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yasuokaの日記: 合衆国憲法修正第13条の批准

日記 by yasuoka

杉村喜光の『知泉 元祖「ヘェ~」716連発』(二見書房, 2003年10月)を読んでいたところ、19ページの「TYPE WRITER」ネタ以前に、18ページの以下の項目でひっかかった。

アメリカは南北戦争で「奴隷を解放せよ」という結論を出し、一気にではないですが奴隷制度は廃止となりました。しかし、すべての州で奴隷制度廃止の条項を州憲法に謳っていたはずだったのですが、なんと、ミシシッピ州だけ、その項目を憲法に入れることを忘れていました。それに気がついたのは1995年になってからのことでした。
つまり、「ミシシッピ州では奴隷をもつことを認めていた」となってしまいます。もちろん、慌てて憲法に取り入れ、奴隷廃止をいいだしてから130年めにして完全廃止になったのです。

なぜ、奴隷制廃止なんていう問題に関して、こんなデタラメが平気で書けるのだろう。そもそもMississippi州は、1868年5月15日改正の州憲法で、第19節に奴隷制廃止を明確に盛り込んでおり、現行の州憲法(1890年11月1日改正)でも、第15節に奴隷制廃止が記されている。「慌てて憲法に取り入れ」たなんてことは全くない。このあたりに関して、1865年から1868年にかけて起こった一連の出来事を、ざっと並べておくことにしよう。

奴隷制廃止を定めた合衆国憲法修正第13条は、1865年1月末に連邦議会を通過し、あとは合衆国36州のうち4分の3の批准を待つのみとなった。10ヶ月後、1865年11月末の時点では、批准24州、拒絶3州(Delaware州・Kentucky州・New Jersey州)で、Mississippi州はまだ態度を決めていなかった。この後、12月2日にAlabama州が批准、12月4日にNorth Carolina州が批准、12月5日にMississippi州が拒絶した。そして12月6日にGeorgia州が批准、27州の批准をもって、合衆国憲法修正第13条は成立したわけである。成立した以上は、拒絶した4州もそれに従わねばならない。New Jersey州は1866年1月23日に、拒絶を撤回して合衆国憲法修正第13条を批准した。一方、Mississippi州は、1868年5月15日に州憲法を改正する形で、奴隷制廃止を明確に宣言したわけである。

ちなみにKentucky州は、1891年8月3日に州憲法を改正している。Delaware州は、1897年6月4日に州憲法を改正した後、1901年2月12日に、拒絶を撤回して合衆国憲法修正第13条を批准した。これで、奴隷制廃止は決着がついたわけだが、その後にむしろ象徴的な意味合いで、Kentucky州は1976年3月18日に、Mississippi州は1995年3月16日に、それぞれ合衆国憲法修正第13条を批准している。

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