yasuokaの日記: 人名用漢字におけるデザイン差
「曽」の字と同様に使用される字として「曾」という字がある。この両者は、常用漢字(1945字)とともに使われることが比較的多い表外漢字(1022字)とされ、「曽」の字は表外漢字の簡易慣用字体、「曾」の字は表外漢字の印刷標準字体とされているもので、この両者の差異は、いわば、デザインにおける差異であって、「曽」の字が「曾」の字の俗字であるというものではない。
つまり、「曽」と「曾」がデザイン差である、と判示しているのである。しかも札幌高裁決定のこの部分は、最高裁判所平成15年12月25日決定(平15(許)37号)においても覆されなかったので、つまりは最高裁決定においても、「曽」と「曾」はデザイン差だということになっているわけだ。
ただし、法務省としても黙っていたわけではなく、平成16年9月27日法務省民一第2664号通達において、常用漢字表の「字体についての解説」におけるデザイン差を、出生届を受理する際のデザイン差として援用するよう、各法務局に通達している。つまり、法務省にとっては、人名用漢字におけるデザイン差は、常用漢字表におけるデザイン差と同一、ということである。しかし、この立場も必ずしも堅固なものではなく、たとえば平成17年8月3日法務省民一第1758号回答では、一画目が「一」の「龍」と、一画目が「丨」の「龍」とを、デザイン差とみなして取り扱って差し支えない、と回答している。
ちなみに、平成20年10月22~23日に開催された全国連合戸籍住民台帳事務協議会の第61回総会では、人名用漢字の「龍」の一画目を「丨」にするよう法務省に要望している。しかし残念ながら、現時点では法務省にその気はないらしく、人名用漢字のデザイン差に関しては、イマイチはっきりしない運用が今後も続くようである。
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