yamajunのコメント: Re:「定時に」とは書いてない (スコア 1) 140
私は「空襲警報が鳴るとそのまま帰宅する従業員ばっかで困る。どうにかして会社に戻して業務再開させられないものか」と経営者目線で真面目に論じてる戦時中の雑誌か何かを目にした覚えがありましたけどね。
『ダイアモンド』誌昭和20年3月11日号のことでしょうか?
記事冒頭は相も変わらぬ精神主義ぶりで、「今や生産即戦場――職場は決戦場となった。空に敵機の爆音を聞き乍ら勤労者はその持場の仕事と取組ねばならぬ」とある。かなりイヤな職場である。そんなところからは一刻も早く逃げ出したいのが人情だろう。
(略)
「このため生産能率を低下せしめるのみならず、交通混雑に拍車をかけ、自らは貴重な時を空費するのである。人々はかかる事を反省し、須く(すべからく)勤労意欲で以て朝の交通難を突破し夕の交通混雑を緩和するよう心掛くべきである」「焦燥にかられて電車を待つより、腹を決めて社屋にて仕事しつつ、すいた電車を待つ方が有意義ではないか。これからは日脚も長くなるので殊にこの感を深くするのである」――あれれ、結論は「ラッシュを避けてすいた電車でかえりましょう」って、なんだか問題がすりかわっているんじゃないか? しかも「これから日脚も長くなるので……」と、事態の切迫性のわりにはいささかノンビリ気味である。そもそもの問題は交通難・交通混雑の解消じゃなくて、「空襲下でも働け」だったのに、結局これでは「空襲下における時差通勤のすすめ」ではないか。この“ねじれ”に、こんなテーマで書けるか!とヤケクソになった記者君の姿が透けて見えるようだ。
# ダイヤモンド社は空襲で社屋が消失しているので資料を探すのは難しいだろうけど、このtumblr記事は書籍化(文庫版)されているので、著者にあたることはできなかったんだろうか。