイスには、速いCPUとたっぷりのメモリが乗りバスも高速。安いデバイスには遅いCPUとちょっぴりのメモリが乗りバスも低速。
「遅いCPUでも、メモリがふんだんにあれば」
「早いCPUがあれば、メモリが多少少なくても」
などという夢に基づいた提案は全て費えたわけです。経済、恐るべし。

.

よくよく考えてみたら、こうなるのは当たり前の話で。

仮に、値段を少し上げて、メモリを1.2倍にしたデバイスを出したと考えましょう。で、そうするととても魅力的なソフトが動くようになる、と。で、それがヒットしたとします。

当然、他の会社もそのバランスポイントに移行した製品を出す。メモリ的には量産効果が出るのですぐにそのサイズが最廉価ポイントに移動します。また、そのバランスポイントをサポートできないCPUやバスなどはニーズが一気に減るので値段が大幅に下がる。

すると、新しいバランスポイントに追従できたデバイスは新しい常識を作り、そうじゃないものは値段が下がる。どこまで下がるかと言うと、「線形直線上に載る」ポイントまで落ちる。そこまで落ちると、「それでいいや」というニーズが出てくるから。

結果として、CPUとかメモリとかバスとかは、互いに直交したものさしのはずなのですが、それらを組み立てたデバイスは「値段」に対してきれいに直線状に載ってしまい、独立事象ではなくなってしまう。

.

で。「いい人/悪い人」と「有能/無能」。

確かにこの2つは直交した概念です。が、独立事象と言えるのか?

万人に対して意地が悪くて無能な人は、昇進する事はありませんし、何かの理由をつけて首がすっ飛ぶでしょう。少なくとも周囲から信頼されたりはしないはずです。

いい人で有能な人って、果たして本当にいるのか? 有能だと言うことは成果が出という事ですが、いい人というのは大抵周囲の尻拭いをやっている人です。なので その人の有能さはきちんと見えない/評価されない 事が多い。結果としてこのタイプは「いい人」ではあるが「有能とはみなされない」。

となると。実は、

  1. いい人で、本当に無能な人
  2. いい人で、本当は有能なんだけれど周りがよく判っていない人
  3. 悪い人で、だけどすごい有能(ギャップのせいで際立つ)
  4. 悪い人で、無能(なので、すぐ集団から追出されていなくなる)

の4種類に分かれるって事になる。

で、1と2は区別が付かないので、ただの「いい人」と一塊にしか見えない。4はすぐいなくなるし、明白に『これがいい』と言う人なんぞいるわけが無い。で、3は「有能さ」が良い点で「人が悪い」のが悪い点になるので、表現としては「有能」になる。

となると。付き合って行きたいタイプと言うのは、「いい人」か「有能な人」かどっちがいい? という質問は、実はあながち間違ってはいない、と言うことになる。

.

で、実際問題として、真の有能さ、っていうのがこの2つをよりややこしくする。

http://srad.jp/comments.pl?sid=466716&cid=1638640
で指摘したが、人の上に立っている「いい人っぽく見える人」の中には、本当は有能だからいい人の振りをしているだけ、と言う人がたまにいる。

たとえば、私の今の仕事はサポート。障害があったときに必要に応じて開発部隊に質問をしながら、問題の原因を突き止めて、修正要求を出したり、お客様に説明したりするのが仕事。

すると、まぁ、たまにあるわけですよ。どう考えてもその説明はおかしいだろうとかいう内容が開発とかから飛んでくることが。えぇ、どれぐらいの頻度とは言いませんが、
「おまえ、こういうバグがあるだろう」
『いえ、絶対ありません。全然見つかりませんでした』
(2週間後)『見つかりました』
というのが年12回以上あるぐらいには。

で。確かに開発からの腐った回答を毎回叩き潰して「寝言は寝て言え」と押し返すこともできるんですが。そこでコスト対効果を考えてしまうわけです。

「この障害は、基本的にハードウェア障害だ。交換すれば直る。問題の本質は工作上のミスだ。
  が、その事をきちんと理解し、問題視し、説明してくるまで付き合ったら、
  どれぐらいかかるか判ったもんじゃない位、こいつは無能だ
  一方で、別途、筋の通った理屈を組み立てることはできる。
  じゃぁ、とりあえずは知らん振りして、この説明で行っておくか

一見「無能ないい人」のように見えますが、実際には お前と付き合うのは時間の無駄 と切り捨てた結果なわけです。

偉い人になればなるほど、この手の「間違っているとしか思えないが、とりあえずこちらでどうにかできるから、ま、いいか。次からはこいつには難しい問題は回さないようにしよう」という判断をするし、そういう判断を できるだけの権限を持っている わけです。

その辺をきちんと見分けないで、
『「いい人・悪い人」「有能・無能」は別の次元の話じゃ~』
と言っているのは…はっきり言って、解雇予備軍の危険性すらある。

この議論は、okky (2487)によって ログインユーザだけとして作成されたが、今となっては 新たにコメントを付けることはできません。
typodupeerror

犯人はmoriwaka -- Anonymous Coward

読み込み中...