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xapの日記: ヨヨギとシンジュクとアキバの時代(10) 20

日記 by xap

前回のつづき。

俺の選んだSo*netのサービスのひとつに「チャット」があった。

脳直結型のVRシステムが一般化されたら、真っ先に接続端子を首に埋め込むぞと豪語している俺だったので、なんとなくVRっぽい感じがしないでもないような気配が漂ってないとは言い切れない風のチャットに早速嵌ってしまい、連夜、この仮想空間(?)に出没するようになる。

さて、仕事の話しだが、この頃から俺は店頭での、サポート一次対応なんかも担当するようになる。

当時のアキバのパーツショップは、極限までの薄利販売が基本となっていた。(メモリや何十万円もするディスプレイなんかより、ネジキットやマウスパッドの方が利益があるくらいだ)
それを支えているのは、サポート負荷を軽減するための「パーツは自己責任で買ってね」という条件に拠るものである。
(勿論、この内容は暗黙の了解等ではなく、ショップ内にもレシートにも注意書きされてるし、購入時にも確認される。)
当然、初期不良等はサポートするが、パーツ間の相性で生じる不具合はサポートしませんよというやつだ。

例えば、自分の持ってるマザーボードが対応してない、CPUやらメモリやらを間違って買ったからと言っても、交換は一切、受け付けられないのだ。
(酷いのになると、明らかに逆差しや落下で壊したものを「初期不良」だと言い張る客も居たが・・・)

が、パーツだって安いモノではないし、ダメと言われても、そう簡単に引き下がれない気持ちはよく判る。
だからとはいえ、こちらも例外で対処するワケにもいかない。

客からの無理難題や果ては暴言、罵詈雑言に至るまで、ひたすら頭を下げて了承してもらうほか無いのだ。

この行為は、慣れるまでは非常にストレスが溜まった。

家に帰ると、酒でも飲まないとやってられんわい!という事で、チャットをする時も、呑みながらやる事が多かった。
「ツグ」と「マサ」(どちらも仮称)に会ったのは、その頃だった。

ツグは、都内某社の専属SEなのだが、社内のサポセン的な役割になっているとの事。
マサに至っては、驚いた事に、俺のショップから目と鼻の先にあった、T*Zoneの家電売り場店員だった。
3人とも年齢が近く酒好き、更には、仕事上のグチも似通っていたという点で意気投合し、毎晩の如く「呑みチャット」をしつつ、グダグダとクダを巻いていた。

当然の如く、それは、offlineでの飲み会へと発展する。

俺たちがチャット時に使用するのは、ナゼか決まって「アシモフ」という部屋だった。
当初は3人で話してるだけの、ムサクルシイ部屋だったのだが、いつの間にか人数が増え、1ヶ月も経った頃には、男女含め10人くらいの固定メンバーが出入りするようになっていた。

その中の一人が、現在の奥さんである。
あの時はまだ、とっても初々しくって現在のメデューサのような威圧感は、これっぽっちも無かった。(あれ?なんか目から塩水が・・・)

奥さんと正式に(?)付き合うようになったのは、こんな風に、皆で飲み会をし始めた頃から数ヶ月後。

前妻と別れて、半年以上経った頃だったと思う。
自分でも、懲りないヤツだと本気で思う次第だ。

そんなわけで、現奥さんと付き合い始めて、幸せいっぱい夢いっぱいだった頃、今度はショップの経営状況が悪化し始めた。

メーカー製PCの性能と価格が、DOS/Vパーツを凌駕し始めたのだろう。
この波はウチのショップだけではなく、アキバ全体に押し寄せており、現に何件ものパーツショップもバタバタと倒れ始めていた。

俺はショップの仕事が気に入っていたので、最後まで辞める気は無かった。

が、それから3ヶ月もしないうちにショップは、あえなく倒産。
店は差し押さえられ、社長は自己破産。

結局、アキバ店員の時代も、1年ちょっとで幕を閉じる事となった。

その月の給料は、半分しか払われないまま、俺は路頭に迷う事となる。
今考えれば、倒産による離職だったので、スグに失業保険が受け取れたのだが、その時はナゼか、その考えが浮かばなかった。

また、アキバで店員でもしようかなーなんて考え、職を探しているときに、奥さん(この時はまだ結婚してませんが)に言われた。

「xapってさ、前にプログラム組んだりしてたって言うけど、嘘でしょ?なんか、そんなのやってるとこ見たこと無いし、タイピング、私より遅いし。」
「( ゚Д゚)な!何を言う!バリバリ組んでたさ!組みまくりだよ!」
「じゃ、なんでそういう仕事しないの?そっちの方が給料高いじゃん?店員より」
「(;゚Д゚)な!何を言う!人生、金じゃないっしょ?ハートよハート!熱いハート!」
「やっぱ出来ないんだ。嘘つき。チキン。田中邦衛。」
「(#゚Д゚)ムッカー!マジ、ムカついたっ!田中邦衛をバカにしたのが、何よりムカついた!俺の働きっぷり見て腰抜かすなよ!後悔すんなよ!ちきしょー!」

勿論、コレは、俺をソレナリに安定した仕事に就かせる為の、奥さんの巧妙な(?)罠だった。
まあ、バツイチのショップ店員なんて結婚相手として親に紹介できたモンじゃあないので、致し方ないと思う。

俺は、まんまと乗せられ、都内のシステム屋さんの会社に就職する。

他の会社に常駐したり、プログラム組んだり、床を這いずってLANケーブルを引き回したり、日本中行ったり来たりしながらWAN環境構築したり、サーバが死んだとかの電話が休日にかかって来て泣きながら出勤したり、今日は徹夜ですと報告して奥さんに罵られたりしながら、(この辺の話も書きたいところだが、危険&まだナマナマしい部分もあるんで勘弁。)
一気に6年の月日が流れる。



入社当時は俺の上司だった人も、グループ会社の取締役に就任しており、俺自身もソレナリの役職に就いちゃったりしていた。

プロジェクトマネージメント(PM)の作業が殆どで、仕事としてプログラムを組む事は殆ど無くなっていた。

PMの仕事は、非常に刺激的で楽しかったが、その会社で支払われる給料に対し、要求される責任が重過ぎる事や、仕事内容がその会社に特化したルーチンワークになりつつある事から、将来的な広がりを感じられなくなった俺は、7年目にさしかかる前に辞職。

今は、違うシステム屋会社に入り、いろんな会社に常駐しつつプログラムを組んだり、PMっぽい事したり、コンサルっぽい事をしたりと、半分、便利屋みたいな事をしながらテキトーに生きている。
凄く楽しい。

しっかりものの奥さんのお陰で、普通に働いてれば余程の事が無い限りなんとかなるでしょと思えるくらいには貯えもできた。

今後、ジジイになるまで、イチ技術者として生きていければ良いかな~なんて思っていたりする今日この頃。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか?

おしまい。

#とりあえず、「時代」シリーズは完了です。
#長々と、読んで頂きありがとうございました。

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普通のやつらの下を行け -- バッドノウハウ専門家

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