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yasuokaの日記: 和文印刷電信機の文字コード 6

日記 by yasuoka
『文字符号の歴史』の『アジア編』と『欧米と日本編』との間に矛盾した記述がある、という指摘を、読者の一人から受けた。『アジア編』のp.95が

固定長の2進符号としてつくられた和文電信符号は,1927年に東京-大阪間などの主要回線が印刷電信化されたとき制定されたのが最初であり,このとき用いられた印刷電信機は米国のクラインシュミット社(のちのテレタイプ社)製であった[41]。これは,かな文字による6ビット符号表(表2.6)であり,しかも数字/文字の2モードでは足らず,上中下段という3段モードでつくられた。

となっているのに対し、『欧米と日本編』のp.46は

日本最初の和文印刷電信機が東京~大阪での運用を開始したのは,昭和2年(1927年)6月1日のことであった*50。… 和文印刷電信機符号は,上段・下段の2種類のロッキングシフトを有する6ビット符号(図38)だったが,和文印刷電信機がMorkrum-Kleinschmidt社の「Teletype」を改造したものだったため,アメリカにおけるMurray符号(図30)の影響が非常に色濃く出ている。

となっている。つまり、『アジア編』では「3段」なのに、『欧米と日本編』では「2段」だ。…なんで、そんなマニアックなところに気が付くんだろう。

少なくとも、島田新次郎の論文『和文印刷電信機』(電信電話學會雜誌, 第65號 (1928年1月), pp.123-161; 第67號 (1928年5月), pp.394-417; 第69號 (1928年9月), pp.681-686)を読む限り、1928年当時の和文印刷電信機の文字コードは、6ビット2段モードのものだ。カナと数字が使えるだけで、アルファベットは使えない。日本において、6ビット3段モードの印刷電信機が現れるのは、谷村貞治の『新らしく完成せるページ式印刷電信機に就いて』(電氣通信學會雜誌, 第34卷, 第12號 (1951年12月), pp.666-669)による限り、1951年になってからのことだ。また、『アジア編』がp.96の表2.6で参照している6ビット3段モードの文字コードは、『欧米と日本編』p.72の図58で示した通り、1956年の加入電信(テレックス)開始に合わせて導入された文字コードだ。

これらを考え合わせると、『アジア編』の「3段モード」という記述には、何がしかの誤解が含まれている可能性が高い。ただ、三上さんは三上さんなりに、何か別ネタを持ってる可能性もあるので、そこんところは、また聞いてみる必要があるとは思う。しかしながら、『アジア編』も『欧米と日本編』も、かなり在庫僅少なのに再版の動きがないので、たとえ間違いが見つかっても、もう直しようがないんだよなぁ…。

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  • by yasuoka (21275) on 2007年11月21日 11時59分 (#1253416) 日記
    Amazonのページ [amazon.co.jp]を見てたら、この『文字符号の歴史 欧米と日本編』にかなり悪辣な書評(2007/10/27)がついたみたいですね。うーん、私、少なくとも「和文印刷電信機の文字コード」とかに関しては、「洋書」だの「英文サイト」だのを「丸写し」した覚えなどないんですが…。こういうのって、「いいえ」のボタンをクリックするくらいしかないのかなぁ?
    • by yasuoka (21275) on 2007年11月22日 10時12分 (#1253990) 日記
      こっちの記事 [srad.jp]にコメントしたところ、「いいえ」だけじゃなく「報告する」の方がいい、っていう話でした。うーむ、そうなのかしら? こういう、外から見てちゃんとやってるのかイマイチ良くわからんシステム、ってのは、正直よくわからない…。
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      • by Anonymous Coward
        同じ人 [amazon.co.jp]が同じ日に、安岡さんの別の著書にも似たような書評を書いていますね。
        この人はその2件しかレビューがないし、ピンポイントな嫌がらせという感じで気分悪いです。
        • by yasuoka (21275) on 2007年11月23日 22時40分 (#1254694) 日記
          ふーむ、こりゃまた露骨にピンポイントですね。普通もうちょっと擬装するもんだけどなぁ…。でもまあ、Amazonとしては、この書評を1ヶ月近く掲載してるわけですから、たとえ売上が下がってもここは黙認ってことなんでしょ? こっちの記事 [srad.jp]にもコメントしたけど、そういうの、システムとしてどうなのかしら?
          親コメント
    • by Anonymous Coward
      自著書に悪い評価がついたら、「かなり悪辣な書評」ですか。。。

      幸せな思考回路ですね。
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