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yasuokaの日記: 蛍はなぜ第1水準にあるのか

日記 by yasuoka
イワマン日記にもコメントしたのだが、JIS C 6226(現、JIS X 0208)の制定以来ずっと、蛍が第1水準(23区54点)に収録されているのは、結構ブキミだったりする。というのも、JIS C 6226-1978の解説には

(a) 当用漢字等では,新字体を第1水準に,旧字体を第2水準におく。
(b) その他の文字では,本字を第1水準に,俗字・略字等を第2水準におく。
(c) いずれの字形も第1水準に採用するに及ばないものは,共に第2水準におく。

と書かれているからだ。すなわち、当用漢字でも当用漢字補正案でも人名用漢字でもない蛍と螢については、(b)にしたがい螢を第1水準に、蛍を第2水準におくべきだということになる。が、JIS C 6226制定(1978年1月1日)時点で、そうなっていなかったわけだ。ところが「情報交換のための漢字符号の標準化に関する調査研究報告書」(日本情報処理開発センター、1976年3月)収載のJIS漢字原案では、蛍は第2水準(73区48点)に収録されていて、螢が第1水準(23区53点)にある。つまり螢と蛍は、1976年3月から1977年12月までの間に入れ替えられたということになる。なぜなのか。

1976年3月のJIS漢字原案をもう少しチェックしてみると、挟が第2水準(57区46点)に、挾が第1水準(22区21点)にあるのが見つかった。つまり挾と挟も、1976年3月から1977年12月までの間に入れ替えられたということになる。さらにJIS漢字原案をチェックすると、插が第1水準(33区62点)にあるのを見つけた。それならば、挿はどうだろうと探してみたが、JIS漢字原案のどこにも見当たらない。つまり挿は、1976年3月から1977年12月までの間に追加されたということになる。なぜなのか。

ここで思い当たるのが、1977年1月21日に国語審議会が発表した「新漢字表試案」だ。蛍も挟も挿も当用漢字ではなく、「新漢字表試案」で採用された漢字である。すなわち、JIS C 6226-1978は、当用漢字ではなく「新漢字表試案」にしたがって第1水準と第2水準が分けられたと考えれば、蛍や挟や挿に関する説明がつく。しかし、だとすると、上に示したJIS C 6226-1978の解説は、どういうことなのだろう。解説のこの部分は、JIS漢字原案にはない。1976年3月から1977年12月までの間に書かれたものであり、解説の筆者が「新漢字表試案」を知らなかったとは考えにくい。そう思って読みなおすと、「当用漢字等」とあえて「等」づけで書いてあるあたりに、そこはかとなくイヤなものを感じとってしまったりするのである。

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