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yasuokaの日記: アキハノハラかアキハバラか 7

日記 by yasuoka
アキハバラ駅に関して、さらに調べてみるべく、欧文で書かれた明治後期の鉄道関係論文をひっくり返してみた。そうしたところ、Francis Henry Trevithickの『The History and Development of the Railway System in Japan』(Transactions of the Asiatic Society of Japan, Vol.XXII, pp.115-252 (1894年4月11日))の141ページに、以下の記述があるのを発見した。

Ueno Akihanohara Section † … … … 1.15

日本鐵道の上野~秋葉原の貨物線1マイル15チェーンに関する記述だが、終着駅が「Akihanohara」つまりアキハノハラになっている。さらに他の論文を探してみたところ、Franz Baltzerの『Die Hochbahn von Tokio』(Zeitschrift des Vereins deutscher Ingenieure, Bd.47, Nr.47 (1903年11月21日), pp.1689-1698; Nr.50 (1903年12月12日), pp.1805-1812; Nr.51 (1903年12月19日), pp.1847-1852)の1689ページ「Plan von Tokio und nächster Umgebung」と題した図の中に、やはり「Akihanohara」駅が載っているのを見つけた。一方、明治後期の「秋葉原」駅に関して、「Akihabara」や「Akibahara」と記す欧文論文は見つけられなかった。

TrevithickとBaltzerを信じるなら、日本鐵道の秋葉原貨物取扱所は「アキハノハラ」という駅名だったと結論づけられる。二人とも日本の鉄道技術に関してはビッグネームなのだから、信じない理由がない。しかし、1912年5月1日現在の『鐵道停車場一覽』では、「秋葉原 あきはばら」と記されており、しかも現在も「アキハバラ」なのだから、どこかの時点で「アキハノハラ」から「アキハバラ」に変更されたということになる。1903年から1912年の間となると、あるいは1906年11月の国有化の時点あたりが可能性として考えられるが、それを裏づけるような史料があるだろうか?

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  • 『NかMか』を拝見いたしましたが、 1898年の通達は、ある仮名文字(列)に対してローマ字をどう綴るかという通達であって、 駅名の平仮名標記を定めたものではないように思えます。
    また、正式には何らかの名称を定めてあったのだとしても、 それとは別に慣用的な呼び方が国鉄内部でも用いられており、 それが幾通りか存在していたという可能性もあるかと思います。

    それはそれとして、「アキハノハラ」という読みは興味深いですね。
    「アキバハラ」はYOUsuk氏のコメントにもあるように古い地名に由来するのでしょうが、 これはそれとも違いますし。
    地名としても「アキハノハラ」と呼ばれていた時期があったのですかね。
    • 『NかMか』 [kyoto-u.ac.jp]を読んでくださって、ありがとうございます。確かに、駅名の読みに関しても、ローマ字に関しても、結局は「authentic reference」になりそうなものを探さなきゃいけないんですけど、さて、何が「authentic reference」としてふさわしいのか…。
      ま、それはともかく、森鷗外の『雁』の第4節には「秋葉の原」っていう地名が出てきて、新潮文庫版だと「あきは」ってルビが振ってあります。ただ、これ、初出が『スバル』の明治44年10月号なので、ちょっと新しすぎるかな?
      親コメント
      • by Anonymous Coward
        SIGNAL9と申します。Anonymousで失礼します。
        小生も「アキバ・アキハ」問題に関してちょっと調べてみたことがあります。
        http://signal9.exblog.jp/5414682/ [exblog.jp]
        「上野・神田佐久間河岸間貨物鉄道敷設認可」には「秋葉原」という表記が見受けられます。少なくとも表記上は、ですが。
        個人的には人によって読み方は色々あって、「アキハバラ」が認知されたのは大正14年あたりではなかったか、と考えています。
        http://signal9.exblog.jp/5477540/ [exblog.jp]
        • ブログ [exblog.jp]読ませていただきました。これはすごい、かなり調べてらっしゃる…。ただ、正直難しいのは、「高田馬場」が現在「たかだばば」と読む以上、官報(明治23年11月6日p.64)とかに駅名が「秋葉原」と書いてあっても、読みは「あきははら」だったか「あきはばら」だったか、わからないんですよね。『停車場変遷大事典. 国鉄・JR編』(JTB, 1998年10月)にしても、官報で読みがわからなかった場合には、『鐵道停車場一覽 明治四十五年五月一日現在』(鐵道院總裁官房文書課)までしか遡れていないわけですし。
           

          ですので、明治45年以前の駅名の読みを知るべく、あえてローマ字表記を調べてるとこなのです。鉄道院や鉄道局時代の路線図とかに、ローマ字表記とかがあればうれしいんですけど…。

          親コメント
          • by Anonymous Coward
            SIGNAL9でございます。

            >『停車場変遷大事典. 国鉄・JR編』(JTB, 1998年10月)にしても、
            >官報で読みがわからなかった場合には、『鐵道停車場一覽 明治四十
            >五年五月一日現在』(鐵道院總裁官房文書課)までしか遡れていないわけですし。

            そうなんですか。完全に認識不足でした。JTBの資料を見たところ改名の記録も無しで、「あきはばら」と書いてあったもので、それでヨシと思ってしまいました(^^;)。

            だとすると、明治23年時点で、そもそも「駅名」の「正しい読み方」というのは決まっていたのでしょうか。
            表記上、「秋葉原」が使われていたことは間違いないのですが、Blogの方にも書いたとおり(少なくとも地名としては)読み方は色々あった様に思われます。

            官報にも書いてないとすると、何が駅名として「正しい」のかよくわからないのですが…。
            • 確かに「駅名」の「正しい読み方」ってのは、無かったかもしれません。でも「正しいローマ字表記」は、あったと思うんですよ。というのも、「秋葉原」駅は貨物取扱所で船着場ですから、そもそも海外の貨物も通過してたはずなのです。で、海外の貨物をちゃんと通過させるには、とりあえず決まった「ローマ字表記」を広報しておく必要があったと思うのです。

              ただ、これも実はかなり甘い読みだったようで、うまくいってなかったりします。よければアキハノハラかアキワノハラか [srad.jp]もごらん下さい。

              親コメント
              • by Anonymous Coward
                SIGNAL9でございます。

                >「秋葉原」駅は貨物取扱所で船着場ですから、そもそも海外の貨物も通過
                >してたはずなのです。で、海外の貨物をちゃんと通過させるには、とりあ
                >えず決まった「ローマ字表記」を広報しておく必要があったと思うのです。

                なるほど、納得です。さっそく拙Blog側も御論考を元に訂正させていただきました。

                「アキワノハラ」の方も拝読しました。

                個人的には自説「一般に流布されている『アキハバラは当初下町訛りでアキバハラだった』というのはかなり怪しい話」が裏付けられる証拠がまたひとつ出てきた、と喜んでおります(^^;)。
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UNIXはシンプルである。必要なのはそのシンプルさを理解する素質だけである -- Dennis Ritchie

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