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193011 journal

quaternionの日記: セルカン博士 4

日記 by quaternion
まさか「東大助教の科研費利用について大学当局に通報してみた」の2スレ781氏とTwitterで話し合うことになるとは思わなかったな.
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  • セルカン博士の疑惑について,一方の当事者(2sure781 [twitter.com]氏)とTwitterで話し合う機会を得た.セルカン博士の疑惑まとめサイト [atwiki.jp]によると,だいたいこんな感じだ.

    1. セルカン博士は講演会,著書などで大法螺を吹いている.(例:宇宙飛行士候補ではないにもかかわらず,宇宙飛行士候補であると主張した.)
    2. セルカン博士は科学研究費補助金(科研費)申請において研究業績を捏造し,科研費を不正に受給した.(研究業績の捏造は不正にあたる.)
    3. セルカン博士は博士論文の大部分において他人の論文,著作を剽窃している.

    上記の一点一点について2sure781氏らは非常に精緻な調査をされている印象をうける.僕はまだもう一方の当事者であるセルカン博士と話し合う機会を得ていないし,ご本人のブログにも弁明の言はないようなので,上記の3点の真偽については判断を保留する.(セルカン博士のトルコ語ブログ [blogcu.com]では,宇宙飛行士候補に関しては一部訂正を,研究業績については正当性を主張されているようだ.Google機械英訳で読んだので間違いかもしれない.)

    大法螺に関しては,社会通念上の限度を超えて吹かしたのか,僕にはわかならい.2sure781氏の言うとおり著書に書かれた体験談が部分的にフィクションであるのなら,部分的にフィクションであると断るのが執筆者の良心だと思う.(個人的にはフィクションと思って読んでも楽しめたが.)

    科研費の不正受給は,ルールで禁止されている.科研費というのは,研究者が「私(たち)はこれこれの研究をしてこんな成果を出す予定です.ついてはこれだけの研究資金をください.私(たち)はこれまでこんな研究をしてきてこんな成果を上げてきています.」という研究提案(プロポーザル)を政府機関に提出して,認められれば研究資金が配分されるという制度だ.このうち「これこれの研究をしてこんな成果を出す予定です」の部分はずばり法螺だ.やってできることがわかっていれば研究ではないからである.審査する側も見込みがあるかどうかなんて判定のつけようがない.そこで,科研費申請で大事にされるのは「私(たち)はこれまでこんな研究をしてきてこんな成果を上げてきています」の部分だ.この部分で申請者の「信用度」をはかるのである.この部分の虚偽は,審査する側は(審査時間が限られているため)見抜けないだろう.というわけで,虚偽の申告に対してはペナルティを科すルールが設けられている.

    2sure781氏が取り上げているのも,科研申請書における研究業績の部分だ.疑惑を晴らすには,本人が自分の発表に関する論文抜き刷りや発表論文集を示せば十分だろう.直接には政府機関(文科省,JSPS)と取次機関(東大),セルカン博士ご本人の間の問題であろうから,この三者で研究業績の確認が行われれば済む話ではあろう.(僕も結果は知りたいし,出来ればセルカン博士がブログか何かで公表してくれればなお良いと思う.)

    博士論文における剽窃に関しても,2sure781氏は詳細な調査をされている印象を受ける.ただ,研究論文(博士論文含む)のオリジナリティというのは,研究者にとっては生命線だ.これが否定されることになったら,セルカン博士は研究者生命を絶たれるかもしれない.この件に関しては,たとえ事実無根の言いがかりであったとしても,セルカン博士自身が説明すべきと思うし,僕は彼の説明を聞きたい.

    ちなみに,就職の際に経歴を詐称したのではないかという疑惑も聞くが,彼が提出した履歴書,業績リストを見ることができないので,何とも言えない.一般的に,業績リストには論文別刷りなどの証拠資料を付属させるので,業績の詐称はしにくい.また独立行政法人化される前の政府機関(国立大学含む)は過去の経歴を証明する書類をいちいち提出しなければならなかったので,経歴の詐称もかなり困難だった.独法化後は機関によっては審査が緩くなったかもしれない.

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UNIXはただ死んだだけでなく、本当にひどい臭いを放ち始めている -- あるソフトウェアエンジニア

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