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580215 journal

yasuokaの日記: コンピュータのキーボードはなぜQWERTY配列なのか

日記 by yasuoka
どうやってQWERTY配列は主流となったかのコメントにも書いたのだが、「コンピュータのキーボードはなぜQWERTY配列なのか」という問に対して「タイプライターがQWERTY配列だったから」というのは、答として不十分だ。電卓と電話ですらキー配列が違うのだから、タイプライターとコンピュータのキー配列が同じでなければならない理由はない。では、なぜアルファベットに関しては同じなのか。そもそも、どうしてコンピュータの入力インターフェースは、キーボードが主流なのか。A.R.N.[日記]Kameno's Digital Photo Logにもコメントしたが、コンピュータの入力インターフェースがQWERTYキーボードになってしまった歴史的理由の1つには、テレタイプの存在があると考えられる。

1901年にテレタイプの原型を完成した際、Donald Murrayはキー配列として、タイプライターのQWERTY配列をそのまま流用している。そもそもテレタイプの発想は、遠く離れた2台のタイプライターを電信線と紙テープで繋いで、こちらで打った文字をあちらでも出力する、というものだったから、タイプライターのキー配列を流用したのは当然だろう。しかも1901年時点では、アメリカのタイプライターはQWERTY配列一色(Blickensderfer配列のシェアなど1%にも満たなかった)だったから、テレタイプもQWERTY配列となったわけだ。ただし設計の都合上、テレタイプのキー数は28程度に抑える必要があり、一つのキーに複数の文字を割り当てて、同じキーに割り当てられた文字は文字コードを共用する必要があった。そこでMurrayは、Qのキーと1のキーを共用し、シフトキーでこれらを打ち分けるように設計した。同様にWと2、Eと3、Rと4、Tと5、Yと6、Uと7、Iと8、Oと9、Pと0もキーを共用した。この結果、テレタイプのキー配列上で数字を一直線に並べるためには、QWERTYUIOPと配置せざるをえなくなってしまった(ここの第5・6図を参照)。
1949年に発表された『EDSAC』は、端末に『Creed Model 47』を改造したテレタイプを使用していた。テレタイプは、5ビットの文字コードを用いたデジタル通信機器だったので、コンピュータの端末に流用しやすかったからだ。しかもテレタイプは、入力と出力の両方に用いることができる。イギリスやアメリカのコンピュータでは、これ以後1970年代に至るまで、テレタイプが端末として使われてきた。この結果、コンピュータの入力インターフェースは、QWERTYキーボードとなってしまったわけである。

もちろん、1950年代のRemington RandやIBMが、コンピュータとタイプライターの両方を作っている会社だった、という事実も、コンピュータのキーボードのQWERTY化に一役買っているだろう。ただし、このような背景知識なしに「タイプライターがQWERTY配列だったから」と答えるのは、あまりに論理的飛躍が過ぎる。紙テープの呪縛を含むテレタイプの呪いが、いまだにコンピュータには残っているにもかかわらず、それがほとんど意識されていないということなのだろう。

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犯人は巨人ファンでA型で眼鏡をかけている -- あるハッカー

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